20年ぶりに再会した元恋人の台湾女優と結婚したが、その妻は日本旅行中に急逝してしまった。
そんな亡き妻の墓所を訪れ続け、今も深い喪失のなかにいる“純愛の人”として語られてきたのが歌手ク・ジュンヨプだ。
しかし彼は現在、故バービィー・スー(徐熙媛)さんの遺産をめぐる法的調整で注目を集めている。
一見すると、これまでのイメージとはあまりにも距離のあるニュースだ。
ク・ジュンヨプとバービィー・スーさんの物語は、韓国と台湾をまたいだ“映画のようなロマンス”として語られてきた。2人は1998年に出会い、恋人関係に発展したものの、当時は韓国と台湾を行き来する遠距離恋愛であり、芸能人同士という事情もあって別れを選んだ。
それから20年以上が過ぎた2021年、バービィー・スーさんの離婚を知ったク・ジュンヨプが、かつての電話番号に連絡したことで2人は再会。2022年に結婚した。
20年越しに初恋が実ったような展開は、多くの人々の心を打った。
「すべてを義母に」と語っていたはずが…

だが、その幸せは長く続かなかった。バービィー・スーさんは2025年2月、日本旅行中にインフルエンザにかかり、肺炎の合併症で急逝した。享年48歳。
その後、ク・ジュンヨプは深い悲しみのなかで妻を追悼し続けた。
今年2月の1周忌には、自ら構想し制作に関わった追悼彫刻も公開された。初恋時代にバービィー・スーさんから贈られた外套を着て現れ、「次に会ったら永遠に一緒にいよう。とても会いたい」と手紙に綴った姿は、多くの人の胸を打った。
そんな彼が今、バービィー・スーさんの遺産をめぐる法的調整に入ると報じられている。
台湾メディアによれば、ク・ジュンヨプの法律代理人と、バービィー・スーさんの2人の子ども側の代表弁護士が、遺産分割をめぐる調整手続きを進める予定だという。遺産規模は現地メディアで最大6億元、日本円で約143億円規模と推定されている。
ここで注目されているのが、ク・ジュンヨプが妻の死後に明かしていた発言だ。
彼は当時、「妻が残していった遺産は、愛する家族を守るために血と汗で集めたもの」とし、「私へのすべての権限は義母にすべて差し上げたい」と述べていた。

だからこそ今回、「相続を法的に放棄していない」「遺産分割の調整に入る」と報じられたことで、驚きが広がっている。当然、「すべてを義母に」という言葉は嘘だったのか、という疑問も浮上する。
ただし、これをもって「言葉を翻した」「遺産を狙っている」と断定するのは早い。
台湾の法定相続の原則では、別途遺言などがない場合、配偶者であるク・ジュンヨプと、バービィー・スーさんの2人の子どもが、それぞれ3分の1ずつ相続する構造になるという。ク・ジュンヨプには法的に相続分が発生するわけだ。
さらに、単に相続放棄をすれば、その分が義母に渡るわけではない。報道によれば、ク・ジュンヨプが自身の取り分を義母に渡すには、相続財産をいったん確定したうえで、贈与や所有権移転など別の手続きが必要になる可能性がある。
つまり、法的調整に参加していること自体が、ただちに「遺産を自分のものにしようとしている」ことを意味するわけではない。むしろ、以前に語った「義母に渡したい」という意思をどう法的に整理するか、あるいは未成年の子どもたちの相続分をどう保護するかという問題も絡んでいる。
実際、バービィー・スーさんの元夫ワン・シャオフェイ側も、2人の子どもの相続権を守るため、裁判所に特別代理人の選任を申請したとされる。子どもたちの相続分については信託専用口座も設けられたという。
それでも、この報道が大きく見えるのは、ク・ジュンヨプがこれまで“妻を失ってなお愛を貫く人”として語られてきたからだ。
墓所を訪れ続け、追悼彫刻をつくり、亡き妻への思いを手紙に残した人物が、今度は巨額遺産をめぐる法的調整の当事者として名前を挙げられている。その落差が、どうしても人々の関心を集めてしまう。
愛は物語になる。だが、相続は法律で処理される。
ク・ジュンヨプとバービィー・スーさんの関係は、20年越しの再会から結婚、突然の死別まで、まるで映画のように語られてきた。しかし妻が残した財産、未成年の子どもたちの権利、義母の生活、元夫側の法的対応が絡む以上、そこには“純愛”だけでは片づかない現実がある。
ク・ジュンヨプが本当に何を求めているのかは、まだ明らかではない。
ただ、“純愛の人”として見られてきた彼が、今最も現実的で冷たい遺産相続の場に立たされていることだけは確かだ。


