「男性1億5800万ウォン、女性4900万ウォン」
BTSの事務所としても知られるHYBEが公表した2026年上半期の平均給与を男女別に見ると、かなりインパクトのある数字が並ぶ。
男性社員の平均給与は1億5800万ウォン(約1823万円)。一方、女性社員は4900万ウォン(約565万円)。単純計算では3倍以上の差だ。
ただ、この数字だけを見て「HYBEでは男性が女性の3倍も給料をもらっている」と結論づけるのは、少し早い。
なぜなら、社員の構成を見るとさらに興味深い数字が出てくるからだ。
本当に「男性は女性の3倍」なのか
韓国メディア『アジア経済』が金融監督院の電子公示システムに掲載されたHYBEの半期報告書などを分析したところ、今年上半期の社員1人当たり平均給与は8300万ウォン(約958万円)だったという。

男女別では、前述の通り、男性1億5800万ウォン、女性4900万ウォンで、3倍の差がある。
一方、今年上半期、HYBEの男性社員は正規職271人、期間制26人の計297人。これに対して女性社員は正規職603人、期間制54人の計657人だ。女性社員は男性の2倍以上いる。
それにもかかわらず、給与総額は男性が約457億7000万ウォン(約52億8100万円)、女性が約309億6400万ウォン(約35億7300万円)。人数が半分以下の男性側のほうが、給与総額では約1.5倍も多い。
なぜ、こんな逆転が起きるのか。
その大きな要因とみられるのが、高額報酬を受け取る男性役員の存在だ。
『アジア経済』によれば、今年上半期の給与統計に含まれたHYBEの「Cレベル未登記役員」4人の報酬総額は243億ウォン(約28億400万円)。1人平均にすると約60億ウォン(約6億9200万円)に達するという。
しかも、この4人は全員男性だ。
つまり、男性平均1億5800万ウォンという数字には一般社員だけでなく高額報酬の未登記役員も含まれており、ごく一部の高額報酬者が平均値を大きく押し上げている可能性が高い。
そう考えれば、「同じ仕事をしている男性社員と女性社員の給料が3倍違う」と単純に読むことはできない。
注目すべきは、女性社員が人数では圧倒的多数を占める一方、高額報酬者として確認されているCレベル4人はいずれも男性で、役員全体でも男性が多数を占めているという点だろう。
HYBEの女性役員は2023年の6人から、2024年に9人、2025年には10人まで増えた。一方、男性役員は同期間に29人、30人、25人だったという。
女性役員の数は増えている。それでも上層部ではなお男性が多い。
つまりHYBEの男女給与差は、「同じ仕事なのに男女で給与が違う」という問題だけではなく、誰が経営上層部まで上がり、誰に高額報酬が集中しているのかという構造と切り離して考えにくい。
HYBEだけ突出している?
では、これはK-POP業界全体に共通する話なのだろうか。

同じ記事がSMエンターテインメント、YGエンターテインメント、JYPエンターテインメントの上半期平均給与も比較している。
それによると、SMは男性7630万ウォン(約880万円)、女性4988万ウォン(約576万円)。YGは男性6800万ウォン(約785万円)、女性3900万ウォン(約450万円)。JYPは男性8449万ウォン(約975万円)、女性6818万ウォン(約787万円)だ。
3社とも男性の平均給与が女性を上回っているのは同じだが、その差はHYBEほど大きくない。
特にJYPは男性8449万ウォンに対して女性6818万ウォンで、4社のなかでは差が最も小さい。
もちろん会社ごとに組織構成や役職、勤続年数、報酬体系が違うため、単純比較だけで優劣を決めることはできない。
それでも、「K-POP企業だからどこも似たようなもの」と片づけるには、HYBEの数字はやはり目立つ。
さらに興味深いのは、HYBEが今やK-POP企業のなかでも圧倒的な売上規模を持っていることだ。
2026年上半期、HYBEの売上は2兆1483億ウォン(約2478億8500万円)に上る。SM、JYP、YGを含む大手4社全体の売上増加額の9割以上をHYBEが占めたと報じられている。
その一方で、HYBEの上半期の営業損益は、256億ウォン(約29億5400万円)の赤字だった。
売上規模は圧倒的に拡大している一方で、収益面では課題も残る。だからこそ、巨大化した企業のなかで、誰が働き、誰が意思決定し、誰にどれだけ報酬が配分されているのかという点にも目が向く。
K-POP企業の“中身”にも目を向ける時期
K-POPファンが普段目にするのは、アーティストのアルバム売上やツアー規模、チャート順位だ。

だが、その巨大な数字を生み出している会社の内部で、誰が働き、誰が意思決定し、誰にどれだけ報酬が配分されているのかを見ていくと、また違った景色が見えてくる。
「男性1億5800万ウォン、女性4900万ウォン」という数字だけを見て、HYBEが女性社員に一律で低い給料を払っていると結論づけることはできない。
ただ、だからといって、この大きな格差を単なる平均値の問題として片づけるのも難しい。
女性社員が男性の2倍以上いる一方で、高額報酬者として確認されたCレベル4人は全員男性で、役員全体でも男性が多数を占めている。もしこうした構造が続けば、女性が多数を占める現場と、経営判断や大きな報酬を握る層との距離は、さらに広がっていく可能性がある。
K-POP企業はアーティストの活動方針、コンテンツ制作、ファンとの接点まで幅広く左右する存在だ。現場を支える人材と意思決定層の構成が大きく乖離すれば、現場感覚が経営判断に十分反映されにくくなる可能性もある。
こうした社内構造が、いつかアーティストやファンにとって不利益な形で表れなければいいが…。
「誰が働き、誰が決め、誰が大きな報酬を得ているのか」。HYBEの数字は、K-POP企業の内側にも目を向けるきっかけにはなりそうだ。


