【Wireless Japan 2011(Vol.6)】NTTドコモ、モバイルの未来を支える先進技術「マルチバンド電力増幅器」を公開予定! | RBB TODAY

【Wireless Japan 2011(Vol.6)】NTTドコモ、モバイルの未来を支える先進技術「マルチバンド電力増幅器」を公開予定!

ブロードバンド テクノロジー
NTTドコモ 先進技術研究所 アンテナ・デバイス研究グループ 古田敬幸氏
NTTドコモ 先進技術研究所 アンテナ・デバイス研究グループ 古田敬幸氏 全 7 枚
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 5月25日から27日までの3日間、東京ビッグサイトにて「Wireless Japan 2011」が開催される。同展示会の注目技術のひとつがNTTドコモの「マルチバンド電力増幅器」だ。

 そもそもマルチバンド電力増幅器とは一体どのようなものだろうか? 「携帯電話を使う際には、電波を大きな信号に増幅して飛ばさないと遠くの基地局に届きません。そこで送信信号を所定の電力に大きくする働きを担う装置が用いられます。それが電力増幅器と呼ばれるものです。今回出展するマルチバンド増幅器は、1.5GHz帯を含む、0.7GHzから2.5GHzまでの幅広い範囲(9つの帯域)をカバーするもので、1つでGSM/W-CDMA/LTEに対応するマルチモードになっています」と説明するのは、NTTドコモ 先進技術研究所の古田敬幸氏(アンテナ・デバイス研究グループ)だ。

 実はGSM/W-CDMAといった通信方式の携帯電話の周波数帯割り当ては、世界中で異なっている。さらに将来的に普及が見込まれるLTEではより広いカバーレッジが必要だ。従来のシングルバンド電力増幅器は、ある特定の周波数帯のみをターゲットにしたもの。もし複数のバンドを増幅しようとすると、これら対応周波数ごとに複数の回路と部品が必要になる。実際にデュアルバンドの電力増幅器は2系統の回路が組み込まれている。古田氏は「将来的に周波数帯が増加して、そのまま部品を並列に実装していくと回路規模が大きくなるという懸念があります。そうなると端末自体も大型化して、お客様の利用面からも使いにくいものになってしまいます」と指摘する。そこで、現状の大きさのままで、幅広い周波数帯に対応できるような技術が求められるというわけだ。

 マルチバンド電力増幅器の具体的な仕組みとしては、1つの増幅素子(トランジスタ)で複数の周波数帯に対応させるために、周辺回路にスイッチを設けていることが大きなポイント。そのスイッチのオン/オフの組み合わせによって、使用する周波数帯に応じた回路特性になるように変更し、マルチバンドに対応させているのだ。「マルチバンドに対応するため、それぞれの周波数帯でピーク値を最適化することが大変でした。増幅部を1系統で共用するため、たとえば1つのバンド特性だけを良くすると、他の部分に影響が出てしまいます。9つのバンドすべてに渡って調和のとれた形で良い特性を出すことが難しかった」(古田氏)と開発時の苦労について語る。またマルチバンドに対応させているだけでなく、出力2.5W、動作効率約40%と、現行のシングルバンド増幅器と比べて遜色のない性能を維持している点も見逃せないところだろう。

 実際に展示会で予定されているデモは、マルチバンド電力増幅器の信号をネットワークアナライザで観測し、一般の見学者に公開するというもの。コントローラのトグルを回すと、増幅器の利得を周波数ごとにプロットした波形がシフトしていき、波形のピークをあらかじめ決めておいた周波数に動かすことができる、すなわち特定の周波数帯になったところで特に大きく増幅できることがわかります。マルチバンド増幅器1つで、複数ポイントの周波数帯が切り替わって増幅される様子を見ることができるという。「今後このマルチバンド増幅器によって、世界中のどのような周波数でも、どのようなシステムでも、一台の携帯電話で利用できるようになるでしょう。しかも従来の携帯電話と変わらない大きさで実現するのです。これまでのように海外旅行に行って、わざわざ空港で専用の携帯電話をレンタルする必要もなくなります。携帯電話のグローバル化に貢献できるはずです」と古田氏は語る。

 本展示では、このような興味深い動態展示のほかにも、さらに小型化を進めた約8×6mmのマルチバンド電力増幅器のチップも展示予定。あと3、4年ぐらい先には、実際に本技術を採用した携帯電話が登場してくるかもしれない。

《RBB TODAY》

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