「整形手術の費用は本人負担」「秘密を漏らせば違約罰1億ウォン(約1200万円)」
そんな衝撃的な契約内容が、ほぼ同時期に相次いで報じられた。
しかも、いずれも韓国最大級のエンターテインメント企業、HYBEの傘下レーベルに所属する人気K-POPグループに関係するものだ。
NewJeansとTOMORROW X TOGETHER(TXT)。一方はアーティスト自身、もう一方はイベントに参加するファンを対象とした契約・誓約だが、そこには共通する疑問が浮かび上がる。
契約書は、いったい誰を守るためにあるのか。
NewJeansメンバーの契約に何が?
11月5日(現地時間)、米紙『ニューヨーク・タイムズ』が、NewJeansのメンバー5人と所属事務所ADORが2022年に結んだ専属契約書を入手し、その内容を報じた。

当時、メンバーの年齢は14~17歳。全員が未成年だった。なかでも注目を集めたのが、美容に関する費用負担の条項だ。
報道によると、契約書には、練習生時代の整形手術や肌のケア、体形矯正などにかかった費用の相当部分を、メンバーが負担する内容が盛り込まれていたという。さらに、グループの関係者2人は、一部メンバーがデビュー前に美容施術を勧められたと証言した。
ただし、実際にメンバーが整形手術を受けたり、その費用を支払ったりしたと確認されたわけではない。
HYBE側も、本人の意思に反する整形手術や施術を求めたり、勧めたりした事実はないと反論。NewJeansの練習生時代の費用は会社が負担し、メンバーは負債を抱えることなくデビュー後から収益の精算を受けていたと説明している。
しかし、今回の報道でさらに考えさせられるのは、別の部分だ。
『ニューヨーク・タイムズ』によると、NewJeansの契約書には、韓国政府が定めた「標準専属契約書(芸能事務所とアーティストの公正な契約を促すためのひな型)」にある未成年者の保護規定が盛り込まれていなかった。
具体的には、身体的・精神的な健康や教育を受ける権利、睡眠・休息の権利を保障する規定だ。過度な露出や長時間の活動を制限する内容も含まれていなかったという。

一方、契約書には「不誠実な態度」「自己管理の怠慢」「不適切な恋愛関係」などを禁止する条項があった。会社の名誉を傷つける発言についても、事実かどうかにかかわらず制限する内容だったと報じられている。
もちろん、標準契約書にある保護規定が盛り込まれていないからといって、実際に未成年者が保護されていなかったと断定することはできない。
HYBEも、児童保護に関する法律を遵守しており、学業の中断を強制したり、休息を理由に不利益を与えたりしたことはないと説明。契約は適法に締結され、保護者も条件に同意したと主張している。
それでも、未成年者の健康や休息を守る規定が欠けている一方で、行動や発言を制限する規定が細かく設けられていたという指摘は、考える余地を残す。
TXTのファンには違約罰1億ウォン
一方、11月5日には、同じHYBE傘下のBIGHIT MUSICに所属するTXTをめぐって、別の契約内容が明らかになった。

韓国メディア『スポーツ京郷』が報じたのは、TXTのカムバックショーケースに参加するファンに求められた「秘密保持誓約書」の中身だ。
同紙によると、誓約書には、違反した場合、損害賠償とは別に「1億ウォンの違約罰を支払う」という条項があった。さらに、その金額を「最低限の合理的な金額」とし、金額の多寡や妥当性について異議を申し立てないと約束する内容も盛り込まれていたという。
それだけではない。
違反した場合、民事・刑事上の責任を負うという内容に加え、違反したと合理的に疑われる場合には、会社側が電子機器を確認し、無断で撮影・録音したデータを削除する手続きに同意する条項もあったと報じられた。
今回のショーケースは、11月16日に発売される新アルバム『PERFECT STORM』の事前収録だ。
発売前の新曲やステージが外部に流出すれば、プロモーションに影響を及ぼす可能性がある。そのため、参加者に秘密保持を求めること自体には合理的な理由がある。実際、公式案内でも、コンテンツの流出を防ぐために誓約書への署名を求め、同意しなければ参加できないと明記されていた。

問題は、その条件がどこまで妥当なのかということだ。
一般のファンに対し、損害賠償とは別に1億ウォンの違約罰を定め、その金額に異議を申し立てないよう求める。こうした条件が、情報流出を防ぐという目的に照らして釣り合っているのか。
なお、実際にファンが違約罰を請求されたという話ではない。また、誓約書に書かれているからといって、そのすべてが法的に認められると決まったわけでもない。
それでも、イベントを楽しみにしているファンが、その参加条件として受け入れるには、非常に重い内容に映る。
契約は誰を守るためにあるのか
NewJeansの専属契約と、TXTのファン向け秘密保持誓約書。契約する相手も目的も異なり、単純に同列には扱えない。
前者は長期にわたる芸能活動の権利と義務を定めるもの。後者は、未公開コンテンツの流出を防ぐためのものだ。それぞれの契約には、会社側にも守るべき利益がある。
実際、アーティストの育成には多額の資金が必要であり、新曲やステージの制作にも多くの人々が関わっている。企業がその投資や成果を保護しようとすること自体は、不自然ではないだろう。
しかし、契約にはもう一つ、忘れてはならない役割があるはずだ。それは、契約を結ぶ相手の権利や利益も守ることだ。
NewJeansの報道では、未成年者の保護規定の欠落が指摘された。一方、TXTの誓約書では、ファンに課す違約罰の大きさや、異議を申し立てないという条件が明らかになった。
両者に共通するのは、会社側のリスクを管理するための条項が、契約相手にどれほどの負担を与えるのかという問題だ。

折しもHYBEは、11月3日の決算説明会で、今年第3四半期の売上高が1兆5257億ウォン(約1800億円)に達し、四半期として過去最高を記録したと発表している。
BTSをはじめ、世界中で活躍するアーティストを抱え、K-POP産業を代表する巨大企業へと成長したHYBE。企業規模が拡大すれば、契約によって管理しなければならないリスクも増えるだろう。だからこそ、契約相手との力関係や権利のバランスには、より慎重な配慮が求められる。
今回の2件だけをもって、HYBE全体の契約が不当だと結論づけることはできない。NewJeansの契約についてはHYBE側も正当性を主張しており、それぞれの条項の法的な評価も慎重に判断する必要がある。
ただ、ほぼ同時期に明らかになった2つの契約内容は、K-POP産業に一つの問いを投げかけている。
会社の利益を守るために厳密な契約が必要だというなら、その契約によって義務を負うアーティストやファンの権利も、同じように大切にされるべきではないか。
契約書は会社を守るためだけのものなのか。それとも、関わる人々を守るためのものなのか。世界的な成功を収めたK-POP産業だからこそ、改めて考えるべき問題なのかもしれない。
■【写真】「突然、契約解除」NewJeansになり損ねた日本出身モデル


