大手とはいえない中小芸能事務所から生まれたガールズグループが、またひとつ大きな物語を作ろうとしている。
2024年にデビューした5人組ガールズグループ、RESCENE(リセンヌ)だ。
現在、韓国で最も勢いのあるガールズグループと言い切ってもいいだろう。
きっかけは、リーダー・ウォニの個人YouTubeチャンネルから広がった「巨済(コジェ)ヤッホー」というミームだった。
日本人メンバー・ミナミのギャルキャラクターと、メンバー同士の自然な掛け合いがショートフォームで拡散され、グループの認知度を一気に押し上げた。
その話題性は、音源チャートにもつながった。2024年に発表した『LOVE ATTACK』がリバイバルヒットを記録し、最近リリースしたKARAの名曲を再解釈したリメイクシングル『Pretty Girl』も好調。
『Pretty Girl』は7月14日に放送された『THE SHOW』で1位に輝き、RESCENEは初の音楽番組1位を獲得した。

さらにRESCENEは、8月9日に行われる「2026 Coupang Playシリーズ」マンチェスター・シティ対アトレティコ・マドリード戦のハーフタイムショー出演も決定。世界的なクラブが対戦する大型イベントの舞台に、中小事務所発の若いガールズグループが立つ。まさに“急浮上”という言葉がふさわしい状況だ。
BBGIRLSが示した“急浮上”の難しさ
だが、K-POPの歴史を振り返れば、中小事務所発のガールズグループが一気に脚光を浴びることは、決して初めてではない。
そして、そのすべてが長期的な成功に結びついたわけでもない。
最もわかりやすい例が、Brave Girls、現在のBBGIRLSだろう。彼女たちは2021年、『Rollin'』のリバイバルヒットで一気に国民的注目を浴びた。

もともとは2011年にデビューし、長く無名時代を過ごしたグループだった。解散を話し合うほど追い込まれていた時期に、軍慰問公演の映像がYouTubeを通じて再発見され、楽曲がチャートを逆走。音楽番組1位、広告、バラエティ出演と、文字通り人生逆転のようなブームを巻き起こした。
当時、メンバーたちは「奇跡が起きたようだ」と語っていた。あるラジオ番組で「CM出演本数は?」と問われ、「25本ほどだ。まだ放映前のもある。あと、スケジュールのせいで撮影できていないのもある」と答え、周囲を驚かせたこともあった。
しかし、そのブームの熱量を長く保つことは簡単ではなかった。Brave Girlsは2023年に大手音楽会社ワーナーミュージック・コリアに移籍し、チーム名を「BBGIRLS」に変更した。しかし翌2024年には契約が終了し、メンバーのユジョンが脱退。現在は3人体制で活動している。
もちろん、現在も活動を続けており、人気が消えたわけではない。ただ、『Rollin'』ブーム当時の圧倒的な熱量をそのまま維持しているとは言いがたい。

ここに、中小ガールズグループの難しさがある。
リバイバルヒットは一瞬で世間の視線を集めるが、その熱狂をチームの長期ブランドに変えるのは、また別のハードルなのだ。
“奇跡”と呼ばれたが「収入なし」
では、なぜ急浮上したガールズグループは、その勢いを維持するのが難しいのか。その内側を示す例として、MOMOLANDの存在は外せないだろう。
MOMOLANDもまた、中小事務所発の“奇跡”と呼ばれたグループだった。2018年の『BBoom BBoom』が大ヒットし、『BAAM』『I'm So Hot』などでも存在感を示した。音楽番組1位を獲得し、海外でも知られたMOMOLANDは、決して売れなかったグループではない。

しかし、リーダーのヘビンが最近明かした現実は、華やかな成功とは大きく異なるものだった。
彼女は「MOMOLANDはデビュー2年で音楽番組1位を取った。当時、“中小ドルの奇跡”と呼ばれたが、お金を稼いだわけではなかった」と明かした。楽曲制作費、ミュージックビデオ制作費、ジャケット撮影費、マネージャーの給料、車両維持費、ガソリン代、ヘアメイク費用まで、活動にかかった費用が精算時に差し引かれる構造だったという。
さらに、ミュージックビデオを1本撮るたびに、自分にも数千万ウォン(数百万円)単位の費用が発生し、それをすべて返すまでは精算を受けられなかったと説明した。
イベント出演料についても、一般のイメージとは大きく異なる。ヘビンは「イベント出演料が5000万ウォン(約500万円)だったとしても、会社と半分に分け、そこからメンバー数で割り、さらにヘアメイク、スタイリスト、食費などを差し引くと、残るのは約200万ウォン(約20万円)程度」だったと話した。
しかも、その金額すら実際の収入にはなりにくかったという。「イベントで得たお金は次のアルバムやミュージックビデオ制作費に再投資される」とし、「自分の通帳に入る前にまた会社へ戻っていく構造だった」というのだ。

MOMOLANDの例が重いのは、彼女たちが無名のまま終わったグループではないからだ。中小事務所の奇跡とも呼ばれたが、それでも、その成功が安定した待遇や長期的な活動基盤に直結したとは言い切れなかった。
つまり、中小ガールズグループにとってヒットはゴールではない。むしろ、そこからようやく過去の投資を回収し、次の勝負に向かうためのスタートラインに立つという側面がある。
世界的な大ヒットでチーム分裂?
そして、その急浮上が最も劇的に、同時に最も痛ましい形で崩れた例がFIFTY FIFTYだ。
FIFTY FIFTYが2023年にリリースした『Cupid』は、世界的ヒットとなった。米ビルボードのメインシングルチャート「HOT100」に25週連続でチャートインし、K-POPガールズグループの歴史を塗り替えた。まさに“中小芸能事務所の奇跡”だった。

ところが、その直後にメンバーと所属事務所の間で紛争が発生した。4人のメンバーは、所属事務所が精算資料の提供義務、メンバーの身体的・精神的健康管理義務などを履行しなかったと主張。専属契約解除を求める専属契約効力停止仮処分申請を提起した。
これは裁判所が棄却したが、最終的にこの紛争で4人のうち3人はグループを離れ、キナだけが事務所に復帰することとなった。現在は、新メンバー4人を加えた5人組として活動しているが、『Cupid』当時とは大きく異なる体制になった。

さらに大ヒット曲『Cupid』をめぐっては、所属事務所と制作会社の間で著作権訴訟にも発展した。所属事務所側は『Cupid』の著作権が自分たちにあると主張したが、今年3月の控訴審でも敗訴している。
世界的ヒットは、本来であればグループをさらに上へ押し上げる好材料となるはずだった。しかしFIFTY FIFTYの場合、その成功の大きさが、契約、制作、権利、メンバーの処遇をめぐる利害を一気に表面化する結果を生んでしまった。
中小事務所にとって、想定を超える大ヒットは幸運であると同時に、組織の体力を問う試練でもある。海外展開、契約管理、権利関係、メンバーとの信頼関係、次の活動設計。そのすべてを短期間で処理できなければ、成功そのものが火種になることもあるといえるだろう。
もちろん、RESCENEが同じ道をたどるという意味ではない。
むしろ、今のRESCENEには明るい材料が多い。ミームから始まった認知度が音源につながり、音楽番組1位につながり、大型イベント出演にもつながっている。日本人メンバーのミナミを通じて日本との接点もあり、BTS・JUNG KOOKが彼女のカバー映像に反応したことも、グループの名前を広げるきっかけになった。

ただ、K-POPガールズグループの過去の事例が示すのは、“バズったから安心”ではないという現実だ。
K-POPのトップグループといえるBTSやSEVENTEENも、現在のような巨大なHYBE体制から生まれたわけではない。しかし彼らは、数年単位で実力、パフォーマンス、セルフプロデュース、ファンダムを積み上げ、ヒットを一過性の話題で終わらせなかった。
一方、中小事務所発のガールズグループは、音源やミームで一気に大衆へ届く爆発力がある反面、その熱量を固定ファンダムや長期ブランドに変えるまでの時間が限られやすい。世間は驚くほど早く振り向くが、同じ速さで次の話題へ移っていく。
RESCENEは“中小の奇跡”で終わるのか。それとも、中小事務所ガールズグループの新しい成功例になるのか。彼女たちの物語は、まさにここからが本番だ。
■BTS・JUNG KOOKも「ヤッホー」と反応! 話題のRESCENE、日本に急接近のワケ


