たった4組だった。
IVE、KiiiKiii、FIFTY FIFTY、パク・ヒョシンだ。
グラミー賞で新設された「ベスト・アジアン・ポップ・ミュージック・パフォーマンス」部門にエントリーした韓国勢は、わずか4アーティストだったと韓国メディアが報じている。
一方、日本からは宇多田ヒカル、King Gnu、羊文学、米津玄師、YOASOBI、AKB48、Ado、サカナクションなど、多くのアーティストが同部門に作品をエントリーしたという。
同じ「アジアン・ポップ」という新設枠を前に、なぜ日韓でここまで温度差が生まれたのか。
K-POPからは、わずか4組
前述したように、韓国メディアの報道によると、同部門に出品した韓国勢はIVE、KiiiKiii、FIFTY FIFTY、パク・ヒョシンの4組。

IVEは『BANG BANG』、KiiiKiiiは『404(New Era)』、FIFTY FIFTYは『STARSTRUCK』、パク・ヒョシンは『AE』をそれぞれ提出したと伝えられている。
一方、HYBEをはじめ、SMエンターテインメント、YGエンターテインメント、JYPエンターテインメントといった韓国の大手事務所からは、同部門への出品が確認されていない。ATEEZやBLACKPINKのジェニーもエントリーしなかったとされる。
ただし、ここで「K-POPがグラミーを拒否した」とひと括りにするのは正確ではないだろう。K-POP勢の一部は、新設された「アジアン・ポップ」には作品を出していない一方、既存の「ベスト・ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス」などにはエントリーしているからだ。
ジェニー、ジス、ENHYPEN、NMIXXらの名前が挙がっており、K-POPがグラミー賞そのものから離れたわけではないのだ。

BTSが投げかけた「地域や言語で分けないで」
温度差を考えるうえで外せないのが、BTSの動きだ。
BTSは今年7月、2027年グラミー賞に作品を出品しない意向を明らかにし、「音楽が地域や言語によって区分されるより、音楽そのものとして聴かれ、愛されることを望む」という趣旨のメッセージを発信した。
新設された「アジアン・ポップ」部門は、K-POP、J-POP、C-POP(中国)など、アジア圏の大衆音楽を対象とする。さらに、少なくとも一つ以上のアジア言語を意味のある形で使用することが条件とされている。
これに対して韓国では、世界市場で活動するK-POPを改めて「アジア」という地域枠にくくることへの疑問が相次いだ。

グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミー側は、こうした批判に対し「アーティストを分離するためではなく、より多くの作品を認めるための部門だ」と説明。主要部門への出品や審査対象になることを妨げるものではないとも強調している。
つまり、グラミー側からすれば“新しい機会”だが、一部のK-POP側からすれば“新たな囲い”にも見えているわけだ。
日本からは有力アーティストが続々
その一方、日本からは多くのアーティストが同部門に作品を出した。
韓国メディア『スポーツ朝鮮』『ニュースエン』『マイデイリー』などは、日本から宇多田ヒカル、米津玄師、YOASOBI、King Gnu、羊文学、AKB48、Ado、サカナクションらが同部門にエントリーしたと伝えている。
もちろん、彼らが「アジアン・ポップ」という枠そのものをどう評価しているかまでは明らかになっていない。エントリーしたからといって、部門新設の理念に全面的に賛同していると見るのは早計だ。

それでも、K-POPの主要勢が距離を置いた部門に、日本の有力アーティストが相次いで作品を提出したという事実は興味深い。
結果として、同じ東アジアの音楽市場でありながら、この新設部門に対する日韓の温度差は鮮明になった。
“アジア枠”を必要とするのは誰なのか
その違いは、単なるグラミー賞への姿勢の差というより、世界市場における現在地の違いを映しているのかもしれない。
K-POPは近年、米ビルボードなど海外主要チャートで常連となり、大規模なワールドツアーを行うアーティストも増えた。少なくとも一部のK-POPアーティストは、もはや「アジアの音楽」という地域枠ではなく、世界のポップ市場そのもののなかで評価されることを求めているように見える。
だからこそ、「アジアだけを切り分けた部門」に違和感を覚える側が出てくる。

一方、日本のアーティストにとっては、「アジアン・ポップ」がグラミー賞で評価される新しいルートになり得る。これまでグラミー賞との接点が限られていた日本勢にとっても、候補入りや受賞を通じて国際的な注目を得る新たな機会になり得る。
どちらが正しいという話ではないだろう。
実際、「アジアン・ポップ」部門全体の出品数は116作品とされ、同じく新設された「ベスト・ラテン・ソング」の519作品を大きく下回った。初年度からすべてのアジア圏アーティストに歓迎されているとは言い難い状況だ。
それでも、日本勢はこの新しい入口を使い、K-POPの主要勢はそこから距離を置いた。
「アジアン・ポップ」という同じ看板を前にしたとき、そこに“チャンス”を見るのか、それとも“線引き”を見るのか。
わずか4組というK-POP勢の出品数と、日本から相次いだ挑戦は、いまのアジア音楽を取り巻く立ち位置の違いを、くっきりと浮かび上がらせている。
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