笑いにしてはいけない題材だった。
日本出身や脱北者出身のメンバーも所属するK-POPボーイズグループ「1VERSE(ユニバース)」が批判を受けている。
問題となったのは、マネージャーがメンバーにおびえるような様子を、児童虐待を連想させる文脈に重ねたショート動画だった。
動画はすでに削除されているが、X(旧ツイッター)上では投稿の一部が拡散され、ファンから失望の声が相次いでいる。
「応援アカウントを閉鎖する」
1VERSE側は7月22日、公式Xを通じてコメントを発表した。
「コミュニティのメンバーから懸念の声を受け、最近の動画を削除しました」と説明したうえで、「虐待と関連づけられる状況をコメディ形式で提示することは人を傷つける可能性があり、今回、5TARZ(1VERSEファン名)の中に傷ついた人がいたことを認識しています」とした。

ただ、釈明文が出された後も、批判は収まっていない。
あるユーザーは「児童虐待を何度も経験した者として、“虐待を受けている子どもを見分ける方法”をジョークの設定に使うのは非常に無神経だ」と指摘。「児童虐待はオチでも、パロディにするための形式でもない」と強い不快感を示した。
さらに、「“マネージャーが自分たちのせいで苦労している”という冗談を作る方法はいくらでもあった」とも述べている。
つまり批判の核心は、メンバーとマネージャーの関係性を笑いにしたこと自体ではない。児童虐待という深刻なテーマを、軽いショート動画の設定として使ったことにある。
別のユーザーも「2026年にもなって虐待をジョークにするのは選択として疑問だ」とし、「デビュー前から1VERSEを見てきた。彼らのユーモアも理解しているし、それが好きで応援してきた。でも、これは疑問が残る」と吐露した。
さらに、長く応援してきたファンアカウントの中には、活動休止や閉鎖を表明するものも出ている。
あるアカウントは、「デビュー前から1VERSEを追いかけ、高い期待を持っていた」としながら、「何度も一線を越えてきたことがなかったかのように振る舞うことはできない。今回のTikTokが最後の一線だった」として、永久休止を宣言した。
また別の応援アカウントも、「1VERSEを応援し、宣伝し、愛する目的でこのアカウントを開設した」と説明したうえで、「ここ数カ月の出来事を受け、無期限でアカウントを閉鎖することにした」と明かしている。
もちろん、これらの反応だけでファンダム全体を語ることはできない。ただ、少なくとも一部のファンの間で、今回の動画が深い失望を招いたことは確かだろう。
脱北者もメンバーという多様性
そもそも1VERSEは、K-POP界でも異色の背景を持つグループとして注目されてきた。

メンバーは5人。脱北者出身のヒョク(HYUK)とソク(SEOK)、ラオス系・タイ系アメリカ人のネイサン(NATHAN)、中国系アメリカ人のケニー(KENNY)、そして日本人のアイト(AITO)で構成されている。
グループ名の「1VERSE」には、異なる人生を歩んできたメンバーそれぞれの“verse”が集まり、一つの“universe”を作るという意味が込められている。実際、メンバーの出身地も育った環境も大きく異なり、その多様性こそがグループの大きな特徴だった。
とりわけ、ヒョクとソクという脱北者出身メンバーの存在は、デビュー前から海外メディアの関心を集めてきた。脱北という過酷な経験を経て、K-POPアイドルとして世界に挑む姿は、単なる新人グループ以上の物語性を帯びていた。
だからこそ、今回の騒動に失望したファンも少なくないのだろう。
1VERSEは、「違う背景を持つ人々が音楽でつながる」というメッセージを打ち出してきたグループだ。多様な人生や痛みを抱えた人々が、それぞれの物語を持ち寄って一つの音楽を作る。その物語性が強みだったからこそ、児童虐待を連想させる表現を笑いの形式に乗せたことは、余計に受け止めがたかったのかもしれない。
ショート動画は、いまや新人K-POPグループにとって欠かせない宣伝手段だ。短く、軽く、拡散されやすいコンテンツは、認知度を一気に高める武器になる。だが、その軽さゆえに、題材の選び方を誤れば、一瞬で信頼を損なう危うさもある。
ましてや、虐待は誰かの現実の痛みであり、冗談の形式にして消費できるものではない。
1VERSEは、K-POPの中でも珍しい背景を持つグループとして期待を集めてきた。だからこそ、求められる表現の慎重さも大きい。今回の削除と謝罪で終わるのか、それともファンの信頼を取り戻すための本当の変化につなげられるのか。
異色の新人グループは、デビューから1年余りで厳しい問いを突きつけられている。
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