伊藤氏によると、消費者にネット家電の魅力を伝え切れていない現状では、ネット対応分のコストを製品に上乗せするのは難しい。しかし、製品がネットに対応しなければ、ネット家電の魅力を消費者に伝えることができない。この「負のスパイラル」が家電のネット対応を遅らせているという。
解決策が通信機能を分離した「ECHONETレディ」家電だ。ECHONETレディ家電は、単体では通信機能を持たないが、通信機能を持つ「ECHONETミドルウェアアダプタ」を追加することでECHONETに参加できる。ECHONETミドルウェアアダプタとの接続はシンプルなもので、少ないコストでネット家電へのアップグレードパスを追加できるという。
ECHONETレディ家電を増やし、消費者がネット家電の魅力に気づいたときに、すぐにネット家電に対応できるようにする土壌を作ることが目的だ。すでに「ECHONETミドルウェアアダプタ」は、ECHONET規格バージョン3.20で追加されている。
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会場で展示されていたECHONETミドルウェアアダプタ。バッファローの無線LANカードが使われている |
関西電力の清水雅年氏は、「お客様情報化ゲートウェイ」を用いて、インターネットとECHONETを活用した防犯システムを提案した。製品コストを抑えるため市販のセンサーを流用、センサーが異常を検知すると、室内の様子をWebカメラで撮影して指定したメールアドレスに画像付きメールを送信する。電力会社らしく電力線を中心に構築している。
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お客様情報化ゲートウェイは、ブロードバンドルータにECHONET対応機能、光メディアコンバータなどを内蔵したもの。ファンレスで動作する |
ECHONET対応製品の開発環境も整備が進んでいる。
東芝情報システムの深野裕幸氏は、Bluetoothを使ったECHONET家電を簡単に開発できるようにする「ECHONET(Bluetooth)ソフトウェア開発キット(SDK)」を紹介。Bluetooth処理と家電の製品制御を分離することで、開発のスピードをアップさせられるという。
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東芝情報システムのソフトウェア開発キット。会場で即売も行われていた |
最後に、安川情報システムの別府裕一郎氏が、センサーから家電コントローラまでに対応するミドルウェア群を発表した。8bit MPUでも対応できるものから、冷蔵庫など16〜32bit MPUをもつ家電向け、32bit MPUを使い切れないGUIを実現できるものなど、3種類のラインをもつ。
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安川情報システムは、センサー向けやコントローラ向けなどの各種ミドルウェアを展示 |
■ECHONET家電の夜明けは近い
ECHONETは技術面での熟成が進んでいるが、対応製品はまだ少ない。もちろん「ネット家電」のニーズを掘り起こしている時期でもあるが、家電ならではの事情も関係しているようだ。
家電ではみじんの失敗も許されず完璧な動作が求められる。技術的な完成度が高くても製品化を急がないのは、こうした家電ゆえの事情も絡んでいるという。ドラフト規格でもどんどん製品を発売し、機能アップはファームウェアの配布で済ませてしまうPCやPC周辺機器とは対照的だ。
今後、徐々にECHONETレディの白物家電が発売され、ネット家電普及への素地が整ってゆくだろう。ネット家電の夜明けは近い、そう感じさせるセミナーだった。