愛知・名古屋アジア大会を戦う女子サッカー北朝鮮代表には、サンフレッチェ広島レジーナに所属する在日コリアン3世の李誠雅(リ・ソンア)が選出されている。
9月14日に行われたバングラデシュとのグループF初戦ではA代表で初めて先発出場を果たし、代表初ゴールも決めて10-0の大勝に貢献した。
1999年6月生まれの27歳。大阪府出身で府内の朝鮮学校に通い、高校時代はセレッソ大阪堺ガールズ(現セレッソ大阪ヤンマーガールズU-18)に所属。日本体育大学では4年時に背番号10番を背負いキャプテンも務めた。2024年に広島へ加入し、2025-2026シーズンのWEリーグで優秀選手賞を初受賞するなど着実にキャリアを重ねている。
世代別代表では2016年のU-17女子ワールドカップ優勝を経験。今年3月の女子アジアカップでA代表に初招集され、同月3日のウズベキスタン戦で途中出場からデビューを果たした。

李誠雅のA代表初ゴール「色んな意味で嬉しい」
そんな李誠雅の成長を以前から見守ってきた人物が、現役時代に北朝鮮代表として2010年南アフリカW杯に出場し、Jリーグや韓国Kリーグでもプレーした安英学(アン・ヨンハッ)さんだ。16日、男子サッカー北朝鮮対中国の試合が行われたウェーブスタジアム刈谷で取材に応じた安英学さんは、学生時代の彼女についてこう振り返る。
「誠雅とは彼女が高校生のときに初めて出会いました。大学で日体大に進んだので横浜に来てくれて、その時に話す機会も多くありましたが、誠雅の言動やサッカーへの取り組み方などを見ていたら、“誠雅は本物だな”と…僕はそう思いました」

バングラデシュ戦は現地観戦こそできなかったが、得点シーンは映像で見届けた。「ニアに走り込むのは誠雅が得意とする形。一瞬の動きで相手を外し、ピンポイントで合わせるというのは、本当に誠雅の得意な形だと思います」と称賛し、次のように続けた。
「信頼関係があったからこそのゴールだと思います。短い期間で、代表の選手たちとなかなか息を合わせる時間もない中で、あのようなゴールが生まれたというのは、誠雅の人柄と、信頼関係を築く力と、心から代表のためにと思う、そういう真心が伝わったからこそのゴールだと思っています。本当に色んな意味で嬉しい得点です」

「叶えなければならない夢を、みんなで叶えてほしい」
李誠雅は日体大4年時に右膝前十字靭帯断裂と半月板損傷の大怪我を負い、大学卒業後含め約2年間のリハビリを経験した。「ここに来るまで大きな試練もあった」と語る安英学さんは、「それすらも誠雅は乗り越えて、今こういう舞台に立って、夢に一歩ずつ近づいている姿を見て本当に嬉しく思います」と目を細める。
李誠雅が憧れた選手こそ、まさに安英学さんだった。彼女は大学4年時の2021年、全日本大学女子サッカー連盟の『note』で「ヨンハさんは誰にでもフラットで優しく大きな愛情をもって接している。それだけではなく常に前を見据えて大きな夢と目標を叶えようと、叶えられると信じて行動をする。本当に私の憧れの人であり、憧れのサッカー選手である」と綴っている。
かつて幼い頃の彼女が安英学さんに憧れたように、李誠雅もまた、同じルーツを持つ子どもたちの道しるべとなっている。「誠雅の姿から、在日同胞をはじめ朝鮮学校の学生たちが大きな希望、夢、力をもらっている。本当に嬉しい限りですね。これからもっともっと活躍してくれると信じています」と安英学さんは言う。

北朝鮮の勝ち上がり次第ではあるが、来る25日の女子サッカー準々決勝への現地観戦も予定しているという安英学さん。最後に本人へ届けたいメッセージを尋ねると、温かい言葉が返ってきた。
「僕の座右の銘は“クムン・イルオジンダ(夢は叶う)”でしたが、誠雅は“イルオヤハル・クミイッタ(叶えなければいけない夢がある)”です。“夢は叶う”というのではなく、“叶えなければいけない夢がある”ということを自分自身にずっと言い聞かせ、サッカーに取り組んできました。だからこそ僕は誠雅に、叶えなければいけない夢を仲間たちとみんなで一緒に叶えてもらいたいなと思っています」
女子サッカー北朝鮮代表は本日(17日)19時30分より大阪の長居陸上競技場でミャンマーとの第2戦、21日16時より静岡スタジアム エコパで韓国との第3戦を戦う。今大会で李誠雅がさらに飛躍する姿を期待したい。
(文=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)
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