開放か、さもなくば分割——NTTのNGNについてイー・アクセス千本、ソフトバンク孫両氏がアピール | RBB TODAY

開放か、さもなくば分割——NTTのNGNについてイー・アクセス千本、ソフトバンク孫両氏がアピール

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総務省ビルにて会見に応じる両氏
総務省ビルにて会見に応じる両氏 全 3 枚
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 16日、総務省 情報通信審議会 電気通信事業部会 接続委員会の合同ヒアリング(第9回)が開催された。

 第9回となるこのヒアリングは、「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方」という議題で、主にNTTの進めるNGN事業の回線インフラとなる光ファイバー網を他事業者とどのような形で使っていくか、またその接続料金はどのような体系がよいのか、といった点について、審議会の委員が各通信事業者の意見を聞き、議論するために開催された。

 内容は、NTTのNGNを第一種指定電気通信設備にすべきかどうかについてと、光ファイバーを他事業者に卸売りする場合に8回線セットではなくADSLのように1本ごとに使えるようにすべきだという2点についての議論が交わされた。

 NTT東西は、光ファイバー網は民営化以降独自に敷設したもので、NGNは第一種に指定すべきでないという立場だ。NGNが第一種に指定されると、既存の電話事業のように事業形態や回線の独占が法的に制限されるので、民間企業としてのNTTは、国営からのPSTN事業はやむをえないがNGNについてはそのような規制は経営的にも避けたい考えだ。これに対して、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセスなどNTT以外の通信事業者は、物理的に寡占状態の光ファイバー網と個人宅へのアクセス設備を持っている以上、それは認められないという立場だ。光ファイバーそのものは民営化以降のものかもしれないが、それをネットワークとして成立させている電柱、電話線、トンネル、その他の設備は国営時代の税金で整備されている。その理屈な成り立たないということだ。

 ちなみに、NTTと同様に自社でボトルネック設備(電線など)を持つ電力系の通信事業者であるケイ・オプティコムも、NGNは第一種指定電気通信設備にすべきだとの立場をとっている。

 ヒアリング終了後、イー・アクセスの代表取締役会長 千本倖生氏とソフトバンクの代表取締役社長 孫正義氏が会場脇で各社の取材に応じてくれた。

 ソフトバンクの孫氏は、ネットワークインフラを道路にたとえて「じゃり道(銅線)とはいえ国策や税金で取得したものの上に、民営化後に舗装(光ファイバー)しただけですべて自社資産とするのはフェアではない。」と述べている。また、イー・アクセスの千本氏は、「ADSLのときには行政の努力もありNTTに回線を開放させ、局舎や電柱を使えるようにしたため、世界的にも安くて速いブロードバンド環境を提供できた。NGNでも同じようにしなければならない。」との意見だ。

 両氏は、NTTグループの企業構造についても触れ、そもそもNTT再分割の議論は政治決着によりボトルネック設備を開放する代わりに2010年に先送りされた経緯があるので、今回NGNでボトルネックも開放しないということであれば、ネットワーク部分とボトルネック部分をさらに分割するという議論に立ち返るべきだとの認識も示した。

 そして、NTTが光回線の契約数を3,000万から2,000万に下方修正した件についても、NTTの回線が開放され公正なサービス競争ができれば、結果的に3,000万契約にも4,000万契約にもつながるだろうとも述べた。

 また、WiMAX免許について一部の企業に内定したかのような報道がなされた点について、孫氏は、「ボクシングでいえばリングに上がる前に判定がでているようなもので、あってはならない。総務省でもそんなことはないと明確に否定している。」とした。千本氏は、「免許付与の審議は非公開だが、われわれオープンワイヤレスネットワークは、提出した事業プランなどを積極的に公開していきたい。各社ともに国民にもオープンに情報を開示して、決定プロセスも明確にすべきである。」との考えを示した。

 NTTは、通信事業者、ISP、サービス事業者向けにそれぞれのレベルでNGNのインターフェイスなど接続仕様は積極的に公開しているが、肝心のボトルネック設備やネットワークそのものを独占したままでは、長期的にはユーザーにとっても魅力的なインフラとはいえない。緊急通報などの問題が一部残るが、通話やコミュニケーションだけならIP電話やスカイプのような代替手段はすでにある。通信事業全体の市場や国民であるユーザーを無視したNGNなら、普及は見込めないだろう。

《中尾真二》

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