作家・東野圭吾さんの訃報が、韓国でも大きく報じられている。
東野さんは7月23日未明、大腸がんのため亡くなった。68歳だった。
講談社は7月27日に訃報を伝え、葬儀は遺族の意向により家族葬で執り行われたという。
日本を代表するミステリー作家の死は、韓国メディアにもすぐに伝えられた。
『聯合ニュース』は「“名前がすなわちジャンル”…韓国人が愛した日本の“推理小説の巨匠”東野圭吾」との見出しで報道。『中央日報』は「日本推理小説の大父」、『京畿日報』は「世界が愛した推理小説の巨匠」と表現し、その功績を大きく伝えた。
韓国でここまで大きく扱われたのは、東野さんが日本の作家でありながら、韓国読者にも深く浸透した存在だったからだ。
「韓国人が愛した日本の推理小説の巨匠」

東野さんは1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科を卒業後、エンジニアとして働きながら小説を書き始め、1985年に『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞してデビューした。
その後、『秘密』『白夜行』『容疑者Xの献身』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『マスカレード・ホテル』など、数多くのベストセラーを生み出した。
韓国メディアは、その訃報をさまざまな角度から伝えている。
『聯合ニュース』は、「名前がすなわちジャンル」と表現し、東野さんを「韓国人が愛した日本の推理小説の巨匠」と紹介した。
韓国での人気は村上春樹に劣らないほどだったとし、2012年に韓国語版が刊行された『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が韓国国内だけで170万部以上を販売したことにも触れている。
また、韓国最大級の書店である教保文庫の集計でも、東野さんは2009年から10年間の小説累積販売量で1位に立ったと報じられており、韓国での人気の大きさを物語っている。

一方、『中央日報』は東野さんを「日本推理小説の大父」と呼び、作品性と大衆性をともに認められた作家として紹介した。
『スポーツ朝鮮』も「日本を代表する推理小説作家」と伝え、『容疑者Xの献身』『白夜行』『秘密』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『仮面山荘殺人事件』『クスノキの番人』など、韓国でも親しまれた代表作を列挙している。
さらに『京畿日報』は、「世界が愛した推理小説の巨匠」として東野さんの国際的な評価にも注目した。同紙は、『容疑者Xの献身』が2012年に米国推理作家協会のエドガー賞最優秀長編賞の最終候補に、『新参者』が2019年に英国推理作家協会のインターナショナル・ダガー賞候補に選ばれたことを紹介。作品が世界41の国と地域で翻訳・出版されたことも伝えた。
とりわけ印象的なのは、東野さんが単に多く売れた作家ではなく、ミステリーの読者層を広げた存在だったという点だ。
『聯合ニュース』は、東野さんの作品について「圧倒的な読みやすさと大衆性」を備え、「緻密な構成と大胆な想像力、スピード感ある展開」が長所だと評価。さらに、工学出身らしく原子力、脳移植、仮想現実などの科学的素材を作品に取り入れることにも優れていたと紹介した。
また、『さまよう刃』では少年法、『レイクサイド』では名門校入試と私教育熱など、社会問題を扱った作品も多い。
東野作品を韓国語に翻訳してきたキム・ソニョン翻訳家は『聯合ニュース』に対し、「ミステリーというジャンルを扱いながら、社会と接する部分を非常に多く描き、多様な読者を抱えてきた」とし、「ミステリージャンルの外縁と境界を広げた作家」と評している。
韓国の著名人も追悼
韓国での東野人気を物語るエピソードは、出版界の数字だけではない。
BTSのVも、東野作品に触れていたことを明かしている。米音楽誌『ローリングストーン』のインタビューで、兵役期間を振り返ったVは、自分自身を見つめ直し、「最終的に自分をどのような人間に作り上げたいのか」を整理する時間を持てたと語った。

そのなかで大きな役割を果たしたのが読書だった。Vは「東野圭吾さんの本を一番たくさん読みました」と明かし、哲学書『11の階段』などにも触れながら、自分自身を投影して読んだと語っている。
それだけに、韓国の著名人からの追悼も相次いだ。
作家で放送人のホ・ジウンは自身のSNSで、「東野圭吾先生、安らかにお眠りください。おかげで長い間、幸せでした」と哀悼の意を表した。さらに、当たり前だと思っていたものを失う苦しさに触れながら、喪失の重さをつづった。
アナウンサー出身のタレント、オ・ジョンヨンも、東野さんの訃報を伝える記事を共有し、「最愛の作家。今日も読んでいたのに。謹んでご冥福をお祈りします」と投稿した。まさに読書の途中で届いた訃報だったことが、衝撃の大きさを物語っている。

俳優リュ・スンリョンも、出版社の追悼投稿を共有し、「東野圭吾作家の永遠の安息を祈ります」と記された投稿を通じて故人を悼んだ。リュ・スンリョンは、東野さんの原作をもとにしたディズニープラス作品『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に出演する予定であり、原作者への敬意を示した形だ。

一方、音楽グループRoo’Ra(ルーラ)出身のコ・ヨンウクも「刑務所で東野圭吾の小説を面白く読んだ」と追悼した。彼は2013年、未成年者への性犯罪で懲役2年6カ月の実刑判決を受けた人物だ。
東野作品が韓国でどれほど幅広い読者に届いていたかを示す一場面ともいえる。
東野さんは、闘病中も執筆を止めなかった。8月5日には「ガリレオ」シリーズの最新長編『永遠の記憶』の刊行を控えていたという。1985年のデビュー作『放課後』から、同作を含めて著書は106冊に及ぶ。
韓国メディアが「名前がすなわちジャンル」と表現したように、東野圭吾という名前は、韓国の読者にとっても一つの読書体験そのものだった。日本で生まれた数々の物語は、国境を越えて韓国の読者にも届き、長い時間をともに過ごしてきた。
その作家の突然の別れに、韓国でも悲しみが広がっている。東野さんが残した物語は、これからも多くの読者の本棚で読み継がれていくはずだ。
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