「BTSも軍隊に行ったのに、なぜスポーツ選手はアジア大会の金メダルを取れば兵役特例を受けられるのか」
韓国で長年くすぶってきた兵役をめぐる“公平性”の議論が、再び熱を帯びている。
きっかけは、2026年愛知・名古屋アジア大会だ。
韓国U-23サッカー代表は10月3日の男子決勝で日本を1-0で下し、大会4連覇を達成。兵役を終えていた3人を除く20選手が、いわゆる「兵役免除」と呼ばれる兵役特例の対象となった。
本来なら祝福一色になるはずの金メダルだ。しかし試合後、一部選手が兵役特例を強調する発言や行動を見せたことで、議論は思わぬ方向へ向かった。
「軍隊に行きません」発言で一気に炎上

U-23代表のヤン・ミンヒョクは試合後、「メダルや優勝は重要ではなかった。軍免除という報酬があるから、それだけを見て戦った」と発言。主将のイ・ギヒョクも「僕、軍隊に行きません」と口にした。
さらにパク・スンスは、軍服務を終えた兵士が記念にかぶる帽子を着用した写真をSNSに投稿した。
批判が殺到すると3人は相次いで謝罪。韓国サッカー協会まで、選手たちの軽率な言動によって国民や現役兵士に失望を与えたとして謝罪する事態となった。
そして批判の矛先は、選手個人から制度そのものへと向かっている。
現在の韓国では、オリンピック3位以上、またはアジア大会1位となった選手は「体育要員」に編入される。完全に兵役義務が消えるわけではなく、基礎軍事訓練などを受けたうえで本来の競技活動を続けながら義務を履行する仕組みだ。
とはいえ、一般の男性が長期間にわたって部隊で服務するのとは大きく異なる。そこで改めて持ち出された名前が、BTSだった。
世界1位になったBTSでも対象外

BTSは米ビルボードのメインシングルチャート「HOT 100」で1位に立つなど、K-POPの世界的な拡大を象徴する存在となった。
それでも兵役特例の対象にはならなかった。
2022年12月に最年長のJINが入隊したのを皮切りに、J-HOPE、RM、V、JIMIN、JUNG KOOKが服務。SUGAも社会服務要員として義務を果たし、2025年6月までに7人全員が兵役義務を終えた。
BTSの兵役をめぐっては、入隊前にも大きな議論があった。韓国音楽コンテンツ協会のキム・チャンファン会長がイ・ホンスン国防委員長に会い、「芸術・体育要員の編入は文化暢達と国威宣揚が要件であるにもかかわらず、クラシック音楽、国楽、舞踊などの分野は規模が小さい国内外のコンクール入賞でも兵役特例対象になりうる、しかし大衆音楽芸術家には、機会さえ与えられていない」と訴えたこともあった。
イ・ホンスン委員長は「国防委員会で法案審査に活用するために実施した世論調査の結果、60%以上がBTSの兵役特例に賛成し、大衆音楽芸術家への差別についても共感している」と説明。大衆文化芸術家の「国威発揚」を証明する明確な基準を盛り込む方向で、法案準備に努力する考えを示した。しかし、結果的に制度改正には至らなかった。
今回の騒動を受け、政治家からもこの違いを疑問視する声が出た。
ユ・スンミン元議員は、「国威発揚の効果だけで見ればBTSほどの若者はいないのに、BTSは軍隊に行かなければならず、アジア大会金メダリストは免除される制度が果たして公平なのか」と問題提起。
ナ・ギョンウォン議員も、BTSが兵役を履行したことを挙げ、「国威発揚という名分だけでは国民を説得できない」と制度の見直しを主張した。
そして今、同じ問題はBTSだけの話ではない。
世界的な人気を誇るSEVENTEENでも、ウォヌ、ウジ、ホシをはじめ、現在6人のメンバーが兵役義務を履行中だ。さらにスングァンとディノも10月26日の入隊を予定している。

K-POPはどこまで行けば“資格”を得られるのか
ここで浮かび上がるのが、制度の境界線だ。
芸術分野にも兵役特例は存在する。兵務庁が定めた国際・国内芸術コンクールで一定の成績を収めた人は「芸術要員」となることができる。
しかし、“大衆文化”は別だ。
K-POPアーティストが世界的な音楽チャートで1位になろうが、巨大なワールドツアーを成功させようが、それ自体が兵役特例につながる制度はない。
もちろん、だからといって「K-POPスターも兵役を免れるべきだ」と単純に結論づければ、新たな線引きが必要になる。ではビルボード1位なら対象なのか。グラミー賞ならどうなのか。売上か、観客動員数か、それとも海外での知名度なのか。
基準を作れば、今度はその基準自体の公平性が問われる。

だからこそ、今回の論争が突きつけているのは「誰を免除するべきか」だけではない。
BTSは世界の頂点に立っても服務した。SEVENTEENのメンバーも今、活動を止めて兵役義務を果たしている。一方、スポーツではアジア大会で金メダルを獲得すれば、現役服務に代わる兵役特例の対象になる。
時代が変わり、韓国の名前を世界に広める存在も大きく変わった。
それでもなお、この違いを「国威発揚」という一言だけで説明できるのか。今回の金メダルが再び投げかけたのは、選手個人への批判以上に、50年以上続く兵役特例制度そのものへの問いなのかもしれない。
■BTSだけの問題ではない…兵役の恩恵が受けられないのは“大衆文化”への差別か


