株式会社estie(本社:東京都港区、代表取締役:平井 瑛、以下「estie」)が運営する「不動産AI Lab」と東京大学 大学院情報理工学系研究科 山崎研究室による共同研究の成果をまとめた論文が、マルチメディア情報処理分野の国際会議「IEEE MIPR 2026」に採択されました。本研究は、大規模言語モデル(LLM)を用いて、不動産価格予測モデルの特徴量設計やモデル構成の改善案を、LLMが計画・実装・評価するプロセスを自動化する枠組み「CARRE」を提案するものです。

■研究の背景
不動産の価格や賃料を高い精度で予測できれば、適正価格の目安が客観的に得られ、価格設定や投資判断を行いやすくなります。これは資産形成や投資判断を支える重要なテーマです。一方で、不動産の適正価格は立地、面積、築年数など多様な要素が複雑に絡み合って決まるため、予測が難しく従来は専門家の鑑定に頼ってきました。
機械学習による価格予測は近年大きく進歩しましたが、モデルの精度を引き上げる作業には不動産とデータサイエンス双方の専門知識が必要で、特徴量の設計やモデルの組み合わせを試す試行錯誤に、多くの時間と人手がかかります。この工程を自動化する既存手法(AutoML)は、最適化の過程がブラックボックスになりやすく、不動産など業界に特化した知見を取り込みにくいという課題がありました。さらに、賃料予測のような専門性の高いタスクでは、モデルの改善プロセスそのものを自動化する研究はほとんど進んでいませんでした。
■研究の概要
発表テーマ
CARRE: Comprehensive Automated Refinement for Real Estate Using Large Language Models(大規模言語モデルによる不動産価格予測モデルの包括的な自動改善)
本研究では、LLMが持つ幅広い知識と推論能力を活かし、不動産価格予測モデルの改善を自動で「計画・実装・評価」する枠組み「CARRE」を提案しました。具体的には、1.改善案の提案、2.Pythonコードの自動実装、3.検証データでの評価、4.モデルの診断という4段階のサイクルをLLMが繰り返し回し、すべての試行の中から最も精度の高いものを選び出します。予測の土台には、不動産価格予測で実績のある勾配ブースティング(LightGBM)を用いました。
CARREはモデル改善を一つの閉ループ最適化として定式化している点に特徴があり、次の3つを柱としています。
- 改善の履歴を蓄積しながら回す閉ループ最適化で、過去の試行を踏まえ同じ提案の繰り返しを回避
- 物件の属性ごとの誤差の傾向をLLMへ細かくフィードバックし、データに即したきめ細かな推論を実施
- 複数の改善案を並列に試す多候補生成により、探索の幅と安定性を両立

高辻優太ほか「CARRE: Comprehensive Automated Refinement for Real Estate Using Large Language Models」(IEEE MIPR 2026)より引用
こうした仕組みにより、最適化の過程が見えにくい従来のAutoMLと異なり、なぜその改善が有効かを言語化しながら、不動産ならではの知見を取り込んだモデル改善を自動で進められます。これにより、専門家によるモデル改善作業を支援・効率化する可能性があります。
検証には、本研究のために独自に収集した日本の賃貸データと、公開データセットのCalifornia Housingを用いました。日本の賃貸データは、全国の賃貸物件約8,800万件(2018年12月20日~2025年7月7日)を母集団とし、都道府県ごとに偏りが出ないよう抽出した99,975件を用いています。
■研究の成果
- ベースとなるモデルに対し、すべての評価指標で統計的に有意な改善を確認(p < 0.001)
- 日本の賃貸データでは、決定係数(R²)、二乗平均平方根誤差(RMSE)、平均絶対パーセント誤差(MAPE)のすべてで最良の性能を達成
- 公開データのCalifornia Housingでは、すべての指標で最良の結果となり、ベースモデルと比べて平均絶対誤差(MAE)が約13%、平均絶対パーセント誤差(MAPE)が約16%改善
- 既存の代表的なAutoML手法と比べても、同等以上の性能を達成
- 十分な推論能力を持つ複数の大規模言語モデル(GPT-5.2 系、Claude Sonnet 4.6、Claude Opus 4.6 など)で安定して改善が得られ、手法が特定のモデルに依存しないことを確認
- 改善の過程では、都道府県ごとの位置情報を活かした地理的な特徴量の追加や複数モデルのアンサンブル化など人にとっても解釈可能な改善策を、LLMを用いた探索により自律的に獲得
なお、本研究のソースコードは以下で公開されています。
https://github.com/Yuta-TAKATSUJI/CARRE
■株式会社estie 取締役CTO 岩成 達哉のコメント
不動産価格の予測は、立地や築年数など多様な要素が絡み合い、これまで専門家の経験と試行錯誤に支えられてきた領域です。今回の研究では、その「モデルをどう良くするか」という工程そのものを、大規模言語モデルが自ら計画し、実装し、評価しながら回せることを示しました。重要なのは、ただ精度が上がるだけでなく、なぜその改善が効くのかを言葉で説明でき、不動産ならではの知見を取り込める点です。estieは不動産AI Labにおける東京大学 山崎研究室との共同研究を通じて、こうした成果を実際の不動産業務に活かす可能性を検討してまいります。本研究が国際会議に採択されたことを励みに、「不動産×AI」の研究開発をさらに前に進めてまいります。
■研究メンバー
- 高辻 優太(東京大学、筆頭著者)
- 岩成 達哉(株式会社estie 取締役CTO)
- 勝田 良介(株式会社estie VP of Products)
- 増田 俊太郎(東京大学)
- 易 聖舟(東京大学)
- 山崎 俊彦(東京大学 教授)
■採択された国際会議「IEEE MIPR 2026」について
IEEE MIPR は、マルチメディア情報処理と情報検索の分野における国際会議です。第9回となる本年は、タイ・バンコクで開催されます。
- 会議名:IEEE MIPR 2026(第9回 IEEE International Conference on Multimedia Information Processing and Retrieval)
- 会期:2026年8月9日~8月11日
- 開催地:タイ・バンコク
- 公式サイト:https://mipr2026.org/
■東京大学 山崎研究室について
東京大学 大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻の山崎研究室(英名:Computer Vision and Media Lab、主宰:山崎 俊彦 教授)は、コンピュータビジョン、マルチメディア、機械学習、パターン認識などを専門とする研究室です。人やコンテンツ、サービスがなぜ・どのように人を惹きつけるのかを解き明かす「魅力工学」や、機械学習の基盤技術の研究に取り組むとともに、研究成果を実社会のサービスにつなげる社会実装にも力を入れています。
公式サイト:https://www.cvm.t.u-tokyo.ac.jp/
■「不動産AI Lab」について
estieが2025年に設立した「不動産AI Lab」は、「不動産×AI」の領域において研究開発など先進的な取り組みを行い、不動産業界のお客様のAI活用を支援する研究開発組織です。不動産業界のお客様に業務効率化やデータ活用を支援するAIソリューションの提供、研究開発の推進、勉強会・セミナーの開催などに取り組んでいます。
https://www.estie.jp/ai-lab/
株式会社estieestie(エスティ)は、「産業の真価を、さらに拓く。」をパーパスに掲げ、不動産業界全体のデジタルシフトとコアビジネスの高度化および効率化を推進しています。不動産デベロッパーや機関投資家、金融機関向けに日本最大級の商業用不動産データ分析基盤「estie オフィスリサーチ」や「estie レジリサーチ」、「estie 物流リサーチ」、業界特化型AI「estie 案件管理」などの多角的なサービスを展開。また、不動産データと業界特化型AIを活用し、事業の非連続な高度化・効率化に向けた戦略立案・内製化支援ソリューションを提供しています。
【会社名】株式会社estie
【所在地】東京都港区赤坂9-7-2 東京ミッドタウン・イースト4F
【代表者】代表取締役 平井 瑛
【設立】2018年12月
【コーポレートサイト】https://www.estie.jp/
【公式X】https://x.com/estie_corp
企業プレスリリース詳細へ
PRTIMESトップへ
