【ニュース解説】総務省、NGN活用業務を条件つきで認可——KDDI、ソフトバンクら反発 | RBB TODAY

【ニュース解説】総務省、NGN活用業務を条件つきで認可——KDDI、ソフトバンクら反発

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 25日、総務省はNTT東西より出されていたNGNサービス提供に必要な県間役務提供と料金設定に関する申請に対して、条件付きで活用業務を認可すると発表した。

 これは、NTTが進めるNGNサービスにおいて、NTT法で制限されている都道府県などを越える接続(活用業務)が必要であるとの申請を審議していたものだ。現状のサービスにおいては、県間通信はNTTコミュニケーションズなど分割された会社が行うことになっている。IP網をベースとしたNGNサービスでは、ユーザーの利便性などを考慮して、NTT東西が都道府県などをまたがる接続を可能にするかが議論されていた。

 この申請がなされたときは、NTT以外の通信事業者は、公正な競争を阻害する、あるいはNTT独占を認める時代に逆行した申請として認可するべきでないと反発していたが、今回、8つの条件を付して認可することになった。総務省としては、NGNの問題については、活用業務の認可とその接続ルールという2つハードルがあるとして、このうちNTT東西のNGNという活用業務を認可するかどうかという点のみの結論であるということと、接続ルールは別途審議中であり、オープン性や競争の公正さを担保できる条件を付与するので、問題はない。NTT法や競争原理にそぐわない点は接続ルールに対して意見を出したり、議論をしてほしいという方針だ。

 これに対して、KDDIは「接続ルールが審議中であるにもかかわらず認可する結論が先にでることに違和感がある。また、条件が付されているが、その条件、総務省の考え方についての発表資料について現在詳細を検討中である。」とのコメントだ。ソフトバンクは、「接続ルールの結論が出ていない段階で、活用業務というやり方によりこのようなサービス提供を開始することは、今後の競争に大きな影響を及ぼすものであって、認可されるべきではない。条件付きについては評価するが内容が十分ではなく、このような活用業務運用は、NTT法の精神を形骸化するもので、NTTグループの抜本的な見直しが必要である。」と述べている。

 総務省の方針の背景には、一連のパブリックコメントでも企業ユーザーなどから、NGNサービスがキャリアやプロバイダ、長距離接続などによって料金体系やサービス契約などが複雑化、高コスト化する懸念やIP化やNGNサービスそのものへの期待が寄せられていることもある。しかし、接続ルールなどの重要な各論が合意をみない状態で、認可だけ先行するという今回の結果に危機感を持つ企業は多い。NTTが、規制も多く、分割によってビジネス規模も分断された現状の公衆電話回線を、IP化、NGNというオブラートにくるんでネットワークインフラをコントロールするようになるのではないか、という類の懸念だ。

 では、そうならないように活用業務に付与された条件とはどのようなものだろうか。8つの条件のポイントを整理すると以下のようになる。

・審議中の接続ルールに従い、オープン性を確保すること
・県間接続の料金を公表すること
・NTT東西のそれぞれのエリア内での県間接続を認めるだけで、NTT東西の直接接続はできない(従来どおり)
・加入電話の情報など他事業者が利用できない情報で営業活動を行わない
・コンテンツ配信での公平性、オープン性を確保すること
・コンテンツ配信の技術インターフェースの共通化
・IP電話での番号ポータビリティの確保
・NTT東西の接続やNGNの新しいサービスを提供する場合は改めて認可申請を行うこと

 ここで、問題になりそうなのは、接続ルールとともに議論されているIP電話などNGN設備を(一定の社会的責任を負う)第一種指定通信事業設備にするかどうかという点ではないかと考えられる。この条件ではそれに近い料金などの公表は明記されているが、報告義務、設備の解放などが完全に担保されたとはいいにくい。もちろん、今回の報道資料の中で審査基準として、NTTが第一種指定を受けているので過度な独占は防げているという認識が述べられており、情報通信審議会や総務省もその重要性は理解しているものと思われる。そうであるなら、第一種指定や料金体系などが「接続ルール」での議題だとしても、なおさらこの部分を明確にせず認可だけ先行させる必要があったのだろうかという疑問もぬぐえない。

 IP化やNGNの流れの必然や重要性は高いものの、健全な市場やユーザー不在のインフラにしてまで整備する必要性はないはずだ。

《中尾真二》

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