BTSが地球の裏側で、大きな熱狂を巻き起こしている。
10月2日のコロンビアを皮切りに、ペルー、チリ、アルゼンチン、ブラジルを巡るワールドツアー『ARIRANG』の南米公演。
各地でファンが熱烈な歓迎を送るなか、現地社会でもさまざまな出来事が起きている。
チリでは警察がBTSファンの行動を公に絶賛。ペルーではRMが一部ファンに自粛を求め、ブラジルでは公演のステージ構成をめぐって政府の消費者当局まで動いた。
一体、南米で何が起きているのか。
そこから見えてくるのは、コンサート会場を飛び出し、現地社会にまで広がるBTSの影響力だ。
音源再生数が300%増加
まず驚かされるのが、南米におけるBTSの人気の“伸び”だ。

10月29日、BTSの所属事務所BIGHIT MUSICは、南米各国で広がるBTS人気について、現地の専門家の分析やストリーミングデータを紹介した。
それによると、音楽ストリーミングサービスSpotifyでのBTS楽曲の再生数は、コロンビアで過去3年間に約300%増加。アルゼンチンでも、2025年10月から2026年9月までの再生数が、前年同期と比べて約200%増加したという。
いずれも大幅な伸びだ。デビューから13年が過ぎたBTSが、南米で今なお大きな支持を集めていることをうかがわせる。
では、なぜこれほど支持されているのか。
チリのディエゴ・ポルタレス大学で政治学を教えるコンスタンサ・ホルケラ(Constanza Jorquera)教授は、現地ニュース番組『T13』で、BTSの歌詞やメッセージに注目。「自己愛を扱った歌詞やメンバーたちの立ち直る力が、若い世代に刺激を与え、絆を育んでいる」と指摘した。
また、ペルーのサンマルコス国立大学で社会学・人類学を専門とするアデマル・ディアス・アパリシオ(Ademar Diaz Aparicio)教授も、現地メディア『RPP』のインタビューで「従来のグループが扱ってこなかった社会的なメッセージを発信し、独自の領域を築いた」と評価した。
もちろん、こうした分析だけで人気の理由をすべて説明できるわけではない。
ただ、南米の大学教授たちがBTSの音楽を社会や若者との関係から論じていること自体、その存在が現地で大きな関心を集めていることを物語っている。
警察がBTSファンを異例の絶賛
BTSへの熱狂は、コンサート会場の外でも注目を集めた。

10月14日、チリの首都サンティアゴで行われたBTSの公演には、約7万6000人が来場した。翌15日、チリ警察トップのマルセロ・アラヤ氏は、ARMYの行動を「模範的」と絶賛。ファンが事前の会議に参加して警備や安全対策に協力し、ホテル周辺に押しかけることもなかったと称えた。
さらにアラヤ氏は、こうしたファンの行動について、特にスポーツイベントなどでも見習うべき模範だと高く評価した。
また17日には、チリ警察首都圏西部地域の責任者、アレックス・バアモンデス氏も「ARMYの行動を高く評価し、称えたい」「非常に素晴らしく行動し、公共秩序に何の問題もなかった」と発言している。
警察楽隊がBTSのヒット曲『Dynamite』を演奏するという、特別な歓迎もあった。
一方、南米の各地でファンの行動が称賛されてばかりいたわけではない。

ペルーに滞在していたRMは10月8日、ファン交流プラットフォーム「Weverse」で異例のお願いを発信した。宿泊先のホテル前に一日中集まるファンがいるため、メンバーやスタッフが十分に休めず、ほかの宿泊客にも迷惑をかけているというのだ。
RMは歓迎への感謝を伝えながらも、休息が取れなければ公演にも支障が出ると説明。「ARMYなら理解してくれて、もうそうしないと信じている」と自粛を呼びかけた。
熱烈な歓迎を受けながらも、その熱意が時にアーティストや周囲の人々の負担になる。南米ツアーでは、そんな場面も生まれていた。
ブラジル政府まで動いた
そして、南米ツアーの最終開催地となるブラジルでは、思わぬ騒動が起きた。
問題となったのは、コンサートで使用される大型スクリーンの数だ。
韓国やアメリカ、ヨーロッパなどの公演では12枚が設置されていたのに対し、南米公演では4枚に減少。これを知った現地ファンから、ステージから遠い座席ではメンバーの姿を十分に見られないのではないかと不満が噴出した。
サンパウロ州の消費者保護機関には、10月21日までにBTS公演に関する518件の苦情が寄せられ、このうち460件が公演の会場構造に関するものだったという。

事態を受け、ブラジル法務・公安省傘下の国家消費者庁は、主催会社Live Nationとチケット販売会社Ticketmasterに説明を要求した。
これに対し、Live Nationは、南米公演のステージ構成が異なるのは物流や日程上の制約によるもので、より多くのファンが公演を楽しめるようにするための判断だったと説明。4枚のスクリーンでも360度の観覧環境を提供できると主張した。
ただし、ブラジル当局が確認しようとしているのは、スクリーンの枚数そのものだけではない。チケット販売時にどのような情報が示され、観客が実際のステージ構成を十分に理解できていたのか。その点が重要な争点となっている。
現時点で、主催者側の不当な販売行為が認定されたわけではない。それでも、BTSのコンサートをめぐるファンの不満を受け、ブラジル政府の消費者当局が主催者らに正式な説明を求める事態となった。
音楽の再生数は急増し、警察はファンの行動を称賛。一方ではRMが自粛を求め、別の国では公演運営をめぐって行政が動いた。それぞれ事情も性質も異なる出来事だが、BTSが南米各国で巻き起こしている熱狂の大きさを物語っている。
そんなBTSの南米ツアーも、10月31日のブラジル・サンパウロ公演で幕を閉じる。そして11月19日には台湾・高雄からアジアツアーがスタートする予定だ。
地球の裏側で巻き起こした熱狂は、今度はアジアへと舞台を移す。
■BTSの公演中、会場付近で指名手配されていた殺人事件の容疑者が逮捕


