Media Center搭載のSTB、デジタルサイネージが情報端末を変える――Windows Embedded Standard 7
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発表にあたり、マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンべデッド本部 シニアマーケティングマネージャ 松岡正人氏は、名称変更について、年末から年明けにかけてWindows 7の市場での評価が想像以上に高まったことから、それまでの西暦年号ベースのネーミングから、OSコンポーネントの共通バージョンともいえる「Windows 7」を冠するようにしたためと説明した。そして、昨年は世界規模で厳しい経済情勢が続いたが、2010年になってから、若干の改善が各国でみられているとし、Embedded 7を、その活動を加速する製品にしていきたいと抱負を語った。
Embedded 7がどのような市場で、経済活動を活発化させていくのかというと、マイクロソフトでは、セットトップボックス(STB)のようなテレビに接続するタイプの情報通信端末とデジタルサイネージに注目しているという。日本でもここ数年、コンビニエンスストアのキオスク端末やレジのバリエーションが増え、多機能化が進んでいる。日本のコンビニエンスストアチェーンが1月、2月にデジタルサイネージに関する発表を行うなど、注目市場のひとつであるが、米国では、ファーストフード店や大規模ショッピングモールなどで、顧客向けの情報ポータルの機能を持ったデジタルサイネージが急速に広まっているそうだ。
マイクロソフトでは、小売業の企業活動を支援するためのデジタルサイネージの要件として、ひとつのコンセプトモデルを持っているという。これまでのデジタルサイネージは、コンテンツや画像表示を動的に書き換えることができるというものだったが、新しいサイネージは、それに加えユーザとの対話による双方向のトランザクションを処理する機能が重要になってくる。そのためには、Windows 7が標準でサポートしているマルチタッチ、ロケーション機能、Silverlight、Aeroといったさまざまなコンポーネントが活用でき、ネットワークによってクラウドや企業のサーバと双方向でつながっていなければならない。このようなデバイスをマイクロソフトでは「コネクテッドデバイス」と呼んでいるそうだ。
デジタルサイネージのコンセプトモデルについては、2010年の1月にニューヨークでインテルと共同開発した製品があり、そのデモ風景がスライドで紹介された。本体はかなり大きなものだが、2枚の高さ2メートル弱のパネルから構成されている。2枚のパネルは半透明なLCDであり、マルチタッチのスクリーンとなっている。このデジタルサイネージには小さいCCDカメラも搭載されており、広告や案内を表示させながら、正面に立った人の年齢、性別をアノニマス(匿名)情報として認識し、さまざまなレコメンデーション機能を提供する。また、ユーザの携帯電話やスマートフォンと接続し、店舗のクーポンを入手したりカタログ情報をダウンロードしたりすることも可能だ。このコンセプトモデルの試作品は、6月9日から開催される「デジタルサイネージジャパン2010」で実機のデモが予定されているという。
松岡氏は、このようなサイネージ端末にEmbedded 7を利用するメリットとして、マルチタッチのような高度なUIコンポーネントを、製品ごとの作り込みなしに標準機能として利用できる点、Windowsの開発リソースが利用できる点、そして、店舗のうしろに控えているエンタープライズシステムとの連携機能などをあげた。System Centerによるアセット管理、Active Directory、Azureによるクラウド系サービス、ユニファイドコミュニケーション機能など、企業の基幹システムとの連携も共通のAPIで実現できるというわけだ。
コンシューマ向けの機器については、Media Centerを搭載したEmbedded 7を利用すれば、たとえば、デジタルテレビを端末とするSTBやHDDレコーダーのようなデジタルメディア製品の開発が容易になるという。日本ではカーナビ製品もWindows Embeddedが浸透している分野だが、これらにAV機能やインターネット接続を前提としたエンターテインメント機能の実装など、パートナー企業にはさまざまな最終製品を開発してもらえるように技術的な支援も行うとした。なお、自動車関連のWindows Embeddedには、Windows AutomotiveやCEベースのWindows Embedded Compactなどがあるが、これらも年末に向けてAutomotive 7、Compact 7に名称変更されるそうだ。
ここで、松岡氏は、スペシャルゲストとしてマイクロソフト コマーシャルWindows本部 本部長 中川哲氏を紹介した。中川氏はWindows 7の製品チームの代表として、Embedded 7に対するエンドースメントのために呼ばれたとのことだ。中川氏は、挨拶とともにEmbedded 7はWindows 7と共通のAPIによって、組込み機器のさまざまなデバイスやセンサーが利用でき、PCにはない付加価値製品が開発できるだろうと評価した。そして、エンタープライズ用途ではシンクライアント端末の応用も広がるのではないかと述べた。たとえば、Microsoft VDIによるEmbedded 7の仮想イメージをシンクライアント端末として、古い端末やPCに展開する活用法や、Embedded 7に備わるUSBブート機能がレガシーPCの再利用の道を開く可能性についても言及した。
質疑応答では、セキュリティに関する質問がいくつか出た。Vista以降のマイクロソフト製品は、一様にセキュリティに対するクライテリアを上げてきており、Embedde 7もその例外ではないそうだ。Embedded 7では、セキュリティ機能はWindows 7に準拠させているとし、組込み機器特有のスキームとしては、稼働中のOSバイナリとスタティックなROMなどのイメージを2本立てで保護するポリシーを採用しているという。Embedded 7のEEF(Embedded Enabling Features)という機能では、実行中のバイナリについて専用のDRAMエリアを経由させることで書き込みや改ざんからプロテクトすることができるようになっている。そして、サードパーティ製のセキュリティソフトやアンチウイルスソフトなどを併用することでセキュリティを確保する。また、Windows 7のセキュリティ機能は踏襲できるので、通常のWindows Updateの適用も可能とのことだ。
セキュリティ対策については、製品ベンダーのポリシーやユーザニーズなどに依存するが、おそらく、デジタルサイネージなどネットワークの常時接続が期待できる製品については、Windows Updateを有効にし、Embedded 7特有のセキュリティ機能とサードバーティ製のソフトウェアやアプライアンスで対応することになるだろう。また、セキュリティという意味では、汎用アプリケーションはなるべくクラウドサービスでの提供が望ましいことになりそうだ。
主にスタンドアロンで使うような機器の場合、USBのようなメディアを経由したセキュリティアップデートの方法もあるが、仮想化プラットフォーム上で、OSやアプリケーションの挙動監視のようなソリューションが有効となるだろう。
最後に、次世代デジタルサイネージのコンセプトモデルのような大掛かりなシステムは、Embedded 7ではなく、通常のPCとWindows 7でも実現できそうだが、Embedde 7を使うメリットは何か、と質問したところ、EEFには高速なレジューム機能が備わっており、通常のWindows 7よりもさらに高速なシステム起動が可能であり、必要なコンポーネントによって構成できるEmbedded 7はフットプリント(数百MB~)の面でもWindows 7よりも有利であるとのことだった。
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