映画『スワロウテイル 4Kリマスター』の初日舞台挨拶が4日、東京・TOHOシネマズ日比谷で開催され、三上博史、Chara、伊藤歩、岩井俊二監督が登壇した。公開から30年を迎え、4人が撮影当時のエピソードや作品への思いを語った。
同作は、“円”が世界で最も強かった時代の架空の街「円都(イェンタウン)」を舞台に、移民たちや少女・アゲハの姿を描いた群像劇。1996年9月14日に公開され、劇中バンド・YEN TOWN BANDによる主題歌「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」など音楽も大きな反響を呼んだ。公開30周年を記念し、岩井監督の完全監修によって4Kリマスター・Dolby Atmos化され、同日から全国公開された。

三上は「30年ということですけれど、そんなに経っているような気が全然しなくて。映画自体もまだ初々しいというか、生々しいというか、生きのいい映画だったと思います」と挨拶。Charaも、完成した作品を見返して「懐かしいような、『本当に私だったの?』というような気持ち」と率直な感想を明かした。

公開当時16歳だった伊藤は、「人生の中で、30年の時を経てまた舞台挨拶をさせていただけることは初めて。懐かしい思いと不思議な思いがあります」と感慨深げ。当時まだ生まれていなかった観客もいることに触れ、「どういう気持ちになったのか、すごく興味深く思っています」と客席に語りかけた。

岩井監督は撮影当時について、「みんなで冒険の旅に出ていたような日々だった」と回顧。「今日は短い時間ですけど、冒険の続きをぜひ、という感じで」と呼びかけた。

4Kリマスター版を初号試写で見た伊藤は、「本当に自分が演じていたのかなと思うくらいの衝撃があった」と告白。「涙がなぜか出てくるという不思議な心境で、懐かしくもあり、新しくもありました。私の人生に大きな影響を与えてくれた映画だと改めて思った瞬間でした」と語った。

三上は、アゲハのナレーションから円都のモンタージュへと続く冒頭部分で涙があふれたという。「何で泣いているんだろう、この感情は何なんだろうと思いながら見ていた」と振り返り、撮影前の準備段階から「大げさでなく、命がけだった」と明かした。
さらに、「いろいろな選択があって、いつも『これで良かったのかな』とずっと思ってきたけど、これを見た瞬間に『それで良かったんだ』と、やっと自己肯定できた」と吐露。「だから今があるし、今があるから大丈夫。そしたら未来があると思えた。作品の物語とともに、ずっと泣きっぱなしでした」と振り返った。

Charaは「そんな三上さんが隅っこの方で号泣しているとは知らずに、私は涙を我慢して見ていた」と告白。改めて鑑賞し、「こんなにスピード感のある映画だったんだ」と驚いたという。グリコ役だけでなく音楽制作にも参加したことから、「その後、ミュージシャンとしてすごくパワーをもらった。大切な経験ができた」と振り返った。
岩井監督はリマスター作業について、撮影を担当した篠田昇と「16ミリと35ミリの違うフィルムを混ぜたり、いろいろ無茶をやったので、結構大変だった」と説明。30年前にロサンゼルスで仕上げを行った際の色や質感が記憶に残っていたといい、「篠田さんと一緒に作り上げた色はこんな感じだったよな、と当時を思い出しながら仕上げた」と明かした。
三上は篠田との思い出にも触れ、「僕がずっと歩んできた役者というところと、篠田さんとのやり取りも含めて、すごく思い出深い映画になりました」とコメントした。

Charaは、グリコ役と音楽制作を兼ねた当時について、「映画好きのミュージシャンという感じで参加させていただいた。ただ、音楽だけはしっかりやりたい。私に任されたのはそこだと思っていました」と回顧。岩井監督に「作詞を一緒にやりませんか」と声をかけ、撮影現場で歌詞を考えたことも振り返った。
伊藤と岩井監督の出会いをめぐっては、テレビドラマ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のオーディションが話題に。伊藤が「全く記憶になくて、落とされました」と振り返ると、岩井監督は当時すでに『スワロウテイル』の構想があったと説明した。

岩井監督は、伊藤に会った時点で「もうアゲハだと思った」といい、周囲から同作への起用を勧められたものの、「この人は温存しておきたい」と考えていたことを告白。その後、奥菜恵がオーディションに現れ、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』への起用を決めたという。
伊藤は当時、三上とCharaのファンだったことも告白。「『孔雀王』が大好きで、ずっとまねをしていました。CharaさんのCDも持っていました」と明かし、「何でこの2人と共演できるのか、意味が分からなかった」と振り返った。
また、岩井監督について「自分の中で初めて、『信頼していい大人』だと認識できた男性が岩井さんだった」と語り、Charaについても「勝手にお姉ちゃんのような存在ができて、うれしかった」と当時の思いを明かした。

岩井監督は、『スワロウテイル』のアイデアが『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』より前に生まれていたと説明。「自分のキャリアの出発点になった作品。この後のどの作品にも、このエッセンスが何かしら込められているはず」と同作を位置づけた。

キャスト3人には、「30年前、僕の無謀な冒険の旅に付き合ってもらい、本当に感謝しています」とメッセージ。「生きているとそれなりにいろいろありますけど、みんな元気でここに立っていることを本当に誇りに思います」と感謝を伝えた。
最後に伊藤は、「小さな画面で見る作品も多い中で、映画館で見ることで感じるものがある映画。2回目、3回目も見ていただけたら」とアピール。Charaは、この日に観客が受け取った感覚を“種”になぞらえ、「育てていってもらえるといいのかな」と呼びかけた。
三上は「多分、完成されていないんです。これからまだ育っていく映画」と表現。「映画って観客の人たちが育てていくじゃないですか。まだまだ皆さんで、この映画を育ててもらいたい」と語り、「僕もまだ頑張りますので、この映画と同時に育てていただけたら」と締めくくった。





