本研究成果は、2026年9月15日(現地時間)に学術誌Journal of Eating Disordersで公開されました。
論文はこちら:10.1186/s40337-026-01754-z

治療効果と相関していた治療後のrsFCの変化 (青線:結合性低下 赤線:結合性増加)

治療効果と相関していた治療前のrsFC特性(赤線:CBT実施前の結合性の強さ)
■研究の背景
神経性過食症は「過食」と「体重増加を防ぐための嘔吐や下剤乱用等」を繰り返す摂食症です。生涯有病率は特に女性で2%と高い疾患ですが、体型や体重への強いこだわりと、一方での制御困難な過食・代償行動に悩まされ、生活の質が大きく損なわれます。CBTが第一選択の治療ですが、症状が消失し、診断基準を満たさなくなるほど回復する患者さんの割合は30-50%に留まります。CBTの改良の為には、CBTの治療効果がどのような脳機能の変化によってもたらされているのか(治療メカニズム)、どんな症例で治療効果が特に得られやすいのか(治療反応予測)の解明が必要ですが、その基礎となるCBTの前後で縦断的に脳機能の変化を解析する研究は行われていませんでした。
■研究成果のポイント
神経性過食症に対するCBTの前後でfMRI(注2)を行い、CBTによる全脳142領域間の安静時機能的結合性(rsFC(注3))の変化を網羅的に調査し、どのrsFCの変化がCBTの効果(EDE-Q(注4)得点の改善度)と関係しているかを調べました。その結果、CBTの効果は4領域間のrsFCの変化(眼窩前頭皮質と縁上回間のrsFC低下、側頭紡錘状間と小脳半球~小脳虫部間のrsFC増加等)と相関していました。また治療前に中心前回~下側頭回や上頭頂小葉~下前頭回のrsFCが強いほど、CBTの効果が得られやすい傾向があることもわかりました。
■今後の展望(研究者コメント)
本研究によりCBTの治療効果は物事の報酬評価や衝動制御、視覚処理に関わる安静時脳機能の変化と関連していることが示唆されました。また治療前に身体の知覚や思考のコントロールに関わる脳機能ネットワークが強いほど治療効果が得られやすい可能性も示されました。この成果は、CBTが神経性過食症の患者さんの脳機能にどのような影響を与えているか、また治療の恩恵を得られやすくする準備として何が必要かなどを考える手掛かりとなり、CBTのプログラムを改良する上で有用な基礎的知見となることが期待されます。
■用語解説
注1) 全国6機関:当該施設は東北大学病院心療内科、国立精神・神経医療研究センター、東京大学医学部附属病院 心療内科、京都大学医学部附属病院精神科神経科、九州大学病院 心療内科および産業医科大学病院 脳神経内科・心療内科である。
注2) fMRI: 核磁気共鳴機能画像法。MRIを用いて、脳の神経活動を血流変化の信号から捉える方法。
注3)安静時機能的結合性(resting-state functional connectivity: rsFC):安静時の脳の領域間の機能的な結びつきの強さ。安静時の脳機能ネットワークの強さ/弱さの指標となる。fMRIで捉えられる脳の各領域における血中の酸素濃度変動がどの程度同調しているかを元に算出する。
注4) EDE-Q:摂食障害診断質問紙。摂食症の傾向や重症度を測定する自記式質問紙。食事制限および食事、体型、体重へのこだわりについて測定し、過食や嘔吐等の代償行動の頻度も回答させる。
■論文情報
タイトル:Resting-State Functional Connectivity Changes and Pretreatment Features Associated with Symptom Improvement after Cognitive Behavioral Therapy for Bulimia Nervosa
著者:Yusuke Sudo, Ritu Bhusal Chhatkuli, Tsunehiko Takamura, Rio Kamashita, Koji Matsumoto, Noriko Numata, Sayo Hamatani, Yoshiya Moriguchi, Keiko Ino, Tetsuya Ando, Chisato Ohara, Misako Funaba, Masanori Isobe, Tomomi Noda, Keima Tose, Toshiya Murai, Momo Sunada, Kana Morimoto, Momoka Taniguchi, Yasuhiro Sato, Yumi Hamamoto, Liu Yu, Jeyoon Choi, Kentaro Oba, Motoaki Sugiura, Shin Fukudo, Nobuhiro Nohara, Kazuhiro Yoshiuchi, Shu Takakura, Kazufumi Yoshihara, Motoharu Gondo, Naoki Kodama, Satoru Ide, Kazumasa Okada, EDNI Working Group, Yoshiyuki Hirano, Atsushi Sekiguchi.
雑誌名:Journal of Eating Disorders
DOI:10.1186/s40337-026-01754-z
■研究プロジェクトについて
本研究は、以下の支援によって実施されました。
・JSPS科学研究費助成事業(JP 24K06519, JP 23K22256)
・国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (JP19dm0307104, 事業名:戦略的国際脳科学研究推進プログラム、研究開発課題名:摂食障害に対する認知行動療法の有効性の神経科学的エビデンスの創出)
企業プレスリリース詳細へ
PRTIMESトップへ
