【富士通フォーラム2010(Vol.8)】クラウドによるスマートグリッドと完全自律分散型のスマートネットワーク
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まず、富士通の「スマートグリッドへの取り組み」について、同社の社会基盤ソリューションビジネスグループ スマートソリューション事業部 シニアコンサルタントの北川賢治氏より説明を受けた。北川氏によれば、欧米でスマートグリッドというと注目される電力の安定供給や送電網の自動制御などの技術は、日本においてはすでに確立されており、欧米のシステムやソリューションをそのまま適用することはできないという。日本型のスマートグリットを考えたとき、電力設備の保安ネットワークを含む配電システムの高度化、料金計算や請求などを処理する営業システムとも連携させることにより、設備計画・工事、業務の効率化に注目しているそうだ。ポイントは、既存の配電システムや営業システムをメーターデータソリューションとして、統合管理するネットワークを構築することであり、運用管理や監視機能をクラウドサービスとして提供することにある。
もちろん、スマートグリッドというからにはこれだけではない。各家庭の積算電力計(いわゆる電気の検針メーター)にスマートメーター機能を組み込み、末端での電力消費などのセンシングを行い、エネルギーマネジメントを行ったり、また、各家庭でのソーラーパネルの発電に対して、余剰電力の売電あるいは電力会社からの給電の制御などを実現する。エンドユーザ宅では、クラウドサービスの機能として、このような制御情報をPCなどでモニタリングすることもできる。
富士通というと、発電所など重電系の市場より、コンシューマ向けのスマートメータ―端末のほうが得意なのではないかというイメージがあるが、北川氏によれば、富士通の母体となった富士電機は、電力会社の配電系システムなどを多く手掛ける企業であり、スマートグリッド事業ではパートナー関係にあるそうだ。富士通のスマートグリッド関連の売り上げは、国内だけですでに100億円ほどに達しており、これを500億円以上に伸ばしたいとしている。
以上のように、富士通の取り組むスマートグリッドは、電力会社の配電システム、営業システム、各家庭(需要家)の電力計を新しいネットワークでつなぎ、双方向かつ高度なエネルギーマネジメントを実現しようというものだが、そのネットワーク部分にも富士通独自の技術を活かそうとしている。
これの新しいネットワーク技術が、もうひとつの展示「設定不要・ネットワークの自律構築」の「WisReed」である。説明は、インテリジェントソサエティビジネス本部 スマートネットワークビジネス統括部の増渕健太郎氏だ。
富士通のスマートグリッドソリューションにおいて、配電系システムや営業系システムのネットワークには既存のネットワークが利用できる。それは、専用線であったり広域LANであったり、VPNを含むインターネットであったりと様々だが、スマートグリッドとして需要家をつなぐネットワークを構築するためには、いわゆる「ラストワンマイル」の問題が生じる。一般的には、各家庭内に設置されるスマートメータ―は、電力計から分岐させる形でモニタリングを行い、収集したデータはインターネット(アクセス)回線を利用することになるが、富士通では、独自のアドホックネットワークを構築するためのルーティングプロトコルを開発している。それが「WisReed」である。
このネットワークは完全自律分散型であり、ノードの追加や削除に制限もなければ、ノードやサーバ側に設定の必要もない。このプロトコルを実装した積算電力計はそれぞれが勝手に通信し合い、ネットワークを構成する。制御ゲートウェイからの指令を受け取れば、それぞれが独自に必要な応答を返すし、端末の制御も行う。もちろん、個々のノードが故障してもルーティング経路は自動的に修復される。
しかも、各ノードは有線、無線の両メディアに対応しているので、設置場所の自由度も高い。会場でも、各展示ブースの上部にWisReedのノードを設置し、それぞれのノードを無線で制御するデモが行われていた。各ブースのノードには、デモ用のLEDランプが設置されており、制御コンソールから任意のブースのLEDをON/OFFする操作が視認できるようになっていた。
WisReedは今回の展示ではスマートグリッドのラストワンマイルのためのソリューションとして利用されていたが、WisReed自体は、汎用的なネットワーク技術であり、用途は様々である。ビルや工場、データセンター等の設備監視や制御、防災・気象の監視、観測、医療センサーなど、各種のセンサーネットワークとして活用できる。そのためのセンサーミドルウェアも用意されている。
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