ベッコフオートメーション(本社:ドイツ・フェアル)の製品および技術は、世界各国のさまざまな産業分野で幅広く活用されています。今回は、米国ニュージャージー州の特注機械メーカーNorwalt Automation Group(以下、Norwalt社)の導入事例をご紹介します。
Norwalt社は、当社の磁気浮遊式搬送システム「XPlanar」を基盤に、消費財容器の表面に直接印刷を行うダイレクトデジタル印刷機「テセラクト(Tesseract)」を開発しました。
磁気浮遊するXPlanar可動子が印刷対象物を6自由度で自在に位置決めすることにより、単一の印刷エンジンで多種多様な形状の容器に対応できる柔軟な印刷機が実現しています。

磁気浮遊式搬送システムXPlanarを採用したNorwalt社のダイレクトデジタル印刷機「テセラクト」。XPlanar可動子が印刷対象の容器をプリントヘッド周辺で自在に位置決め・搬送することにより、高い印刷品質を実現しました。(写真提供:ベッコフオートメーション)
ラベル印刷の課題を根本から見直す
Norwalt社は50年にわたり、Fortune 500企業を含む大手消費財メーカー(CPG)向けに特注機械の自動化を手がけてきました。これまで主流だったラベル印刷方式では、立ち上げに時間がかかり、手作業の介入が多い、印刷ミスや段取り替えの非効率さによって材料ロスが多くなるといった課題がありました。また、小ロット対応のためには、多大な初期投資と長い準備期間を受け入れる必要がありました。
同社の技術営業ディレクターであるカイル・サイテル氏は次のように説明します。「ラベルを大口のロールで発注すると多大なコストになります。また、空調の効いた資材の保管場所が必要となり、本来は製造に活用できるはずのスペースが大きく占有されてしまいます」
そこで、Norwalt社が着目したのが消費財容器の表面にインクジェットで直接印刷を行う「ダイレクト・トゥ・オブジェクト(DTO)印刷」です。
従来のDTO印刷方式の多くは、対応できる形状が1種類に限られ、テーパー形状などの不規則な形状に対応するには、大掛かりな治具も必要でした。
同社は、1台でさまざまな形状の印刷に対応でき、素早く段取り替えができる柔軟な印刷機の開発を目指しました。こうして誕生したのが「テセラクト」です。
XPlanarの6自由度がもたらした発想の転換
先進的なDTO印刷機「テセラクト」の構想は、Norwalt社のエンジニアがベッコフの磁気浮遊式搬送システムXPlanarのデモを見た後に描いたスケッチからスタートしました。
磁気浮遊する可動子に載せた印刷対象物を6自由度で高精度に位置決めすることにより、1台の印刷エンジンで、さまざまな形状の対象物にダイレクト印刷を行うという発想が生まれました。
XPlanar可動子は、対象物の360°回転や、XY方向の移動が可能なだけでなく、Z軸の高さを最大5mmの範囲で微調整できます。このため、複雑な形状の場合でも対象物をプリントヘッド周辺で柔軟に搬送し、サブミリメートル精度の安定した印刷品質を実現します。XPlanar可動子への対象物の載せ替えは、ロボットアームが担います。

印刷が完了すると、XPlanar 可動子上の製品キャリアからロボットアームが容器を取り外します。(写真提供:ベッコフオートメーション)
省スペースで拡張性の高いシステムを実現
初期の検証段階では、XPlanarタイルを3×3枚のレイアウトに配置し、プリントヘッド1基からスタートしました。その後、必要に応じてタイルとプリントヘッドを追加し、段階的に規模を拡大していきました。サイテル氏は「XPlanarの魅力はまさにその点です。スペースが足りなくなったら、タイルを足していけばよいのです」と説明します。
また、XPlanarが従来の機械部品の多くを置き換えたことで、機械構造がシンプルになり、メンテナンス性も向上しました。さらに、機械自体がコンパクトになり、設置スペースの節約にもつながりました。
部品点数が減れば、機械的な故障の原因も減少します。同社の事業開発担当エグゼクティブ・ディレクターであるキース・ハーマン氏は、次のように説明します。「万一エラーが発生しても、機械的な故障ではなく、ソフトウェアの変更で対応できるため、 95% はリモートで解決できています」
制御の中核を担うのが、ベッコフの組込み型PC「CX2062」と、TwinCAT ソフトウェアです。モーションプロファイルはソフトウェアで制御されるため、円軌道から直線軌道への切り替えや、滞留ポイントの調整も、HMI上からボタン1つで実行可能です。
EtherCATによる高速同期とTwinCATによる開発効率化
追加のモーション制御として、ベッコフのサーボモーターターミナル「ELM7212」とサーボモーター「AM8100」が、プリントヘッドの位置決めや高精度な印刷が求められるリニア軸を制御しています。EtherCATによる高精度な同期により、複数のインク色を滑らかに重ね合わせ、高品質な印刷を実現しています。
また、Norwalt社のエンジニアは、XPlanar、PLC、各種モーション制御、HMI、機械安全のすべてを
TwinCAT開発環境に統合することで、開発工数を大幅に短縮しました。
ST言語に加え、PackMLステートマシンやオブジェクト指向プログラミング(OOP)を活用し、テキストベースのワークフローによるバージョン管理手法も導入しました。これにより、かつては手作業により何時間も要した作業を数分で完了できるようになりました。その結果、機械の改良工程を高速化するだけでなく、現場での段取り替え時間の短縮や、より正確な納品計画にもつながっています。
導入効果まとめ:材料ロス削減とオンデマンド生産の実現
「テセラクト」は、多くの成果をもたらしました。DTO印刷により、大型ラベルロールから生じる材料ロスが無くなり、在庫保管コストを削減しました。また、XPlanar導入により部品点数を削減し、機械の部材コストを30~40%削減しました。その効果について、ハーマン氏は、「数十万ドル規模の節約になります」と述べています。さらに、印刷品質を向上しながら、必要なときに必要な分だけ、カスタマイズ品をオンデマンドで生産できるようになりました。
これにより、Norwalt社が目指す、これまでの印刷機の設計思想を根本から変える印刷機が誕生しました。消費財業界に「未来の工場」を届けるというNorwalt社の長期的なビジョンを具現化する、新しいダイレクトデジタル印刷機です。
https://www.youtube.com/watch?v=zkCrm7K7Ups
Norwalt社事例 : ダイレクトデジタル印刷機「テセラクト」にXPlanarを採用(出典:ベッコフオートメーション公式YouTubeチャンネル)
参考URL:
■ Norwalt Automation GroupウェブサイトURL:www.norwalt.com
■ ベッコフ XPlanar製品ページ:www.beckhoff.com/xplanar
ベッコフオートメーション 会社概要
ベッコフオートメーションはPC制御に特化した制御機器メーカーです。独自の計測・制御ソフトウェア「TwinCAT」により、Windowsなどの汎用OSを搭載した産業用PCをリアルタイムコントローラ(NCやPLCなど)として活用することが可能です。また、高速・高同期の産業用通信規格「EtherCAT」の開発元でもあり、その推進団体であるEtherCAT Technology Group(ETG)は76カ国・地域の8,100以上の組織が参加する世界最大の産業用通信規格推進団体として知られています。TwinCATやEtherCATを搭載した産業用コントローラは、産業用ロボット・自動車・包装機械・工作機械・風力発電設備など、世界中の多様なアプリケーションで採用されています。
https://www.beckhoff.com/ja-jp/
(本リリースは、ドイツ・フェアル本社にて発行された機関誌「PCコントロール 包装機械特別号2026」に掲載された事例記事の抄訳です。)
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