【詳報】NTTドコモ 新ブランドロゴ&スローガン&ステートメント——製品ありきから顧客ありきへ
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ドコモでは昨年8月からコーポレートブランディング本部を設置し、中村維夫社長が自ら指揮を執ってドコモの未来図を検討してきた。特別顧問として、日本コカ・コーラ代表取締役会長の魚谷雅彦氏を迎えたことも話題となった。今回の新ロゴ制定がその集大成だ。発表会には本部長を務めた中村社長をはじめ、副本部長の荒木裕二氏、魚谷雅彦氏が登壇し、3人とも「単なるロゴ変更ではなく、ドコモ自身の意識改革の象徴」という共通認識であると語った。
新ブランドロゴ発表に先立ち、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ代表取締役社長の中村維夫氏は新ドコモ宣言を発表した。中村氏は携帯電話市場がこれまでの拡大成長モデルから新しいビジネスモデルにシフトしているという現状を踏まえ、新規顧客獲得重視から既存顧客を重視したロイヤリティ構築への転換、キャリア主導のプッシュ型モデルからユーザーの個々の使い方を引き出すプル型への転換、新技術や新機能主導の製品開発からサービスやパフォーマンス主導の商品開発への転換の必要性を強調した。
これを受けた4つの新ドコモ宣言は、顧客との関係を見つめ直すという方針と、そのために社内を改革する方針を示している。顧客との関係を密にするブランドロイヤリティを高める方策を取ることで、従来の直接的な新規獲得施策や解約防止施策ではなく、顧客との関係を長く、深くしていくためのサービスを開発する。具体的には長期契約者優遇メニューの「ドコモプレミアクラブ」を拡充し、従来は同一の機種を2年間以上継続した場合の電池パックサービスを1年間に短縮(10月以降開始予定)、ケータイクレジットの買い物代金にドコモポイントを利用できる特典を用意(10月以降開始予定)、携帯電話紛失時のセーフティ機能「おまかせロック」「ケータイお探しサービス」の無料化(10月以降開始予定)、「修理品宅配返却サービス」(7月以降開始予定)を挙げた。また、既存顧客に対する将来の約束として、「みんなのドコモ研究室」をドコモサイト内に開設し、近未来に実装される予定のサービスを紹介する。ドコモの先端技術をユーザーにプレゼンテーションし、意見や提案を募ることで今後のサービス開発に役立てていく。
また、社会貢献サービスとして実施している障害者向けの割引サービス「ハーティ割引」を6月1日から拡充し、基本料、付加機能使用料を従来の50%割引から60%割引に、テレビ電話通話料を音声割引と同額にする。ハーティ割引では新たに104の番号案内も無料になる。
新ロゴ発表後にコーポレートブランディング本部の副本部長を務めた荒木裕二氏が登壇し、新ドコモ宣言の各内容について紹介した。顧客との関係を深めていくためにドコモブランドを再定義し、プレミアクラブを強化、CSR(企業の社会的責任)活動の推進を挙げ、顧客との対話面について窓口の対応強化、顧客が求める端末の開発、端末の使いやすさの研究、サービスの見直し、パーソナライズドサービスの提供、エリアの改善、きめの細かい料金対応を挙げた。また、イノベーションに対する取り組みについて、ビジネスと技術面の改革推進、地球環境保全への取り組み、世界での利便性向上を挙げ、社内組織改革については人材の活性化、組織体制の見直し、社内、対顧客などあらゆるレベルでのコミュニケーションの充実を図り、活き活きとチャレンジし続ける集団を目指すと宣言した。
最後に特別顧問の魚谷雅彦氏が登壇し、外部から見たドコモの問題点と可能性、コーポレートブランディング本部の活動について語った。魚谷氏はドコモが「急成長する市場に対応するため、会社自体が大きくなり、急激な市場の変化に対応しにくくなっていた」と指摘。「既存ユーザーがケータイを買い換えるときに3万円で、新規契約の人は1円。そんなことはビジネスの常識では考えられない」と新規顧客中心主義に疑問を呈したことを明かした。また、顧客の要望ではなく、キャリア主導で成長してきた過程や、お客様の声を受ける部門が分散し、せっかくの貴重なメッセージが活かされていないと危惧した。
肥大した組織は非効率であり、統合的なマーケティング手法が無く、成功体験にのみ基づく企業風土が挫折に弱いと指摘した。日本コカコーラのリストラを成功させた人物ならではの意見だが、こうした問題点を挙げる一方で、「ドコモには5300万人の顧客があり、請求書も見方を変えればコミュニケーションツールとなり、Webや販売店などの様々なチャンネルを持つ」と会社の基礎体力を高く評価した。そこでコーポレートブランディング本部は「ONE docomo」を合い言葉に全国を行脚して社員と意見を交わし、社内意識調査や改革提案の募集を行った。役員も合宿して意識改革に取り組んだという。
魚谷氏はケータイ市場の飽和状態がドリンク業界の自販機設置競争に似ていると語った。自販機は量産効果で機材の価格は半分になった。しかし設置場所は260万台の設置を迎えて以降飽和していく。そこで次に取り組んだ施策は自販機一台あたりの売上を伸ばす方法だったという。自販機を携帯電話に例えれば、一台の携帯電話をいかに長時間、長期間使って頂くかを追求する時期に来ているというわけだ。
発表会の質疑応答において中村社長は「ドコモ2.0という広告シリーズは5月で終わる」と明かし、6月からは新生ドコモの新しいプロモーションが始まることを示唆した。ドコモのCMについては「そろそろ反撃してもいいですか」のコピーで他社に出遅れたことを自ら認めてしまい「そろそろ反省したらどうですか」とユーザーから揶揄されたこともあった。今回のドコモの新ブランドロゴ発表には率直な反省と顧客視点に立ち返るという真摯な姿勢が見えた。しかし、宣言の内容はどんなサービス業にも通じる言葉で、ドコモならではの切り口がもう少し欲しかったところだ。新ドコモ宣言がどのような行動となって現れるのか。既存顧客だけではなく、他社の顧客も注目していることだろう。
《杉山淳一》
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