
経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、「The 2026 M&A Report」(以下、レポート)を発表しました。M&Aレポートの発表は今回で23回目です。
2026年のM&A市場、取引総額では回復傾向だが大型案件に集中
2026年1~8月期の世界のM&A市場は取引総額ベースで前年同期比15%増となり、過去10年間の同期間平均も11%上回りました(図表1)。ただし、この傾向は主に大型案件の増加によるものです。メガディール(取引価額100億ドル以上)の件数は37件と、前年同期の24件から増加し、2021年に記録した32件を上回り過去最多となりました。一方、取引価額10億ドル未満の案件数は依然として長期的な平均水準を下回っています。

足元のM&A市場の短期的な見通しを測るBCG独自の指標「M&Aセンチメント・インデックス」については、2026年1~8月期は83となり、年初の79から上昇したものの長期平均の100を下回りました。この指標は、市場のファンダメンタルズ(基礎的条件)を左右する要因と、企業の情報発信をAIで分析した結果を組み合わせて算出したものです。業界別に見ると、金融・不動産(108)が最も高く、ヘルスケア(100)、エネルギー(96)が続きました。一方、産業財(66)、消費財(64)、テクノロジー(52)は低い水準にとどまりました。
AIは、現在の市場に相反する影響を与えています。一部の領域では新たな投資やM&Aを促進する一方、AIによって既存のビジネスモデルや収益基盤、競争優位が今後も維持できるのか不透明になり、価値評価や取引の実行が難しくなっている領域もあります。2026年初めにソフトウェア企業のバリュエーションが急落したことや、プライベート・エクイティによるソフトウェア分野のM&Aが減速したことは、こうした動きを示す初期の兆候といえます。
日本のM&A市場の新たな注目テーマはグループ再編と上場企業に対する積極的な買収提案
グローバル市場の分析に加え、BCGは今回、日本のM&A市場に焦点を当てた論考も発表しました。日本ではM&Aの案件数が引き続き堅調に推移しており、2026年通年では案件数が2025年比で2.8%増加すると予測されます(図表2)。こうした市場の底堅さを支えている要因として、コーポレートガバナンスの継続的な強化、資本効率改善への要請、企業の健全なバランスシート、アクティビストの圧力、そして新たな成長の源を求める企業のニーズなどがあげられます。

2025年の日本のM&A市場を形成した3つのテーマ――1.事業開発、2.グローバル展開、3.業界再編――は、2026年も引き続き重要です。中核市場の成熟を背景とした新たな成長領域への進出、海外での成長機会の獲得、成熟産業における再編などを目的に、M&Aの活用が続いています。
さらに、2026年の新たな注目テーマとして、グループ再編と上場企業に対する積極的な買収提案があげられます。
- グループ再編: ガバナンスの強化、資本効率改善圧力の高まり、コングロマリットディスカウントへの対応、アクティビストへの対応などを背景に、単なる防衛策ではなく、積極的な企業価値向上の取り組みとしてのグループ再編が進められている。具体的には、グループ内の非中核事業の整理・売却、海外子会社や過去に買収した子会社のターンアラウンド、親子上場の解消という動きがみられる
- 上場企業に対する積極的な買収提案: 2023年8月に経済産業省が「企業買収における行動指針」を策定して以降、「同意なき買収」を含むより積極的なアプローチが戦略的な選択肢として広がりつつある。買い手企業には、自ら買収候補を見いだし、対象企業の成長にどう貢献できるかを示すことが求められる。一方、上場企業側にも、自社単独で企業価値を高め、独立を維持することの価値を示すことが求められている
レポートの共著者でBCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループの日本リーダー、横瀧 崇は次のようにコメントしています。「2026年に入り、グループ再編ではトヨタ自動車やトヨタ不動産などによる豊田自動織機へのTOB(株式公開買い付け)の成立、上場企業への買収提案ではデンソーによるロームへの買収提案に代表されるように、これらのトレンドに沿った企業の動きが見られています。
このような日本の活発なM&A市場の特徴は、その目的の広がりです。日本企業は、成長の追求、ポートフォリオの再構築、ガバナンスの強化、アクティビストへの対応に加え、企業のオーナーシップをめぐる競争が日本でも活発化するなか、そうした環境への備えとして、M&Aを活用しています。今後重要になるのは、M&Aを単なる個別の取引としてではなく、どの事業を成長させ、どの事業を立て直し、どの事業を売却し、次にどこに資本を投入するかを継続的に判断する、企業価値創造のための経営アジェンダとして捉えることです」
■ 調査レポート
「The 2026 M&A Report」
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■ 日本における担当者
横瀧 崇 マネージング・ディレクター & パートナー
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループの日本リーダー。
早稲田大学第一文学部卒業。ソフトバンク株式会社、グローバルコンサルティングファームを経て現在に至る。約20年にわたりM&A、アライアンス関連の支援に携わってきた。
樫宿 恵生 マネージング・ディレクター & パートナー
BCGコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。
慶應義塾大学法学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院・香港科技大学修了。グローバルコンサルティングファームを経て現在に至る。
■ ボストン コンサルティング グループ(BCG)について
BCGは、世界をリードする企業や組織と協働し、その高い志を確かな成果につないでいます。かつてないほど変化が激しい時代において、60年以上培ってきた専門知識に基づく明確な戦略と、実務に精通したプロフェッショナルによるAI活用の知見を組み合わせ、クライアントを支援します。BCGは、さまざまな業界・地域の経営トップとともに組織全体にわたるインパクトの実現に取り組み、より大きな価値の創出と組織能力の向上を支え、変革を後押しします。
日本においては、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しました。
https://www.bcg.com/ja-jp/
■ 本件に関するお問い合わせ
ボストン コンサルティング グループ マーケティング 谷口・中林・福井
Tel: 03-6387-7000 / Fax: 03-6387-0333 / Mail: press.relations@bcg.com
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