韓国でも「ちいかわ」人気がついに映画館へ広がっている。
韓国で9月30日に公開された『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』は、公開前日午後の時点で前売り観客数21万388人、前売り率41.4%を記録した。
韓国映画振興委員会の集計では、全国16の市・道すべてで前売りランキング1位。プレミア上映でも平均座席販売率92.1%を記録するなど、公開前から高い関心を集めた。
日本では7月24日の公開後、観客動員1155万人、興行収入168.5億円を突破。『THE FIRST SLAM DUNK』を抜き、日本歴代興行収入ランキング14位に浮上している。
その勢いが韓国にもそのまま押し寄せたと言いたくなるが、どうやら話はそれだけではなさそうだ。
映画以前から、韓国ではすでに大人気
実は韓国では、今回の映画公開以前から「ちいかわ」人気が着実に広がっていた。

韓国では2022年6月から、大元C.I.のコミックレーベル「ミウ」を通じて原作コミックの公式韓国語版が刊行されている。特別版なども販売され、韓国のファンが作品そのものに触れる土台は、すでに数年前からできていた。
その後、人気はグッズやポップアップへと広がっていく。
ソウル・龍山アイパークモールで2024年12月に開かれたポップアップストアでは、オープンからわずか2時間で入場待機番号が1000番を突破。10日間で約3万人が訪れたという。
その集客力を受け、今年2月には同施設に韓国初の常設公式ショップがオープンした。

人気はその後も衰えていない。9月23日、映画関連グッズが入荷した際には、午前6時20分に始まった待機受付がわずか10分で300人を超え、午前9時には1000人台に到達。前夜から並ぶファンまで現れたそうだ。
韓国メディアの取材では、「日本旅行には一度も行ったことがないほど、日本を好きではなかったが、ちいかわはとても好きで、キーホルダーやポーチ、フィギュアなど関連商品に100万ウォン(約11万6000円)ほど使った」と話す30代女性も登場した。
さらに、9月20日からはNetflixでもアニメの配信が始まり、韓国のファンが作品に触れる機会はさらに増えている。
つまり、韓国の観客にとって「ちいかわ」は、映画公開で突然目の前に現れた日本キャラクターではない。コミックから始まり、グッズ、ポップアップ、常設店、アニメと接点を広げながら、数年かけて身近な存在になってきたのだ。
今回の前売り21万人という数字も、そうした積み重ねの先にあると見るほうが自然だろう。
なぜ韓国でも刺さったのか
では、なぜ「ちいかわ」は韓国でもこれほど支持されているのか。
韓国メディアが挙げているポイントのひとつが、「かわいいだけではない世界観」だ。

一見すると、丸くて愛らしいキャラクターたちが暮らす穏やかな世界に見える。ところが実際には、草むしりや怪物退治でお金を稼ぎ、より条件の良い仕事を得るために資格試験を受けることもある。時には危険な存在と遭遇し、生活そのものが脅かされることもある。かわいいのに、生活は意外なほど厳しいのだ。
韓国メディアは「かわいい外見と、決して楽ではない人生との隔たりは、子どもには冒険として、大人には自分の日常を映し出す物語として受け止められ、愛されている」と分析している。
もうひとつ特徴的なのが、「自分に似たキャラクター」を選べることだ。
怖がりながらも諦めないちいかわ、前向きで友達思いのハチワレ、自由奔放なうさぎなど。「それぞれ性格や行動パターンが明確に異なる。かわいい外見だけで選ぶのではなく、自分に似たキャラクターや、自分がなりたいと思うキャラクターを“推し”にできる構造になっている」点が支持されているという。

実際に韓国では、自分に最も近い「ちいかわ」のキャラクターを探す性格診断まで共有されている。ちいかわ、ハチワレ、うさぎなどをそれぞれMBTIタイプに結び付けたオンラインテストも登場しており、それ以前の2024年には、性格・友情・恋愛・職業・未来をテーマに、自分に合うキャラクターを探す単行本『ちいかわ心理テスト』も出版されたそうだ。
さらに、キーホルダーやスマホケースなど日常的に使えるグッズも人気を押し上げる要因だ。
韓国のファッションプラットフォーム「ジグザグ」では、9月1~21日の「ちいかわ」検索量が前年同期比522%増。「ちいかわ スマホケース」は4275%増、「ちいかわ キーホルダー」も377%増を記録したという。
キャラクターを「見る」だけでなく、身につけ、自分の趣味や気分を示す存在として楽しむ。その消費スタイルとも、「ちいかわ」は相性がいいようだ。
『スラムダンク』『鬼滅』とは少し違う
韓国では近年、『THE FIRST SLAM DUNK』や『すずめの戸締まり』『鬼滅の刃』など、日本アニメ映画のヒットが続いている。
ただ、「ちいかわ」はそれらとは少し違う。
『スラムダンク』や『鬼滅の刃』が、原作漫画やアニメシリーズへの支持を劇場版のヒットにつなげたのに対し、「ちいかわ」は映画公開より先に、グッズやポップアップ、常設店などを通じてキャラクターそのものが韓国の日常へ入り込んでいた。
韓国公開初日の翌10月1日には、ちいかわ、ハチワレ、うさぎらが音楽番組『M COUNTDOWN』に登場し、映画の楽曲を披露する予定まで組まれているのだから驚きだ。

だからこそ、前売り21万人という数字も、「日本で大ヒットした映画だから」という理由だけでは説明しきれない。すでに韓国で育っていた「ちいかわ」人気が、今度は映画館へ向かったと見るべきなのだろう。
映画館だけでなく、韓国の日常のさまざまな場所へ広がってきた「ちいかわ」。前売り21万人という数字が、本格的な大ヒットへつながるのか。
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の韓国公開は、映画の興行成績だけでなく、「ちいかわ」という日本発キャラクターが韓国でどこまで浸透したのかを測る機会にもなりそうだ。
■「誰からも望まれてない」「ほんまに金返して」Ado大炎上、韓国発イベント出演で


