かつて、英オックスフォード人口問題研究所に「地球上で真っ先に消え去る国」と指摘された韓国。
とはいえ、近年は出生数の減少にやや歯止めがかかりつつある。
今年1~4月の累計出生数は9万9534人を記録し、2019年以降で最多となった。こうした出生数の回復とともに、韓国ではあるトレンドが広がっている。
それは、たった一人の子どものために出費を惜しまない「VIB(Very Important Baby)」というトレンドだ。これにより高価格帯のプレミアム商品が市場拡大を牽引し、関連市場が大きく成長している。
百貨店からホテルまで席巻
今年1~5月、韓国主要百貨店の子ども向けカテゴリーの売上は、前年同期比で大幅に増加した。新世界百貨店は20.4%増、現代百貨店は20.1%増を記録。特にロッテ百貨店では、高級ベビー用品の売上が65%も急増したという。

約170万ウォン(約17万円)の高級ベビーカーで知られる「Bugaboo」は品薄状態が続き、購入自体が難しくなっている。さらに、出産準備用品を高級ブランド中心で揃えた場合、総額は1200万ウォン(約120万円)に達するとの試算もある。
子どもが同年代の子どもたちの中で引け目を感じないよう、高級子ども服を購入する親も増加している。ホテル業界では1000万ウォン(約100万円)前後の豪華な1歳誕生日パーティーパッケージを販売。満1歳を祝う誕生日パーティー「トルチャンチ」をもじって、「トルディオール(トルチャンチ+ディオール)」という新語まで登場しているほどだ。
実際、乳幼児を育てる親たちの消費意欲もこうした傾向を裏付けている。中小企業に勤務する30代男性は、「月給は350万ウォン(35万円)ほどだが、子どもには肩身の狭い思いをしてほしくないので、高級子ども服や良いベビーカーだけは買ってあげたい」と語った。
育児用品ブランドの関係者は、「今の親たちは、価格よりも安全性と利便性を重視している」と説明。「安全性と使いやすさを兼ね備えた商品は、価格に関係なく売り切れが続いている」と話した。
こうした市場拡大は、企業業績や投資熱にも反映されている。ある大手ECプラットフォームに出店している乳幼児用品メーカーのオンラインモールでは、1~5月の決済額が前年同期比2倍超となる28億ウォン(約2億8000万円)を突破。不妊・乳幼児向けヘルスケア企業の売上も、1年でほぼ倍増したとされている。
さらに資本市場では、高級ベビー用品ブランドの新規株式公開(IPO)が、一般投資家向け募集で3170倍という高い競争率を記録して大きな注目を集めた。
編かは医療業界にも

育児市場の拡大は、小児科や産婦人科の決済額増加、さらには診療トレンドの変化にもつながっている。
今年5月時点の業種別決済額増加率では、小児科が26.67%で首位となり、産婦人科も9.32%で上位に入るなど、関連医療分野の好調ぶりを示した。
特に産婦人科業界では、一般的な分娩診療の収益性が低下するなか、不妊治療を新たな成長分野として重視する動きが強まっている。
評判の高い不妊治療専門医の場合、初診の予約が平均3カ月待ちとなるケースもあり、なかには再診患者のみ受け入れ、新規患者は1年以上待たなければならないケースもあるという。
費用負担が大きくても、より高水準の医療サービスを求める夫婦は後を絶たない。ソウル市内で体外受精を準備している30代会社員の女性は、「1回の治療費は200万ウォン(20万円)を超える。政府の支援を受けても、自己負担は約100万ウォン(約10万円)かかる」と語る。
このような傾向について医療関係者は、「晩婚化の影響で不妊治療を受ける夫婦が急増している。妊娠成功率を高めるためなら費用を惜しまない傾向があり、最新設備や著名医師がいる大型専門病院へ患者が集中している」と説明する。
こうした不妊治療市場の急成長を後押ししているのが、政府や自治体による支援拡大だ。2024年には所得制限が撤廃され、昨年11月からは治療支援回数も大幅に拡充された。
その結果、公的支援によって生まれた子どもの数は2022年の2万3122人から、昨年は4万8981人へと急増。昨年生まれた子どもの約5人に1人(19.2%)が、不妊治療支援制度を利用して誕生したことになる。
患者が集中する大手専門病院の業績も大きく伸びており、不妊治療専門病院を運営する医療法人の売上高は、2022年の8266億ウォン(約830億円)から昨年は1兆696億ウォン(約1100億円)へと増加。不妊治療関連産業の急成長を裏付ける結果となっている。


