BTSの不参加表明などで、物議を醸してきたグラミー賞の新設部門「ベスト・アジアン・ポップ・ミュージック・パフォーマンス」。
だが最終的に、そのまま実施されることになった。
米レコーディング・アカデミーのハーヴェイ・メイソン・ジュニアCEOは10月1日(現地時間)、アジア音楽界の関係者らとの協議を振り返り、「異論や誤解もあった」としたうえで、「圧倒的に最も大きかったのは、この部門を熱心に支持する人々からの声だった」と説明した。
そして2027年2月に行われる第69回グラミー賞で、予定通り初めて授与すると明らかにした。
レコーディング・アカデミーはさらに、初年度ながら同部門にすでに多数の作品が出品されていることも、幅広い支持を示す材料として挙げている。
となれば、次に気になることがある。この新設部門の「初代受賞者」は、誰になるのかだ。
BTS不在で始まる“初代受賞者”争い
これまでBTSをはじめ多くのアーティストがグラミー賞の壁に挑んできたが、実在するK-POPアーティストはいまだグラミー受賞に届いていない。
その歴史が、皮肉にもBTSが距離を置いた“アジア枠”から動き出す可能性が出てきた。

今回のグラミー賞で、BTSは候補争いに加わらない。
BTSは7月、2027年グラミー賞に作品を出品しないと発表。「音楽が地域や言語で区分されるより、音楽そのものとして聴かれ、愛されることを願う」という考えを示した。
新設部門を直接名指ししたわけではないものの、グラミー賞がアジアン・ポップ部門を発表した直後だったことから、アジア音楽を地域や言語で別枠にすることへの問題提起と広く受け止められた。
BTSの決定後、レコーディング・アカデミーも制度を再検討する姿勢を見せたが、最終的には変更しなかった。
一方、BTS以外の有力K-POPアーティストが実際に何を出品したのかは、まだ全容が見えていない。
これまで韓国ではStray Kids、aespa、LE SSERAFIM、ENHYPEN、ATEEZなど世界的に活動するグループが新設部門へ挑戦する可能性が取り沙汰されてきた。海外でも『ビルボード』や『フォーブス』が、BTS不在のなかで誰が候補になり得るのかを取り上げている。

ただし、現時点で「このグループが本命」と決めつけるのは早い。
今後、出品状況や第1回投票、ノミネーション発表を通じて、初代受賞者争いの顔ぶれが少しずつ見えてくる。
海外メディアも警戒「アジアだけの別レーン」
もっとも、この賞は単純に「K-POPの受賞チャンスが増えた」と歓迎されているわけではない。
むしろ海外の有力メディアからも、かなり厳しい視線が向けられてきた。
例えば『フォーブス』は「アジアン・ポップ部門は、一部のファンを含め、アジアのアーティストが主要部門で評価される機会を減らしかねない“別のレーン”を作るものだと広く受け止められてきた」とし、「グラミーのカテゴリーとして“アジアン・ポップ”とは何を意味するのか、そして言語要件でそれを定義することが適切なのかという問題は、今後も残る」と報じた。
また『バラエティ』は、BTSの反発について、この部門がアジア音楽を際立たせるというより、事実上“ゲットー化(特定の民族や人種、社会的集団が限られた区域に隔離されることを指す言葉)”することへの問題意識があると伝えている。
『ビルボード』や『ローリング・ストーン』も、新設部門の資格要件や他カテゴリーとの関係、制度設計そのものをめぐる問題を継続的に報じてきた。

争点はわかりやすい。
アジアのアーティストに新たな受賞機会を作るのか。それとも、すでに世界的なポップ市場で結果を出している音楽を、「アジア」という別枠へ囲い込むことになるのか。
BTSが示した「地域や言語で分けないでほしい」という姿勢は、まさにそこを突いたものだった。
もし“K-POP初受賞”がここから生まれたら
だからこそ、初代受賞者には少し複雑な意味が付きまとう。
もちろん、どのアーティストであれ、グラミー賞のトロフィーを手にすれば大きな成果だ。K-POPアーティストとして初の受賞となれば、歴史的なニュースになるだろう。
その一方で、「なぜ主要部門ではなく、アジアン・ポップ部門だったのか」という議論も避けられそうにない。
それは受賞するアーティスト自身の問題ではない。むしろ、その瞬間に改めて問われるのはグラミー側のカテゴリー設計だ。
K-POPは近年、「MTVビデオ・ミュージック・アワード」や「アメリカン・ミュージック・アワード」などで主要賞を獲得するまでになった。BTSは今年の「MTVビデオ・ミュージック・アワード」で、主要部門の「ソング・オブ・ザ・イヤー」含む3部門を受賞している。

それでも、グラミー賞だけは長く届かなかった。
そしてようやく生まれるかもしれない最初の受賞が、BTSが問題提起をした「アジア」という新しい枠からだったとすれば、これ以上ないほど象徴的だ。
BTSはそのレースから降りた。しかし、賞は残り、相当数の作品がすでに集まっている。
次に注目すべきは、誰がその初代受賞者になるのか。そして、そのトロフィーがK-POPにとって「壁を破った証し」になるのか、それとも新たな議論の始まりになるのかだろう。
その顔ぶれは、これから少しずつ明らかになっていく。
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