日本の“ぶつかりおじさん”問題が、韓国で再び大きな注目を集めている。
ただし今回は、韓国人観光客やK-POPアイドルが被害に遭いかけたという話ではない。
韓国人ユーチューバーが大阪の路上で、通行人に故意に肩をぶつけていたとされる日本人男性を直接制止する動画が公開され、日韓双方のネット上で反響を呼んでいるのだ。
これまで韓国で「日本旅行の不安」として語られてきた“ぶつかり”が、今回は“成敗コンテンツ”として拡散された格好だ。
「本当に真教育だ」「スカッとした」
話題の動画は、登録者65万人を抱えるYouTubeチャンネル「マッドブロ」に7月1日、「日本・大阪で肩パンするヴィランを真教育するユク・ウニョン先生」というタイトルで公開された。
動画に登場する「ユク・ウニョン先生」は、韓国の著名な精神科医オ・ウニョン博士をパロディにしたキャラクター名だ。
映像では、ユク・ウニョンが一行とともに大阪の街を歩いていたところ、同行していた女性が男性に強く肩をぶつけられる場面が映る。

女性が「完全に強くぶつかってきた」と訴えると、ユク・ウニョンはそれが偶然だったのか、故意だったのかを確認するため、男性の後を追った。
すると、男性は道を歩きながら、向かい側から来る複数の通行人に肩をぶつけているように見えた。韓国メディアは、男性が女性や外国人、学生らに対して肩をぶつけ、その後に同行者と笑う様子もあったと伝えている。
これを見たユク・ウニョンは、男性の前に立ちはだかり、「なぜそんなに肩をぶつけて歩くのか」と問い詰めた。
さらに自らも肩をぶつけるようにして抗議すると、男性は困惑した様子で「ソーリー」と謝罪。ユク・ウニョンが「肩パンするな」と警告すると、男性は再び謝罪し、その場を離れた。

この動画が再生回数250万回超えと、韓国で注目された理由は、単に「韓国人が日本の迷惑行為を注意した」からではない。最近、韓国で話題の「真教育(チャムギョユク)」の構図に、あまりにもはっきり当てはまったからだ。
「真教育」とは、文字通りには“本当の教育”という意味だが、韓国ネットでは悪質な相手を痛快に懲らしめ、身の程をわからせる、といったニュアンスで使われる。最近ではNetflixドラマ『鉄槌教師』の原題が『チャムギョユク』であることもあり、日本でもこの言葉に触れる機会が増えている。
今回の動画は、まさにその“真教育”として受け止められた。
韓国ネット上では、「本当に真教育だ」「スカッとした」「体格のいい男性に逆に肩をぶつけられたら、すぐ謝るのが痛快だ」といった反応が相次いだ。特に強く反応されたのは、男性が大柄な相手ではなく、女性や自分より小柄に見える相手を狙っていたように見えた点だ。
ある韓国ネットユーザーは「男性の前では避けるのに、女性にはぶつかっていく」と怒りを示した。別のユーザーも、「自分より弱い人だけを相手にする卑怯な行為だ」と批判している。
ぶつかりが“成敗コンテンツ”に
日本で「ぶつかりおじさん」と呼ばれる行為は、混雑した駅や繁華街などで、通行人に故意に体をぶつける迷惑行為として知られてきた。
日本では2018年に男性が短時間で複数の女性にぶつかる映像が拡散され、社会問題として注目されたことがある。
韓国でも近年、この「ぶつかり」は日本語のまま「ブツカリ」として知られ始めている。韓国人観光客の間では、「東京でやられた」「大阪でもあった」「福岡でも危なかった」といった体験談が共有され、日本旅行中に注意すべき迷惑行為のひとつとして語られるようになっていた。
実際、韓国メディアは今年に入ってからも、日本での“ぶつかり”をたびたび取り上げている。元プロゲーマーで俳優としても活動するミン・チャンギが福岡で屋外配信中に肩をぶつけられそうになった場面、ガールズグループRESCENEの日本人メンバー、ミナミが渋谷で男性と接触しそうになった場面も、韓国SNSで大きく拡散された。

これまで韓国で語られてきた“ぶつかり”は、主に「日本旅行中に怖い」「自分もやられた」「有名人も危なかった」という不安の共有だった。つまり、韓国人はそれを“被害に遭うかもしれない日本の街中のリスク”として受け止めていた。
しかし今回の動画では、構図が変わった。
韓国人ユーチューバーが現場で日本人男性を追い、行為を確認し、直接問い詰めた。つまり、韓国ネットの視点では、これまで恐れられてきた日本の“ぶつかり”が、今度は「成敗される側」として受け止められたのだ。
そのため、この動画には日本語のコメントも多く寄せられた。「日本の変なぶつかり男を叱ってくれてありがとう」「日本人女性です。助けてくれてありがとうございます」「自分もぶつかられたことがある」「日本人として本当に感謝する」といった反応が見られた。日本のX上でも、「よく注意してくれた」「日本では見て見ぬふりする人が多い」「一種の痴漢ではないか」といった声が広がった。
一方で、すべてが称賛だけだったわけではない。日本側では、「日本の評判を下げる目的ではないか」と疑う声や、「日本の一部の迷惑行為だけを切り取っている」と反発する声もあった。韓国側にも、「韓国にも同じような人はいる」「日本だけの問題ではない」といった冷静な反応が見られた。
それでも動画がここまで拡散されたのは、“ぶつかり”という行為が、日韓双方で共通して不快感を呼ぶものだからだろう。
そして、今回の動画が日韓で拡散されたのは、単に痛快だったからだけではない。日本の街中で起きる迷惑行為が、もはや日本国内だけの問題として閉じなくなっていることを、改めて示したからでもある。
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