【CEDEC 2011】ニンテンドーDSを防災情報の伝達手段に活用した佐渡市の事例(後編)
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これは行政からの依頼を受けて馬場研究所と河本産業および地元のNPO法人の協力を得て実現したもので、簡単に説明すれば防災情報や地域情報をニンテンドーDSという圧倒的な普及をしている端末向けに配信するというもの。裏のシステムはオープンソースのCMSで生成したRSSを読むという非常にシンプルなものになっています。
防災情報を伝達する手段としてはテレビやラジオといったマスメディアの他にも、オフトークや防災無線などの手段がありますが、どれも大きなコストがかかるものです。ニンテンドーDSは数千万台が普及していて、特に小学生の普及率は88.9%(内閣府調べ)にも上っていることから、新たな情報の伝達経路として着目されました。
ウェブ側のシステムはオープンソースのCMSであるOpenPNEを改造したものを使用。通常のRSSを生成しているだけです。サーバー環境も極一般的なLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHPというウェブで良く使われる構成)環境であり、何の変哲もありません。
ニンテンドーDSソフト側はWi-Fiでインターネットに接続し、RSSの内容を読みに行きます。内容は『お料理ナビ』で採用されたシャープ製の音声合成システム「SpeakPal」で読み上げられます。読み上げ用の辞書は地元の地名などを入れ込むカスタマイズを行っているとのこと。
システム自体は非常に枯れた技術を使っており、5000人を対象に運用する想定でも月額1000円程度のレンタルサーバーで余裕をもって対応できたとのこと。問題点としては情報をプル型で取得するため、リアルタイムに災害情報を伝達するというのは難しいという点が挙げられのまた。今回のソフトでは5分に1度情報を取得するため、最大で9分59秒のラグが考えられます。
また、ゲーム機ということから、RSSから情報を取得してそのまま表示する方法では、どのような文章が表示されるか分からないという点で任天堂は難色を示したそうです。この点はCMSで入力できる内容を制限し、投稿も一部のメンバーだけに限定することで回避をしたとのこと。
ちなみにRSSを使用していることから情報は別の用途でも利用でき、実際に新潟港から佐渡島に渡る際のフェリー乗り場のデジタルサイネージで利用されているとのこと。
ゲーム機を使った伝達手段という事例で、どうしてもラグがあるということや運用をNPOが行うということでクリティカルな用途に使用するには課題があるようですが、情報を伝える手段を増やす、しかも安価な環境で、というのは意味のあることと言えるのではないでしょうか。
《土本学 / Mr.Cube@INSIDE》
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