「医療ネットワークの実現に標準化と相互運用性は不可欠」 -インテル | RBB TODAY

「医療ネットワークの実現に標準化と相互運用性は不可欠」 -インテル

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 米国の「コンティニュア・ヘルス・アライアンス」(Continua Health Alliance)のメンバーであるインテルは13日、都内において、同社のヘルスケア事業戦略について発表した。
 米国の「コンティニュア・ヘルス・アライアンス」(Continua Health Alliance)のメンバーであるインテルは13日、都内において、同社のヘルスケア事業戦略について発表した。 全 7 枚
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 米国の「コンティニュア・ヘルス・アライアンス」(Continua Health Alliance)のメンバーであるインテルは13日、都内において、同社のヘルスケア事業戦略について発表した。

 コンティニュア・ヘルス・アライアンスは、ヘルスケア産業やIT産業の各社が、ネットワーク機器を使った個人健康管理の向上を目指して、2006年6月に米国で設立した非営利団体。インテルはこのアライアンスのメンバーとして、日本の医療業界に本格的な参入を図る構えだ。2006年には日本法人でデジタルヘルス事業部も創設されている。

 コンティニュア・ヘルス・アライアンスの発表に続いて、米インテルのマーク・ブラッド氏(グローバル・ヘルス・ストラテジー ディレクター&メディカルドクター)が全世界のヘルスケアITの最新状況について説明した。

 マーク・ブラッド氏は、「ヘルスケアではその品質が重要であり、ITを利用し、セキュリティや個人情報保護をしっかりしなければならない」と説いた。そのうえで、管理システムとPCやハンドヘルド機器などが、うまく結びつくことが必要だという。医療分野において、ITがビジネスプロセスにもたすメリットとしては、診察、管理業務、コンシューマサービス、収益管理が挙げられる。そして、これらを実現するものが、データセキュリティとコンプライアンス、RFID、モバイルコンピューティングなどのさまざまなテクノロジーとシステムを統合した「デジタルホスピタル」である。マーク・ブラッド氏は、RFIDとモバイルコンピューティングの導入効果の一例として、米アラバマ州のセントビンセント病院の例を紹介し、「これらのテクノロジーを導入すれば、約150%の投資対効果を発揮できるだろう」との見込みを示した。

 ここで特に誤解を受けやすいのが無線ネットワークに関してのイメージだという。医療機関に無線ネットワークを導入すると、医療機器に対して無線干渉が起こるというものだ。「過去4年間にFDAに対して干渉の報告はない。むしろ逆にX線などの医療機器が無線ネットワークに影響を及ぼすことがあるぐらいだ」とし、米国においては、医療機関に無線ネットワークを導入することは問題がないと強調した。

 マーク・ブラッド氏は、デジタルヘルス分野における今後の展望として、「全国規模のネットワーク、ヘルスケアIT、パーソナルヘルス、高齢者や慢性病患者のケアといった分野で標準規格と政策の連携を推進していき、IT業界一丸となって、医療体制に変革をもたらすようなビジネスチャンスを提供したい」と述べた。

 マーク・ブラッド氏の説明のあとに、デジタルホスピタルに向けたソリューションのひとつとして、「Mobile Point of care」(MPOC)というプロトタイプシステムについてのデモも実施された。このシステムは、測定した血圧などのデータをその場でサーバに転送し、医療向けの専用タブレットPCなどで、医療情報を簡単に共有・閲覧できるものだ。こういったシステムが、もうしばらくすれば実際の医療現場にも登場するようになるだろう。

 次に、日本での医療機器の課題と活動について、インテルの吉田和正氏(代表取締役共同社長)が説明を行った。現在、国内では高齢化、医療コストの増大、生活習慣病が増加している。このような現状に対して、医療の質を保ちつつ、医療提供を効率化できるような連携が求められている。たとえば、医療現場では、必要なときに必要な情報にアクセスできる環境や、情報の共有が重要になってきた。特に情報共有においては、医師間の信頼関係や、電子カルテの連携、連携業務の標準化が必要だ。吉田氏は「いままでインテルは無線技術などで標準化を推進してきたが、このように進化している技術をいかに医療に結び付けていくかが、今後の大きなポイントになる」と述べた。

 前述のように、2006年にデジタルヘルス事業部を設立した同社は、医療用プラットフォームの開発と検証や、医療分野のネットワーク化の推進に取り組んできた。その実例として、吉田氏は2つのケースを取り上げて、ゲストを紹介した。まず、千葉県の亀田総合病院で先進的な医療ITネットワークに取り組む亀田伸介医長が登壇。同病院のITシステムについて紹介した。同院は、医療現場でのIT化を早くから推進し、「患者力で選ぶいい病院」という書籍(扶桑社刊)の総合ランキングで1位を獲得している。患者中心の医療システムとして、同病院のシステムは電子カルテを患者自身がベットから見られるようにしたり、病院と診療所を「プラネット」と呼ばれる医療情報ネットワークで相互に接続し、情報の共有を図っている。亀田医長は「医療分野でのIT活用として、プロセスの標準化とデータの2次利用が挙げられる。情報の共有化によって、患者・医療提供者ともにメリットが得られる。デメリットはまったくない。このようなIT活用は、いわば生活における火のように欠かせない便利なもの。早く他の医療機関も導入したほうがよい」と太鼓判を押した。

 また、吉田氏は同社のパートナーとして、ヴァイタスの曽根伸二氏(代表取締役)も紹介。ヴァイタスは、アメニティを向上できるベッドサイド端末やソリューションを提供し、医療機関のデジタル化を促進している企業だ。今回、インテルは同社の「vProテクノロジー」が持つバーチャライゼーションテクノロジー機能と、ICカードを組み合わせた新しい認証方式を提供。カードリーダにICカードをかざすだけでスムーズにアプリケーションを切り替えられる仕組みだ。これにより、医療スタッフが使用する電子カルテのアプリケーションと、入院患者が利用できるアプリケーションを、それぞれのICカードで管理できる。

 吉田氏は、最後のまとめとして、「医療ネットワークの実現に対して標準化と相互運用性は不可欠であること」「今後も医療現場の多様なニーズに応えるために標準かつオープンなプラットフォームを提案していくこと」さらに、「現在の日本が抱えている医療問題を解決できるソリューションや情報共有を促進するネットワークを提供していく」という3つの方針を挙げ、医療分野に懸けるインテルの意気込みを示した。

《井上猛雄》

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