【インタビュー】地域密着だけじゃない!新サービスをケーブルで積極展開……イッツコム 市来利之社長
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――現加入者における戸建・集合住宅(マンション)の割合や傾向について教えてください。
戸建・集合住宅の割合は、ほぼ半々ぐらいですが、他社と比べると戸建の比率が高いほうだと思います。我々のエリアが東京と神奈川にまたがっていること、集合住宅は共同配線などの技術的な問題もあり、開局してから10年間ぐらいは戸建を中心として、サービス展開していたことも理由として挙げられます。
――もうすぐアナログ電波が停波し、デジタル電波に完全移行します。地デジ化への影響で駆け込み需要はありますか?
これまで若干は影響がありましたが、地デジ化のため加入が急増するということはありません。そのような中で我々が強みを発揮しているのは、やはり地域に根差した情報発信源として20年以上にわたる活動を続けてきたこと、お客様との深い信頼関係を地道につくりあげてきた実績があるからだと思っています。
――地域密着の活動の中で、お客様に支持されているサービスや施策はありますか?
「iTSCOMスポット」という、お客様との接点となるような体験・相談窓口を、武蔵小杉と、たまプラーザに設置しています。この3月には新社屋(二子玉川ライズ オフィス9階)に隣接する二子玉川ライズ ショッピングセンター内の1階にも同様のスポットが開設しました。また昨年度にはテレビ、FM、インターネット、デジタルサイネージなどのマルチメディアに対応するコンテンツ収録・放送が可能なクロスメディアスタジオもたまプラーザと二子玉川の2箇所に開設しました。このような施設はコストがかかります。しかし長い目で見ると、常にお客様の身近に我々のサポートがあるということが重要であると考え、運営しています。iTSCOMスポットには、弊社の端末がすべて揃っています。その場で機器を接続して、光ハイブリッドの高速インターネットやハイビジョン放送、VODなど、トリプルプレイサービスのすべてを体験いただけるようになっています。最新の3Dテレビのコンテンツも視聴できます。スタジオのほうも、お客様に参加していただけるオープンな触れ合いの場として機能させることを目的としています。
●ケーブルテレビ局の特性を最大限に活かした先進的なサービスの試み
――ケーブルテレビ事業者ならではのサービスについて教えてください
TV番組とウェブサイトが連動して東急沿線のお店やサービスをスペシャル価格で入手できるプレミアムチケット購入サービス「ポニッツ」もお客様に支持されているものの1つです。「ポニッツ」は、まさにケーブルテレビならではのサービスだと思います。実際に思っていたとおりの効果が得られました。ケーブルテレビ局では、地域の生活を支援する関連番組を自社で安価につくることができます。これが大きなメリットです。もともとケーブルテレビ局は、制作費をかけずにスタッフが番組を制作していましたから。また放送するときも、自社のネットワークに流すため、余計な放映料もかかりません。長い間、地元で活動しているため、商店街や地域の方々とのコネクションもあります。地域を熟知しているイッツコムの持ち味が、他社の展開する同様のサービスとは一線を画すポイントだと考えています。実際に昨年12月から「ポニッツ」を始めて、お客様から大変好評を博しています。月の売上高(12月実績)は約1,300万円になりました。ただし我々の目的は儲けるためというよりも、あくまで自分たちの地域が活性化するためのお手伝いをするというスタンスです。
――このほかにも東急グループのチラシをチェックできるサービスもありましたね。
それは「MIL-Cシステム」(ミルシー)というサービスの1つです。我々と東急電鉄、さらに近隣のケーブルテレビ局やデベロッパー7社と共同でミルシーフォーラムをつくり、ケーブルテレビのインフラと地域情報を活用した新しい生活提案サービスとしてスタートさせたものです。現在、「二子玉川ライズタワー&レジデンス」住民専用(1,033戸)で、ケーブルテレビの専用セットトップ・ボックスのブラウジング機能などから、東急百貨店や東急ストアの食品のお得情報(RISE食得情報)やタウン情報などをご案内しています。いま商品の注文まで可能なシステムも開発中です。今後、東急電鉄が販売するマンションでは、この「MIL-Cシステム」を積極的に採用する方針なので、弊社の重要なサービスの1つとして展開していくつもりです。
●充実したサービスメニューで、顧客のライフスタイルの変化にも対応
――「かっとびモバイル」のような、新しいサービスも充実してきました
「かっとびモバイル」は、パソコンや音楽プレイヤー、ゲーム機など同時5台まで接続できるモバイルWi-Fiルータを利用したサービスです。事務手続き、端末代金が無料で、月額費用も他社より安くなっています(iTSCOM.net利用時は月額4,480円)。このサービスについては、まだ反応はそれほど際立っていませんが、今は沿線のお客様のご要望にお応えするためにメニューを用意している段階です。世の中の流れとして、無線サービスの需要が見込まれていますので、お客様の満足度を高めるための一環としてスタートしました。放送・通信・電話といったメニューも多岐にわたるラインナップから選べますが、今後も新しいサービスをどんどん拡充していくつもりです。ただしテレビについて触れると、以前は番組の多チャンネル化で満足されるお客様が多かったのですが、最近ではファミリーの構成人数が減っていることもあり、昔よりテレビを見ない方向にライフスタイルが変化しているような気がします。その一方でVOD(ビデオ・オン・デマンド)に関しての需要は堅調です。2009年11月より開始した「iTSCOM オンデマンド」は、確実に利用が伸びています。コンテンツ自体も充実してきました。この先VODは間違いなく弊社サービスの重要な柱になっていくでしょう。VODが伸びている背景には、やはり「見たときに見たいものを」というニーズがあるということ、我々が提供する機器の使い勝手が格段に良くなったことが挙げられると思います。弊社のWチューナー搭載BD(ブルーレイディスク)/DVD/HDD(500GB)内蔵セットトップ・ボックスで、ハイビジョン放送を録画すると大変便利だという声も聞きます。これも一度でも使うと、お客様は手放せなくなるようです。
――最後に今後の抱負について教えてください
3年連続でRBB TODAYのアワードを受賞させていただきました。品質面での高さをご評価いただいたわけですが、まだまだ我々はこれでは足りないと思っています。実は例年以上に品質を高めるために、営業品質向上プロジェクトを立ち上げ、さらに力を入れようとしていたところです。今年は放送の完全デジタル化が迫っています。誰もが、いまはこちらに目を向けていますが、その先をどうするのか、ポスト地デジというところまで考えが至っていないようです。我々は、その先のビジョンを一生懸命に考えているところです。その答えの1つが、先ほどご紹介した「ポニッツ」であったりするわけです。今後に向けてのサービスや体制づくりを強化していきたい。地域密着型のスポットやクロスメディアスタジオもつくって、お客様とのよりよい関係をつくれるような布石を今からどんどん打っていきたいと思っています。
《井上猛雄》
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