日本HP、ノート型シンクライアントの新モデルで、新たな中堅・中小企業向けソリューションを提案

　日本ヒューレット・パッカード（日本HP）は23日、12.1型ワイド液晶搭載のモバイルノート型シンクライアント「HP Compaq 2533t Mobile Thin Client」を発表した。

　シンクライアントとは、ネットワーク上のサーバーにアクセスしてアプリケーションやデータを実行し、できる限り保存領域にデータを蓄積しないPCのこと。運用コスト削減とともに、PCの紛失や盗難などによる個人情報の漏洩対策を必要とするビジネスの場でおもに使われる。

　同社は、サーバーベース方式や仮想PC方式などの大企業向けとしてだけでなく、中堅・中小企業向けのシンプルなシンクライアントソリューションを新たに提案。同社パーソナルシステムズ事業統括モバイル＆コンシューマビジネス本部プロダクトマネージャの菊地友仁氏は「このシンクライアントで社内にある自分のデスクトップPCへインターネット回線で接続し、画面だけを転送してリモートで操作するという使い方を考えている」と説明。これにより、リモート端末の電源を切ればデータはいっさい残らずセキュリティ性が向上。サーバーを必要としないのでコスト削減にもつながる。今月発売した8.9型液晶搭載のミニノートPC「HP 2133 Mini-Note PC」で個人向けPCのシェア拡大を図っている同社が、企業向けPCのシェア拡大として打ち出した製品になる。

　同製品は、12.1型ワイド液晶を搭載するシンクライアント専用に設計されたモバイルノートPC。従来のシンクライアントでは、既存PCのHDDをフラッシュメモリに差し替え、専用のOSを搭載することが多かったが、マザーボードやチップセットから新たに設計。HDDを搭載するスペースを持たない製品になっている。

　堅牢性として、天板にアルマイト加工したアルミニウムとマグネシウム合金の合板を採用。航空機で採用される工法を採用し、800kgf以上の圧力試験をクリアしている。また、HDDやファンなどの回転部品は搭載しないので、故障が少なく静音性に優れる。

　企業の社内LANへ通信キャリアの持つバックボーンネットワークを通じて接続するVPMの主要な機器やクライアントソフトウェアに対応。同社執行役員パーソナルシステムズ事業統括マーケティング統括本部長の松本光吉氏によれば、「1ヵ月前にやろうと思えばできた今回の発表を、1ヵ月遅らせてこの接続検証を行った」と述べ、セキュリティ性能とどの会社でも接続できるコネクティビリティ性能の高さを強調した。

　また、通信機能として、イー・モバイル社の高速モバイル通信をセットにしたモデルを用意。イー・モバイルを選んだ理由に松本氏は、「7.2Mbpsの高速データ通信を一番安く定額料金で提供してくれる点にある」とした。イー・モバイル執行役員副社長の阿部基成氏は「ネットワークを利用した企業のリモートアクセスや、インターネットを使ったソフトウェアサービスのSaaSなどが今後ビジネスとして広がってくる。これによるシンクライアントの発展とともに、我が社のサービスも広く展開していきたい」と期待を寄せた。

　価格は、スタンダードモデルが125,790円、データ通信カード「D02NE（Cardbusタイプ）」か「D02HW（USBタイプ）」を選べるイー・モバイルセットモデル（2年間契約）が104,790円。6月26日に発売する。

　なお、HP 2133 Mini-Note PCを今回シンクライアントとして利用しなかった点について、松本氏は「今回のターゲットは100％ビジネス向け。HP 2133のディスプレイでは小さすぎてビジネス作業には向かない。やはり12.1型以上は必要だ」とし、今回の製品開発の必然性を述べた。

　スペックの詳細は以下のとおり。

●HP Compaq 2533t Mobile Thin Client
CPU：VIA C7-M（1GHz）
メモリ：1GB
フラッシュメモリ：1GB
ディスプレイ：12.1型ワイド液晶
最大解像度：1,280×800ピクセル（WXGA）
OS：Windows XP Embedded
インターフェース：USB2.0×3 /ミニD-Sub15ピン/SDメモリカードスロット/CardBusスロットなど
バッテリ充電時間：約2.5時間
連続駆動時間：約3.3時間
無線LAN：IEEE802.11a/b/g
本体サイズ：幅282×高さ28.7×奥行き214mm
重さ：1.36kg