【「エンジニア生活」・技術人 Vol.10】ウェブサービスの終わることのない開発——So-net・開哲一氏
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ソネットエンタテインメント ポータルサービス事業部門サービス開発部 開発チームの開哲一(ひらき のりかず)氏が手がけたクチコミ地図サービス「So-net buzzmap」も「β版」を標榜し続けている。So-netといえば、かつてはインターネット接続プロバイダとしてのイメージが強かったが、現在では同時にさまざまなウェブサービスを展開するサービスプロバイダ、コンテンツプロバイダとしても知られるようになっている。
2007年1月にα版がリリースされた「So-net buzzmap」は、ソーシャルマッピングサービス(SMS)とも呼ばれる地図サービスだ。Google Maps APIを利用して作られており、ユーザーがお気に入りのスポットを自由に登録して公開したり、ほかのユーザーと共有したりできるようになっている。α版リリースから、1年半。携帯からの投稿やブログ、SNSへの貼り付けにも対応し、すでに正式版といってもおかしくない状態にあるが、現在も正式には「β版」のままだ。「So-net buzzmap開発チームブログ」も更新が続いており、開発は終わっていない。
「βといってもいろいろな意味があると思うんです。もちろん『未完成品です』という意味もありますが、『ここがゴールではありませんよ』という意味の場合もある。『機能やサービスを追加しながら、今後もどんどん変わっていきますよ』という意思表示でもあると思うんです」、開氏はそう語る。
終わらない開発を続けるウェブサービスのエンジニアとはどんな仕事なのだろうか。
■ユーザーの近くで作る
何度か転職を経験している開氏だが、それまでの仕事は企業の研究所での3DCGなどの研究といった内容が多かったという。自宅で趣味的にサーバを構築したり、職場でネットワークの管理をしたりといった素地はあったものの、仕事としてのウェブサービス開発には、同社に転職してから初めて関わった。「So-net buzzmap」の開発も、サーバの構築などを含めて1から勉強しながら進めていったという。今から2年前、33歳の時だ。開氏に未経験の分野への転職を決意させたのは「ユーザーの近くで仕事をしたい」という思いだった。
「製品などの開発の場合、作って発売するのがゴールですが、ウェブサービスというのはどちらかというと、出してからが勝負なんです。重要な部分だけを作ってしまって、なるべく早く世の中に出す。そして、ユーザーの使い方や要望を聞きながら、サービスを育てていくというのがウェブサービスのスタイルなんですね」。リリースしたサービスに対してユーザーからの声が集まる。それをくみ取って修正や機能追加をしていく。ウェブエンジニアの仕事はユーザーとのコミュニケーションの中で進んでいくものだ。
ユーザーからの反応も非常に早いという。何か新しい機能やサービスを出すと、良くも悪くもすぐにブログなどに反応が返ってくる。「打てば響くという感じなんですね。ユーザーから要望があった機能を追加したり、指摘された不具合の修正をすると、『対応ありがとうございます』とコメントがついたりする。そういうユーザーの反応に触れられるときが、ウェブエンジニアになって一番うれしい瞬間です」。
■相手の動きが見えないAPI
ユーザーの声に即座に反応していかなくてはならないウェブサービスは、開発やサービス追加までのスパンも短い。ちょっとしたサービスなら、2か月程度で開発してリリースすることも珍しくないという。Google Maps APIを利用している「So-net buzzmap」も、技術的な面ではそれほど難易度は高くなく、むしろ苦労したのは企画をまとめていくことだった。サービス自体の内容はもちろん、ユーザーの問合せ体制や利用規約をどうするかなど、全体像をデザインしていくことにもっとも時間がかかったという。「So-net buzzmap」では開氏もただプログラムを書くだけではなく、企画面でも提案しながら進めていった。「提案するのも作るのも自分なんです。つい『明日までにやります』なんて言ったはいいけれど、いざやってみると思ったより難しかったりなんてこともよくあります(笑)」。
また、APIを利用することで恩恵を受ける面も多いが、難しい面もあったという。「機能やコンテンツを自分で作ろうと思うと大変な労力がかかる。APIを利用することで、それを簡単に使うことができるのは非常にすばらしいのですが、作っているのが他社ですので、『これをやりたいけど、このAPIではできない』という部分も出てきます」。
独自の企画であればサービスに合わせて好きな機能やコンテンツを作っていける。しかし、APIを利用する場合はそうはいかない。必要な機能が足りない場合は、新たなバージョンがリリースされるのを待つか、自分でハックするしかない。また、共同開発と違い、APIの場合は開発歩調も見えない。実際に「So-net buzzmap」でも、ジオコーダー(住所を検索するAPI)で日本語検索ができなくなっていた時期があった。「仕方ないので自分たちで作ることにして作業を進めていたんです。でも、そうしたら作っているうちに日本語検索ができるようになっていて(笑)」。
仕様変更もある。開発に使用した「Ruby on Rails」はオープンソースのフレームワークだったのだが、仕様が変わることも多かった。その影響で、動いていたプログラムが新しいバージョンでは動かないなんてこともあったという。お互いに話し合いながら進める、製品における技術協力体制とは違って、それぞれが独自に開発を進めるオープンならではの苦労といえるだろう。
■生涯エンジニアという目標
エンジニア、プログラマを続けることは大変だといわれる。「“ウェブエンジニア35歳定年説”なんていうのもありますからね」と今年ちょうど35歳の開氏は笑い、「でも」と続ける。「私はずっとエンジニアでいたいと思っています。自分でプログラムを書いたりすることで、技術に触っていたいんです」。
それはプログラマ的に開発だけをしていきたいという意味ではない。「企画と開発を明確に分けてサービスを作るという考え方もあると思います。ですが、私自身は企画に近い位置で、一緒に企画していくようなエンジニアでありたいんです。そのために、ユーザー視点はもちろん、ビジネスの視点も必要だと思っています。そういう視点をバランスよく持ったエンジニアになりたいですね」。
ウェブサービスはトレンドも技術もめまぐるしく変化する。その変化をキャッチアップしていくためには、エンジニアとしても企画者としても変化していかなくてはならない。「生涯エンジニア」。それはウェブサービスと同じように、ユーザーやさまざまな人の声を受けながら、開氏自身も常に変わり続けていこうという宣言のようにも聞こえた。その意味で、エンジニアとしての開氏もまた「永遠のβ版」なのかもしれない。
《小林聖》
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