【ワイヤレスジャパン2007 Vol.10】ドコモの4Gに向けた発展構想と取り組み——Super3G、フェムトセル、IMT-Advanced
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講演では、FOMAにおけるHSDPA、およびSuper3G(LTE)状況が解説され、また最後に、4G(IMT-Advanced)に対するドコモの取り組みについても簡単に紹介された。
まず、ドコモの2G(mova)から3G(FOMA)への移行状況がグラフで示され、2006年6月には全携帯電話契約におけるFOMAの契約数比率が50%を突破、今年の3月には67.5%(3,55万契約)まで増加した。またHSDPAの基地局対応については、2002年までに導入された局では一部ハードウェア交換が必要だが、2005年以降の既設局ではソフトウェアのアップデートのみで対応可能になっており、昨年からの商用開始もスムーズに進んだようだ。世界に目を向けても、W-CDMAオペレータ数は2004年あたりから増え始めており、さらにHSDPAは昨年から急速に増え、HSDPAがW-CDMAにおいて当たり前の技術になりつつあることが強調された。
尾上氏は、ワイヤレスジャパン2004の講演において、RANのIP化構想を示す図中で「IP-RNC」と「屋内IP-BTS」の導入意向を説明した際、RANのIP化の最終形態として、家庭をカバーする「ピコIP-BTS」も図中に示していた。この「屋内IP-BTS」と「ピコIP-BTS」は、最近一般によく言われるようになった「ピコBTS」「フェムトセル」にそれぞれ相当、そのためドコモでも呼称を変更することになったようだ。IP-RNCとピコBTSの導入は2006年から始まっており、IP-RANによるサービスとしてもすでに「OFFICEED」が今年2月から商用開始されている。
また今月10日にはフェムトセル用超小型基地局装置の開発を発表、尾上氏が「20数年この仕事に携わっているが、まさか基地局を片手で持ち上げられるようになるとは思わなかった」と言うように、省スペース(135×184×40mm、約0.6kg)、省電力(消費電力12ワット以下)を実現している。
フェムトセル実験については、ソフトバンクが“ユーザー自身が設置できない”といった法制度の課題を指摘しているが、ドコモとしては法制度の範囲内で可能な提供を目指したい考えで、IP専用線を使う方法と汎用BB回線(VPN)を使う方法の両方を視野に入れ、今年秋の運用開始を予定している。
HSPAの次にくる「Super3G」(3GPPのLTE)は、4Gの時代になっても3Gオペレータが競争力を維持し続けられると同時に、4Gのスムーズな導入パスを提供できることが、その基本コンセプトにある。3GPPでは下り最大100Mbps以上を要件としているが、ドコモでは2X2 MIMOで170Mbps、さらに4X4 MIMOで320Mbpsも可能と考えており、80〜300Mbpsを見込んでいる。特に、将来的に移動機側が2アンテナになる可能性は高く、170Mbpsの実現性は高い。ドコモではSuper3G導入時点で4Gをプラグインできるようにしてあったため、エアインタフェースの変更のみで4Gを追加できるという。
HSPAやHSPA+は、少しの変更で性能向上を実現でき、比較的早期に展開できる技術として登場したが、実際にはリリース7仕様に盛り込まれる主要なHSPA+技術(MIMO、多値変調)は設備変更が伴う。同じ設備変更であれば、長きに渡って使用可能な技術とされているSuper3Gの導入を優先したほうがいいという考え方もできる。Super3Gには多くの企業が提案を行ったため議論の収集に時間を要したが、2006年6月までに基本的なシステムコンセプトの作成をほぼ終了、リリースは今年9月を予定している。ドコモではSuper3Gの実証実験は今月開始、低接続遅延・低制御遅延の検証なども行い、2009年の開発完了を目指している。
最後に「4G」に関しては、ドコモは3Gサービス開始前から取り組んでおり、IMT-Advancedとして目標される1Gbpsのフィールド実験はすでに2005年5月に成功、さらに2006年12月には下り最大約5Gbpsに成功している。来年はIMT-Advancedの標準化が活発化する重要な時期として位置づけられており、尾上氏は最後に、「仕様作成にはスムーズな進捗が求められる」とし、IMT-2000のケースを取り上げた。そしてIMT-2000はSDOそれぞれの提案を3GPP、3GPP2が世界共通の技術仕様にまとめあげたことの役割が大きいと評価、「4Gの仕様作成においてはすでに3GPPが存在するのだから、そこで何らかの議論を早い段階でしていくことは重要なこと」と語った。
《柏木由美子》
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