華やかなステージに立つK-POPアイドル。
その世界に憧れ、海を渡って韓国でデビューする日本人も少なくない。
【画像】元K-POPアイドルの日本人、事務所トラブルで借金4700万円
しかし、夢をかなえた先で、思いもよらない現実に直面することもある。
元K-POPアイドルの日本人ケンタが最近、所属事務所との契約トラブルを経て、約4億ウォン(約4700万円)の借金を抱えていると告白し、衝撃を与えた。
かつては銀行口座を差し押さえられ、手元に1000ウォン(約120円)札が1枚しか残っていなかった時期もあったという。
実は、韓国でアイドルになる夢をかなえながら、事務所との契約問題で巨額の賠償を求められた日本人メンバーは、ケンタだけではない。
過去には、日本人4人組のK-POPガールズグループが、所属事務所から約1500万円の損害賠償を請求され、法廷で争ったこともあった。
韓国で同じように夢を追い、事務所と対立することになった日本人アイドルたち。しかし、賠償をめぐる裁判の結末は大きく異なった。
約4700万円の借金告白
ケンタこと高田健太は、2017年に韓国のオーディション番組『PRODUCE 101 SEASON2』に出演し、注目を集めた日本人アイドルだ。

同年10月、番組出演者によるプロジェクトグループJBJのメンバーとしてデビュー。JBJは約半年で活動を終えたが、その後は韓国人メンバーのキム・サンギュンとJBJ95を結成し、活動を続けた。
ところが、所属事務所との関係が悪化。2021年には専属契約をめぐる訴訟に発展した。
2022年10月、ソウルの裁判所は、JBJ95と所属事務所の専属契約について、すでに効力がなくなっていると判断した。
しかし一方で、契約違反の主な責任はメンバー側にあると認定。事務所が準備していた無観客配信ライブへの出演を拒否したことなどを理由に、ケンタには6億6500万ウォン(約7900万円)の賠償を命じた。
ただし、その後の2024年10月に報じられた控訴審では、ケンタに対する賠償額は2億8800万ウォン(約3400万円)に大幅に減額された。裁判所は、事務所側の財政状況やコロナ禍による活動への影響なども考慮した。
専属契約の効力がなくなったと判断されながらも、賠償の支払いを命じられるという、複雑な結果だった。

それから2年。10月24日にYouTubeチャンネル「ICU」で公開された動画で、ケンタは現在も大きな借金を抱えていることを明かした。
「アイドル活動をしていたけれど、事務所を出ることになって借金ができた。4億ウォン」
2024年の控訴審で認められた賠償額と今回明かした借金の関係や、控訴審後の経緯は明らかになっていない。ただ、返済の重圧が今も続いていることは、本人の言葉から伝わってくる。
「口座が差し押さえられて突然使えなくなり、手元には1000ウォン札1枚しかなかった」。翌日の食事さえ心配する日々。周囲の知人が米を送って助けてくれたこともあったという。
さらに、「一度は辞めようと思った」「人生で初めて目標を失った」と、アイドル活動への情熱まで失いかけた時期を振り返った。
日本人4人組にも賠償請求
ケンタとは異なる結末を迎えたのが、日本人4人で結成されたガールズグループSKY GIRLS'(スカイガールズ)だ。

2019年11月に韓国でデビューした彼女たちも、K-POPへの憧れから海を渡った若者たちだった。
ところが、活動を始めると、所属事務所との間で深刻な対立が生じた。
2023年4月、元メンバーのカリナとルナは日本のインターネット番組『ABEMA』の取材で、当時の生活について証言した。
事務所には、スーパーに行ったことや地下鉄に乗ったことまで、その都度報告しなければならなかったという。
特につらかったのが、厳しい体重管理だった。カリナは「何を食べたか、写真をつけて報告しなければならない。朝起きたときと夜の体重を(事務所代表に)送らなければいけなかったので、ご飯はお茶碗の4分の1とか。極限までみんな体重を落としていた」と証言した。過度な減量によって体調を崩しても、十分に休めなかったとも。
また、ダンスや歌の指導も十分とはいえず、動画サイトを見て練習するよう求められることもあったという。
もっとも、これらは元メンバー側の証言だ。事務所側は裁判で、メンバーの主張を否定し、厳しい指導も本人たちの希望に沿ったものだったと反論していた。
2020年、メンバー4人は事務所との契約解除を求めた。しかし、所属事務所のSKYエンターテインメントは、10年間の契約を途中で解除したのは契約違反だとして、約1521万円の損害賠償を請求。東京地方裁判所で争うことになった。
そして2023年3月28日、判決が下された。
東京地裁は、メンバーが事務所の強い指揮・監督下に置かれ、自由に活動を断ることが事実上難しかったと判断。契約解除を有効と認め、事務所側の請求をすべて棄却した。
なお、メンバー側が訴えた行為のすべてが、判決で認定されたわけではない。判決後、元メンバーの一人は「辞める決断をして良かった。自分たちの意思を大事に、信じて頑張ってきてよかった」と安堵の思いを語った。
一方、当時の取材で、再びアイドルのオーディションを受ける自信はないとも打ち明けている。
賠償請求からは解放されたものの、韓国での経験は、彼女たちの夢にも大きな影響を残したようだ。
「借金にも感謝している」
ケンタとSKY GIRLS'。いずれも韓国でK-POPアイドルとしてデビューし、所属事務所との契約をめぐって裁判に至った日本人たちだ。
ただし、契約内容も争点も異なり、単純に同じ問題として扱うことはできない。ケンタは専属契約の効力がなくなったと判断された一方、損害賠償を命じられた。SKY GIRLS'は、事務所側の賠償請求が退けられた。
そして、その後の歩みも異なる。
SKY GIRLS'の元メンバーたちは2023年の取材で、一般企業に勤めながら、再びアイドルを目指すことへの不安を語っていた。
一方、ケンタは現在も韓国で音楽活動を続けながら、借金の返済に向き合っている。その彼が、今回の動画で語った言葉が印象的だ。

「人生には“借り”というものがあると思う。誰かに助けてもらったことも、自分にとっては借りだと思っている。そういう恩を返しながら生きていくのが、良い人生なんじゃないかと思う。だから、この借金にも感謝している。自分を動かす原動力になっているから。僕の人生は平坦ではない。だからこそいい」
かつては目標を失い、生活さえままならなかったというケンタ。それでも今は、借金を返し、苦しい時期に助けてくれた人々へ恩を返すことを新たな目標にしているそうだ。
華やかなステージの裏で、思い描いた未来とは異なる現実に直面した日本人アイドルたち。その一人であるケンタは、今も借金を返すという目標を胸に、韓国で歩み続けている。
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