「インフルエンサーのような仕事をしている」
10年間、K-POP界の第一線を走り続けたアイドルが、大手事務所を離れて約7カ月。
その意外な近況に、ファンから複雑な声が上がっている。
話題の中心にいるのは、4月にSMエンターテインメントを退社し、ボーイズグループNCTを脱退したマークだ。
かつてNCT 127とNCT DREAMを掛け持ちし、K-POP界でも屈指の多忙な日々を送っていた彼が、なぜ今、このような反応を呼んでいるのか。
そこには、大手事務所を離れたアイドルと、彼を長年応援してきたファンとの間にある、複雑なすれ違いが見え隠れする。
退社後の姿に複雑な声
発端は11月2日、韓国・江南(カンナム)にある美容クリニック「UH CELL医院」が公開したSNS投稿だった。
同クリニックはマークが来院したことを報告し、写真とともに「写真や映像で見る以上にかっこよくて、笑顔も本当に素敵」「とても気さくで優しい」と紹介。今後の活動にもエールを送った。この投稿は約177万回表示されるほど拡散された。

一見すれば、人気アーティストの来院を喜ぶ、ごく普通の投稿だ。
ところが、これを引用したあるXユーザーは「K-POP界で最も多忙と言われていたアイドルが、大手事務所を退所した途端、インフルエンサーのような仕事をしている。何とも言えない気持ちになる」といった趣旨の投稿で、複雑な心境を吐露した。
もっとも、マークがクリニックと広告契約を結んだのか、報酬を受け取って宣伝に協力したのかは確認されていない。クリニック側が来院を紹介しただけなのかもしれず、実際にインフルエンサーのような仕事を引き受けたと断定することはできない。
そもそもマークは2016年にNCT Uのメンバーとしてデビュー。その後、NCT 127、NCT DREAMなどで活動し、10年間にわたりSMエンターテインメントを代表するアイドルの一人として活躍してきた。
ファンが見慣れていたのは、大規模なコンサートや音楽番組、華やかなステージに立つマークの姿だ。その彼が大手事務所を離れ、美容クリニックのSNSに登場した。こうした変化に、戸惑いを覚える人がいたということだろう。

しかし、今回の反応を単なる「独立後の活動への失望」と片づけると、もっと重要な問題を見落としてしまう。
ファンが愛したのは何か
実は10月にも、マークのNCT脱退をめぐって興味深い投稿が話題になっていた。
あるXユーザーは、「マークもNCTをやめた瞬間に気持ちが冷めた」と告白。チェン、ベクヒョン、シウミンのEXOとしての活動が見られなくなったことについても、同様の感情を抱いたと明かし、「結局、私が見たいのはNCTだしEXOなんだ」とつづった。
さらに、グループに所属している間のソロ活動やユニット活動は楽しめるものの、事務所を移ったり脱退したりすると興味が薄れてしまうという。この投稿は約93万回表示された。
ここで重要なのは、投稿者が必ずしもマーク個人を嫌いになったわけではないことだ。好きだったのは、あくまで「NCTのマーク」。グループという枠組みがあってこそ、その魅力を感じていたということなのだろう。

この投稿が引用していた別のXユーザーの言葉は、さらに踏み込んでいる。
そのユーザーは、アイドルファンとしては言いにくいことだと前置きしたうえで、自分が本当に見たいのは、アイドル本人のありのままの魅力というより、プロデューサーがアイドルを通じて作り上げる優れた作品群なのだと告白した。こちらも約115万回表示されている。
確かに、K-POPアイドルの魅力は、本人の歌唱力やダンス、容姿、人柄だけで成り立っているわけではない。
楽曲、衣装、ミュージックビデオ、コンセプト、メンバー同士の関係性、そして事務所が積み上げてきたグループの世界観。そうした要素が一体となって、一つの作品を作り上げている。NCTのマークを愛していたファンのなかには、その世界観ごと好きだった人もいるはずだ。
そう考えると、脱退後にマークへの関心が薄れてしまうことも、必ずしも不自然ではない。マーク自身が変わったというより、ファンが愛していた「NCTのマーク」という存在が、グループを離れたことで変化したのだ。
独立は裏切りなのか
一方、マークの脱退後に向けられる批判そのものに、疑問を投げかける声もある。
11月4日、あるXユーザーは、マークのニュースが出るたびに批判が起こることについて、「契約途中で脱退したわけでもなく、契約期間中は誰よりも誠実に献身してきた人なのに」と指摘。
契約期間を終えて脱退した途端、まるで呪うような態度を取る人々に対して、「本当に意地が悪い」と不満を示した。そして、「アイドルがグループとしてデビューしたら、死ぬまで絶対にそのグループにいなければならないわけではない」と訴えた。
この投稿も112万回以上表示されている。

実際、マークは4月3日に公開した直筆手紙で、独立に至るまで長い時間悩んできたことを明かしている。
彼は「僕は実は練習生の頃から、もしかしたらそれ以前からも、ずっと心の中に抱いてきた夢がありました。アコースティックギター1本を持って街を歩きながらバスキングをしたり、作家になりたいと思うほど英語で文章を書くことが好きでした」と伝えた。
続けて「10年の契約を終えるこのタイミングで、自分の中にあるすべての感覚を呼び起こし、長い時間悩んだ末に、その夢の完成された姿がどんなものなのかを知りたくなり、そこに本気で飛び込んでみたいと思うようになりました」と説明した。
また、脱退についてはメンバー全員と話し合い、誰一人欠けることなく応援してくれたとも語っている。
もちろん、本人が夢を追うために独立したからといって、すべてのファンが変わらず応援し続ける義務はない。ただ、グループを離れたというだけで、それまでの10年間の活動や献身まで否定する必要もないだろう。
そしてマークは独立後も、音楽活動をやめたわけではない。
自ら設立した「Upper Room」を拠点に、9月にはシングル『My Friend』を発表。さらに11月6日には、約2カ月ぶりとなる新曲『Happiest』のリリースを控えている。

新曲は、世間が決めた基準ではなく、自分にとって本当の幸せとは何かを問いかける楽曲だという。今回の独立を直接歌ったものとは限らないが、そのテーマは、マークが選んだ新しい道とも重なるように感じられる。
一部のファンが見続けたかったのは「NCTのマーク」だったかもしれないが、本人が追い求めているのは、グループの枠を離れた「マーク自身の夢」なのかもしれない。
大手事務所を離れたことで手にした自由は、必ずしもファンが望む未来と一致するとは限らない。
美容クリニックへの何気ない来院投稿が浮かび上がらせたのは、アイドルが自分の道を選ぶ自由と、ファンが愛してきたグループへの思いが、必ずしも重ならないという現実なのだろう。
◇マーク プロフィール
1999年8月2日生まれ。韓国系カナダ人で、本名はマーク・リー、韓国名はイ・ミンヒョン。2012年、中学2年生のときにカナダ・バンクーバーで行われたSMエンターテインメントのオーディションに合格。当初はカナダに住みながら、長期休暇のたびに韓国へ渡り、練習生としての生活を送った。その後、中学3年生になるタイミングで家族とともに韓国へ移住。2016年にNCT Uのメンバーとしてデビューし、NCT 127、NCT DREAM、SuperMでも活動した。2026年4月、SMとの専属契約を終了し、NCTを脱退した。
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