「ホン・ミョンボが撮ったに違いない」
韓国で公開中の映画『HOPE』(原題)のレビュー欄で、そんな皮肉が大きな共感を集めている。
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正確には、「ナ・ホンジン監督が撮ったのではない。ホン・ミョンボ監督が撮ったに違いない」というコメントだ。
映画評のはずなのに、なぜサッカー韓国代表の前監督の名前が出てくるのか。日本ではまだ公開されていない作品だけに、少し説明が必要だろう。
出演陣は豪華だが…賛否両論
韓国で7月15日に公開された『HOPE』は、『チェイサー』『哀しき獣』『哭声/コクソン』などで知られるナ・ホンジン監督の新作だ。
出演陣も豪華で、ファン・ジョンミン、チョ・インソン、チョン・ホヨンに加え、マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィキャンデル、テイラー・ラッセルら国内外の俳優が名を連ねている。

興行面では、好調だ。映画振興委員会の映画館入場券統合ネットワークによると、『HOPE』は公開5日目に観客動員数200万人を突破。今年公開作のなかでは最速ペースだという。
つまり、観客を劇場に引き寄せる力は十分にある。ところが、劇場を出たあとの評価は大きく割れているようだ。
強烈なアクションや映像美、これまでの韓国映画ではあまり見られなかった世界観を高く評価する声がある一方、物語のつながりやセリフ、結末をめぐっては厳しい反応も少なくない。
「追撃シーンをはじめとするアクションは断然最高」としながらも、「監督が物語を終わらせる方法をうまく見つけられなかった感じ」と評する観客もいれば、「本当にセリフは誰が書いたのか」「興味深く見ていたが、チョン・ホヨンが出てくる瞬間に没入感が壊れた」といった辛辣な声も出ている。

そのなかで、最も大きな共感を集めたのが、冒頭のコメントだった。
「ナ・ホンジン監督が撮ったのではない。ホン・ミョンボ監督が撮ったに違いない」
韓国メディアによると、このコメントは7月21日現在、1万7000件を超える「共感」を得ている。「反対」の4倍以上にあたる数字だ。
この皮肉が刺さった理由は明白だろう。
『HOPE』には、ナ・ホンジンという名匠のブランド、国内外のトップ俳優、巨額の制作規模という“豪華な材料”がそろっている。それにもかかわらず、一部観客からは「うまくまとまっていない」「素材を生かし切れていない」と受け止められている。
その構図が、ホン・ミョンボ前監督が率いた韓国代表と重なったのだ。
“失敗”を表す比喩に
そもそもホン・ミョンボは、韓国サッカー界では特別な存在といえる。

現役時代には2002年日韓ワールドカップで主将として韓国をベスト4へ導き、「永遠のキャプテン」とも呼ばれたレジェンドだ。Jリーグでプレーした経験もあり、日本のサッカーファンにもなじみのある人物だ。
しかし、スペインの優勝で幕を閉じたばかりの今回のワールドカップで、その名声は一転した。
韓国代表は、ソン・フンミン、イ・ガンイン、ファン・インボム、キム・ミンジェら、欧州主要リーグで活躍する選手を擁していた。韓国国内では、歴代代表チームのなかでも屈指の戦力との期待もあった。大会前から事前キャンプを行い、目標には遠征ワールドカップ初のベスト8進出も掲げられた。
だが、結果はグループステージ敗退。期待が大きかったぶん、失望も大きかった。
つまり、「ホン・ミョンボが撮ったに違いない」という映画レビューは、単にホン前監督をからかったものではない。豪華な戦力をそろえながら結果を出せなかったサッカー韓国代表と、豪華なキャストと制作規模を持ちながら評価が割れている映画『HOPE』を重ねた、かなり意地の悪い比喩なのだ。
ホン前監督をめぐる冷笑は、すでにサッカー界の内側だけにとどまっていない。

最近では、ホン前監督の顔を使ったAI風刺動画がSNS上で拡散し、「痛快だ」という反応と「さすがに度を越している」という反応が分かれた。さらに韓国サッカー協会をめぐる国会聴聞会も7月30日に予定されており、ホン前監督は証人として採択されている。
監督選任の正当性、協会運営、ワールドカップ敗退の責任。そうした問題が、いま韓国ではスポーツニュースの枠を超えて語られている。
その延長線上で、ついには映画レビュー欄にまでホン・ミョンボの名前が登場した。しかも、それが1万7000件を超える共感を得ている。
もちろん、『HOPE』は興行的には好調であり、作品そのものを一方的に失敗作と決めつけることはできない。映画評論家イ・ドンジン氏のように、同作に5点満点中4点という高評価を与えた専門家もいる。
実際、ポータルの実観覧客評価でも9~10点を付けた観客が半数を超える一方、1~2点の低評価も少なくなく、まさに賛否が割れている状況だ。
それでも、「ナ・ホンジンではなくホン・ミョンボ」という一文がここまで広がった事実は、今の韓国社会におけるホン前監督の立ち位置をよく示している。
かつては韓国サッカーの英雄だった人物の名前が、いまや“期待された材料を生かせなかった失敗”を表す比喩として通じてしまう。
映画『HOPE』のレビュー欄で起きた小さな騒動は、ホン・ミョンボ前監督への批判が、どれほど広い範囲にまで染み出しているかを物語っている。
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