【ATTT09】MSにとって車内は非常に戦略的な場所——Baribault氏基調講演
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まずバリボールト氏は「マイクロソフトにとって車内は非常に戦略的な場所」と強調。たとえば、自宅で見ていたTV番組の続きを子どもが後部座席で楽しむ、車で通勤中に天気や交通情報を入手する、携帯音楽プレイヤーに入っている曲をドライブ中に聴くなど、車内はある場所の経験を別の場所へシームレスに移していく場所であり、車載機器はそのための各デバイスを統合する役割を持つというのだ。そしてこれまでは、マイクロソフトはPCが中心であり、「様々な端末をPCにつなぐ世界」であったが、これからは、クラウドが中心となってデバイス間の継続性を提供し、PCはクラウドにつながるデバイスの1つと捉えられる。
「Software + Service」のビジョンに基づく車載ソリューションのプランニングをする立場にある同氏は、同氏が考えるクラウドベースサービスのビジョンとして、Windows Liveに一度ログインすればWindows Liveが継続性を提供され、以降はどの端末からもログインしなおすことなくクラウドからデバイスへ情報を転送できる世界を第一段階、Windows Liveを経由してあるデバイスから別のデバイスへ情報を転送できる世界を第二段階と語った。
ある調査によると、PC・携帯電話・組込み専用端末の3つの市場の成長予測において、もっとも成長が見込めるのは、組込み専用端末と見られ、その規模は数百億台とも推定されている。そのうちの、車載機器のシステム別市場動向を見てみると、現在はラジオやCD、音楽再生といったベーシックなシステムが市場全体の6割を占めているが、これが2015年になると、BluetoothによるハンズフリーやUSBといったコネクティビティのシステムが1割から2割へ、2.5Dナビやタッチスクリーンといったミドル機能のシステムが2割から4割へ拡大すると予想されている。これは、マイクロソフトが今後の車載機器端末の開発ターゲットとしている分野と一致するものである。
こうした通信やエンターテイメント、ナビゲーション、端末接続など、車内のインフォテイメント環境をより豊かにするために、マイクロソフトが現在開発を進めているのが、Tier 1サプライヤーおよびカスタマー、OEMのどちらにもメリットを提供できる統合プラットフォームである。
これまで、車載機器メーカーは、それぞれが独自に他の接続デバイスとの膨大な互換性テストを行ってきたが、マイクロソフトがその接続性を共通ユニットとして保証・提供することで、メーカーは低コストで高品質なサービス提供が実現できると同時に、ユニークなソリューション開発により注力することができるだろう。また、コンシューマーにとっても、車載機器の購入後も、最新のドライバを入手することができれば、常に新しい端末をつないで楽しむことができる。
同氏が目指す統合プラットフォームは、「車内(In Vehicle)」「ポケット(In pocket)」「クラウド(In Cloud)」という3つのカテゴリを頂点とした三角形の中心に存在し、3つのカテゴリをシンクロさせる、というもの。たとえば音楽プレイヤーも、ただつないで聴くだけでなく、自宅のPCとシンクロさせたり、あるいは、近所で一番安いガソリンスタンドを探す場合に、ただ車内からクラウドにつなぐだけでなく、自宅のPCでピックアップしておいた情報とシンクロするなど、ハイブリッドシナリオの実現に向けて取り組みたいとしている。
現在明らかになっている車載ソリューションのロードマップとしてまず、国内のカーナビメーカー向けに8年間提供してきた「Windows Automotive」と、欧米の自動車メーカー向けの「Microsoft Auto」という2つのプラットフォームが、来年度には統合した次世代Microsoft Auto(開発コードネーム:Motegi)に一本化される。
Motegiでは、Windows Automotiveで提供されてきたHMI(Human Machine Interface)ツール「AUITK(Automotive User Interface ToolKit)」が、「Microsoft Silverlight」に統合される。また、ユーザーインタフェースのデザインには「Expression Blend」、プログラミングには「Visual Studio」を利用し、それぞれがシームレスにデータをやりとりできる開発環境が提供される。これにより車載機器メーカーは、専用の高価なハードウェアやソフトウェアを必要とせず、マイクロソフトの既存ツールのみで開発することが可能となり、デザイナー、開発者、画面遷移などを設計するステートデザイナーの3者が、PC上で効率的に情報共有可能な開発環境が実現するという。
たとえばこれまでの開発工程は、デザイナーはPhotoshopなどを使って画面をデザインし、アウトプットを紙ベースで開発者に渡すと、開発者はそれを見ながらCやC++で新規コーディングする、というものであった。しかしこうして構築されたビジュアル環境が、デザイナーの意図するものとマッチせず、両者で何度もやり取りが発生する、といったことが多くの現場で起こっていた。
Motegiではこういった現状を打破するために、デザイナーがExpression Blendでデザインし、そのアウトプットを、Silverlightで採用しているXAML形式のファイルで開発者に渡す。開発者は、受け取ったXAMLファイルをVisual Basicでコンパイルすれば、デザイナーの意図した画面を、ターゲットデバイス上でネイティブに動く状態にすることができるようになる。また、車載機器において非常に重要な画面遷移や動作を定義するステートデザインに関しても、XAMLに対応したサードパーティ製ステート管理ツールとの間でファイルを共有。現開発段階のMotegiでは、独Elektrobit社のステート管理ツール「GUIDE Studio」との連携機能をExpression Blendに搭載することにより、デザイン、プログラム開発、ステート管理という、従来は別々に進められてきた作業を、それぞれの役割でアプリケーションを分けながらも、Silverlight上で共有できる環境を実現しているという。
《柏木由美子》
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