ヒオデオキシコール酸(HDCA)が脂肪肝を抑制 - iNKT細胞とGLP-1、2つを介した経路がカギに - - PR TIMES|RBB TODAY

ヒオデオキシコール酸(HDCA)が脂肪肝を抑制 - iNKT細胞とGLP-1、2つを介した経路がカギに -

 千葉大学国際高等研究基幹の李恩瑛准教授、同大大学院医学研究院三木隆司教授らは、英国ケンブリッジ大学との国際共同研究チームにて、2次胆汁酸の一種であるヒオデオキシコール酸(HDCA)(注1)が、高脂肪食により誘導される脂肪肝を、iNKT細胞(注2)を介した免疫代謝経路と、GLP-1(注3)を介した内分泌経路という2つの独立した仕組みによって抑制することを明らかにしました。これら2つの経路はいずれも、脂肪酸酸化を担う核内受容体PPARα(注4)の働きに依存しており、HDCAが複数の標的を介して脂肪肝を改善しうる「マルチターゲット治療」の候補薬となりうることが示されました。本研究成果により、脂肪肝の新たな治療戦略が確立され、臨床応用に向けた研究に貢献すること期待されます。
 本研究成果は、2026年8月7日に国際科学誌 Cell Reports にて公開されました。
 (論文はこちら:10.1016/j.celrep.2026.117822)



■研究の背景 (詳細は別添参照)
 研究チームは、これまでに肥満に伴う脂肪組織の機能不全が肝臓への脂質流入を増大させ、高脂肪食による脂肪肝の発症・進展を誘導することを、脂肪組織を起点とした視点から示してきました。また、糖尿病モデルマウスの解析から、脂肪組織の脂肪分解の変化が肝臓の糖新生や胆汁酸代謝と密接に関連すること、正常の脂肪組織を移植すると肝臓の糖新生が抑制されるとともに胆汁酸の一種であるHDCAが有意に上昇することを見い出しました。しかし、HDCAの増加が肝臓の代謝変化に寄与しているかは、これまで明らかにされていませんでした。

■研究成果のポイント (詳細は別添参照)
1. HDCAはiNKT細胞/IFN-γ(注5)を介した免疫代謝経路でPPARα依存的に脂肪肝を抑制する
 高脂肪食(HFD)を負荷したマウスにHDCAを投与すると、肝臓内のiNKT細胞が増加してIFN-γの産生が促進され、これに伴い脂肪酸酸化に関わる遺伝子群の発現がPPARα依存的に上昇し、肝臓の中性脂肪蓄積が抑制されました。一方、iNKT細胞を欠損させたマウス(Ja18-/-)や、PPARαを欠損させたマウス(Ppara-/-)では、HDCAによる脂肪肝抑制効果は認められませんでした。
2. HDCAはGLP-1を介した内分泌経路でも、PPARα依存的に脂肪肝を抑制する
 HDCA投与は血中のGLP-1濃度も上昇させました。GLP-1受容体作動薬を投与すると、野生型マウスおよびJa18-/-ではHFDによる脂肪肝が抑制されましたが、Ppara-/-およびGLP-1受容体を欠損させたマウス(Glp1r-/-)では、この抑制効果は認められませんでした。さらに、Glp1r-/-ではHDCAそのものによる脂肪肝抑制効果も消失することが確認されました。


■今後の展望(研究者コメント)
 本研究により、HDCAは単一の分子や経路のみを標的とするのではなく、複数の経路に同時に働きかける「マルチターゲット治療」としての可能性が示されたことで、今後、脂肪肝や脂肪肝炎(MASH)に対する新たな治療戦略としての安全性・有効性のさらなる検証と、臨床応用に向けた研究の進展が期待されます。



■用語解説
注1)ヒオデオキシコール酸(HDCA):胆汁酸の一種で、特にブタの胆汁に多く含まれる2次胆汁酸。ヒトの腸内細菌も産生できることが報告され、脂質代謝や免疫機能への関与が近年注目されている。
注2)iNKT細胞:自然免疫と獲得免疫の両方の性質を併せ持つリンパ球の一種。特定の脂質抗原を認識して活性化し、IFN-γなどのサイトカインを速やかに産生することで周囲の細胞の機能を調節する。
注3)GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1):小腸から分泌されるインクレチンの一種。インスリン分泌を促進するほか、近年は肝臓の脂肪代謝を改善させる作用も報告されている。GLP-1受容体作動薬は糖尿病・肥満症治療薬として世界中の臨床で広く用いられている。
注4)PPARα(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α):肝臓に多く発現する核内受容体の一種で、脂肪酸の取り込みや酸化に関わる遺伝子群の発現を制御する転写因子。
注5)IFN-γ:主に活性化したT細胞、NK細胞、iNKT細胞が産生するサイトカインで、免疫応答の調節に加え、細胞の代謝機能にも影響を与えることが知られている。

■論文情報
タイトル:Hyodeoxycholic acid suppresses hepatic steatosis in a PPARα-dependent manner via distinct GLP-1- and iNKT cell-mediated pathways
著者:Eunyoung Lee, Ryo Hatano, Mariko Takami, Masanori Fujimoto, Hayato Yoshikawa, Yukihiro Endo, Ryo Koyama-Nasu, Atsushi Onodera, Jing Li, Sergio Rodriguez-Cuenca, Sonia Rodriguez-Fdez, Ioannis Kamzolas, Yu-Hung Lin, Guillaume Bidault, Tomoe Noda, Hitoshi Shimano, Motoko Y. Kimura, Shinichiro Motohashi, Tomoaki Tanaka, Antonio Vidal-Puig, Takashi Miki
雑誌名:Cell Reports
DOI:10.1016/j.celrep.2026.117822

■研究プロジェクトについて
本研究は、以下の支援を受けて遂行されました。
・日本学術振興会・科学研究費助成事業(科研費)(19K06757、20K08583、22H02800、25K02439)
・科学技術振興機構(JST)(JPMJPF2301)

添付資料はこちら
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