キム・スヒョンは、すでに“復帰目前”の俳優ではない。
海外広告に登場し、テレビ番組にも出演した。
韓国の授賞式への参加や海外ファンミーティングの開催も相次いで決まった。活動再開は、もう始まっている。
それでも、ひとつだけ戻っていないものがある。“俳優キム・スヒョン”だ。
「俳優をやっていてよかった」
キム・スヒョンは昨年3月、故キム・セロンさんとの未成年時代の交際疑惑などが浮上し、活動を事実上停止した。
だが、状況は大きく変わった。

キム・スヒョンに対して提起されていた児童福祉法違反などの容疑について、警察は約1年間の捜査を経て「嫌疑なし」として不送致を決定。
一方、未成年交際疑惑などを継続的に提起してきたYouTubeチャンネル「カロセロ研究所」のキム・セウィ代表は、虚偽事実の摘示による名誉毀損などの容疑で拘束起訴された。
さらに8月27日には、広告主との民事訴訟でも最初の勝訴が出た。
スイスの時計ブランド「ミドー」が、キム・スヒョンの所属事務所ゴールドメダリストを相手に提起した約5億7000万ウォン(約6700万円)の契約金返還請求について、裁判所は請求を棄却。ブランド側が主張した契約解除の理由は成立しないと判断した。
もちろん、ほかの広告主との訴訟は残っている。それでも、数カ月前とは状況が明らかに違う。
そして本人もすでに動き始めた。
7月にはフィリピンのファッションブランド「BENCH」の広告モデルとして活動を再開。8月にはインドネシアの民放局RCTIの開局37周年特番に出演。9月1日には、その際に収録されたインタビュー映像がRCTIの公式SNSで公開された。

9月19日には、釜山(プサン)アジアド主競技場で開催される「2026 THE FACT MUSIC AWARDS」にプレゼンターとして登場する。韓国国内の公式イベントへの復帰だ。
さらに10月2日にはフィリピンで約2万人規模のファンミーティング、12月には台湾・高雄で開催される授賞式「Asia Artist Awards」への参加も控えている。
インドネシアで公開されたインタビューでは、「俳優をやっていてよかったと思う」と語り、今後について「ファンの皆さんが望むキャラクターを推薦してもらうのもいいのではないか」と話した。
俳優として仕事を続けたいという意思も、本人の口から改めて示されたことになる。
それでも動かない『ノックオフ』
ところが、その“俳優キム・スヒョン”が戻るという知らせだけが届かない。
最大の焦点が、ディズニープラスのシリーズ『ノックオフ』(原題)だ。
同作は、IMF外貨危機によって人生が一変した男性が、平凡な会社員から世界的な偽物市場の王へと成長していく物語。キム・スヒョンとチョ・ボアが主演を務め、ユ・ジェミョン、イ・ジョンウン、キム・ウィソンらが出演する。

制作費は約600億ウォン(約70億2000万円)とされる大型シリーズで、キム・スヒョンにとって『涙の女王』以降の次回作として大きな期待を集めていた。シーズン2の撮影まで終盤に入っていたとも報じられており、当初は2025年公開予定だった。
しかし昨年のキム・スヒョンの騒動を受けて、撮影と公開が保留に。そして9月になった現在も、再開時期が発表されていない。
先立って5月27日、ディズニープラス側は韓国メディアの取材に対し、『ノックオフ』の公開日程について「追加でアップデートされた状況はない」と明らかにした。
当時は、キム・スヒョン本人をめぐる状況がまだ大きな障害だった。疑惑に関する捜査が続き、広告主との訴訟も進行中。本人の活動再開もまだ本格化していなかった。
そのため、『ノックオフ』が動かないことと、キム・スヒョンが戻れないことは、ほぼ同じ問題として見ることができた。
しかし今は違う。
キム・スヒョン本人は「嫌疑なし」の判断を受け、広告主との訴訟でも最初の勝訴を得た。海外ではすでに広告やテレビ番組に登場し、韓国国内の公式イベントへの復帰も決まっている。
つまり、キム・スヒョンはすでに『ノックオフ』より先に戻り始めているのだ。
最後に残った“俳優キム・スヒョン”
もちろん、だからといって『ノックオフ』がすぐ公開されなければならないわけではない。
作品には多数の出演者とスタッフが関わり、撮影、編集、編成、マーケティングなどさまざまな事情がある。ディズニープラス側も、現在まで再開時期や具体的な理由を明らかにしていない。

『ノックオフ』が停止状態にある理由について、『スポーツ東亜』は「ディズニープラス側が、“司法上の嫌疑なし”がそのまま大衆の感情的な受け入れにつながるわけではない韓国市場の特性を考慮し、慎重な姿勢を取っているというのが業界の大方の見方」と伝えているが、なぜ今も動かないのかを外部から断定することはできない。
ただ、一つだけ確かなことがある。
以前、『ノックオフ』が止まった理由は、キム・スヒョンをめぐる疑惑と明確に重なっていた。だが、本人を取り巻く状況がここまで変わった今、もはや当時と同じ構図では捉えられない。
この作品がいつ動き出すのか。その問いを、これまでのようにキム・スヒョン本人の問題だけに結びつけるのは難しい。
今後、より注目されるのは、ディズニープラス側が『ノックオフ』の今後について、どのような判断を示すのかという点だろう。
広告に戻り、ファンの前に戻り、韓国の公式舞台にも戻る。残るのは、本業である演技の場だ。『ノックオフ』が再び動き出すとき、そこで初めて、“俳優キム・スヒョン”の復帰を完成させる最後のピースが埋まるのかもしれない。
◇キム・スヒョン プロフィール
1988年2月16日生まれ。2011年に放送されたペ・ヨンジュン企画のドラマ『ドリームハイ』(KBS)で一躍人気を集めた。日本でも大ヒットしたドラマ『星から来たあなた』で演技力が高く評価され、アジア各国で不動の人気を誇る。また、主演を務めた2024年の『涙の女王』が世界的なヒットとなり、韓流スターとしての地位を盤石にした。内向的な性格を心配した母親から演劇を勧められたことをきっかけに、俳優を志すようになった。


