クアルコムが語る、グローバルのスマートフォン市場における取組み | RBB TODAY

クアルコムが語る、グローバルのスマートフォン市場における取組み

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クアルコムCDMAテクノロジーズ マーケティング部長 須永順子氏
クアルコムCDMAテクノロジーズ マーケティング部長 須永順子氏 全 9 枚
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 クアルコムCDMAテクノロジーズ(半導体部門)は、「スマートフォン2011 春」(4/26~28、東京国際交流館・プラザ平成)にて、「グローバルにスマートフォンをリードするクアルコムの取り組み」と題したセッションを行い、同社のモバイル用チップセット「Snapdragon」の特徴やロードマップについて、クアルコムCDMAテクノロジーズのマーケティング部長 須永順子氏が解説した。

■Snapdragonの独自開発CPU「Scorpion/Krait」

 クアルコムでは、ARMからv7のアーキテクチャライセンスを取得し、2005年よりCPUを自社開発している。これにより、他社にはない「非同期動作マルチコア」を採用。各コアが、必要なときに必要に応じて独立して動作することでより低消費電力を実現している。これにより、例えば現行のCPUコア「Scorpion」は、商用端末測定で1.2GHz時の消費電流が1,000mWを下回る。競合他社が同等の周波数をプロセスプッシュによって実現した場合、その消費電流は1,600mWになると見られ(クアルコム試算値)、端末メーカーが許容できない数値になるという。

 Scorpionの次の新CPUコア「Krait」は、最大2.5GHzまで可能な設計となっているが、中位セグメントの市場向けに1GHz台も用意する予定だ。コアそのものの性能は、現在のARMコアと比較して、150%のパフォーマンスを実現しながら、消費電力は65%抑えているという。

 Krait搭載チップセットは、シングルコア/デュアルコア/クアッドコアそれぞれで製品化される。シングルコア(MSM8930)は、現在のScorpion搭載のMSM7230(800MHz)、MSM8255(1GHz)に代わるものと位置付け、LTEのマスマーケット向けのスマートフォンへの採用を狙っている。サンプル出荷予定は来年2012年初頭を予定。デュアルコア(MSM8960)は、LTEの高機能スマートフォンおよびタブレット向けと位置付け、サンプル出荷は今年の6月を予定。クアッドコア(APQ8064)は、まずは3G無しのアプリケーションプロセッサとして投入し、その後、LTE Release 9を統合したワンチップソリューションを出したいとしている。

■第三者ベンチマークで最高評価となったGPU「Adreno」

 クアルコムのGPUコア「Adreno」は、「Adreno 130」(2007-2008年)、「Adreno 2xx」(2009-2010年)、「Adreno 3xx」(2011-2013年)と進化。このAdrenoのバージョン番号は「OpenGL ES」のバージョン番号と同期しており、それぞれ130が1.0/1.1、2xxが2.0、そして3xxは、次期OpenGL ES「Halti」(コードネーム)に対応している。またAdreno 3xxは、GPGPU(General Purpose GPU)のOpenCL 1.1にも対応している。

 Adrenoの性能を、一般に知られているゲーム機の性能で示すと、Adreno 130はN-Gage/PSP/Nintendo DS、Adreno 2xxはApple iPhone 3GS/PS2/Wii、Adreno 3xxはゲームコンソールと呼ばれるXBOX/PS3と同等の性能だという。また、第三者機関のANANDTECH社が行ったベンチマークテスト「GLBenchmark 2.0」では、クアルコムのアプリケーションディベロッパー向け評価用デバイス「MDP;Mobile Development Platform」(1.5GHz MSM8660 - Adreno 220」が、LGのOptimas 3D/2XやMotorolaのAtrix 4G、サムスンのFascinate、Nexus Sよりも、OpenGL ES 2.0の性能で優れているという結果が得られている。

■幅広いセグメントに対応するSnapdragon端末

 現在クアルコムは、タブレット、ハイエンドスマートフォン、マスマーケット向けと、すべてのセグメントでAndroid端末に対応し、これまで130機種以上、30メーカー以上に採用されている。その背景には、次の4つの取り組みがある。

 第1に、これは同社の半導体製品全般に言えることだが、新しい無線通信技術のタイムリーな採用。後方互換をサポートし、広範な通信エリアをカバーできるよう、マルチモード対応に取り組んでいる。日本・米国・欧州のLTEサービス開始をマルチモードチップでサポートしたのもその一例だ。

 第2に、“システム”としてのチップのインテグレーション。電源管理、ソフトウェア、メモリ、モデム、無線通信、様々な接続性、DSP、CPU、GPU、GPS、マルチメディアといった部品の統合により、コンパクトかつ低消費電力のチップ開発に取り組んでいる。

 第3に、Androidのみならず様々なプラットフォームへの対応。昨年10月にマイクロソフトが発表した9種類のWindows Phone 7端末は、全機種でSnapdragonが搭載されている他、HPが今年2月に発表したwebOS端末の3機種すべてでSnapdragonが搭載されている。

 第4に、スマートフォン市場拡大のためのセグメント化。ハイエンドが注目されがちだが、スマートフォンの市場を拡大するためには、安価なスマートフォン向けのチップセットも投入する必要があるとクアルコムは考えている。

 Snapdragonは、これまで無線通信機能も統合したチップセットを提供してきたが、iPadのWi-Fiモデルのような端末も増えているため、3G機能のないSnapdragonの提供も開始。これにより端末メーカーは、1つの基盤、共通の部品を使いながら、3Gの有り/無し製品を同時期に出荷できるようになる。また、来年にかけてドコモ以外のキャリアもLTEサービスを開始するが、これに伴いLTE搭載のSnapdragon端末がさらに登場する予定だ。

《柏木由美子》

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