【IDF 2011(Vol.7)】ノートPCの主流はUltrabookに!各社がIvy Bridge搭載製品を開発中
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Ultrabookは今年の年末商戦に向けて各社が発売を予定しており、当初は現行製品であるSandy Bridge世代のCPUを搭載した機種が市場に出回ることになるが、“本命”のCPUは、2012年前半の投入を控える次期CPU「Ivy Bridge」だ。Ivy Bridgeは、32nmプロセスルールで製造されていたSandy Bridgeを22nmプロセスルール(3次元構造トランジスタを新たに導入)に微細化するとともに、CPU内蔵のグラフィック機能を強化し、電力管理機能などにも拡張が施されている。
端的に言えば、Sandy Bridgeをベースとしながら性能を向上させ、なおかつ消費電力も削減したという点がユーザーにとってわかりやすいメリットとなっている。今回のIDFで行われたMooly Eden氏の基調講演では、Ivy Bridge世代のCPUを搭載したUltrabookは、従来Core 2 Duoを搭載していた大型のノートPCに比べても高い性能を発揮できるとアピールされた。また、強化されたグラフィックコアにより動画などのメディア処理においてもより高いパフォーマンスを得られるとしており、25本のHD動画を同時に再生するデモンストレーションが行われた。
PCメーカーにとってメリットとなるのは、Sandy BridgeとIvy Bridgeの間にはピン互換性があり、Sandy Bridge用に開発したノートPCについて、Ivy Bridge登場以降には同じ設計を流用して最新CPU搭載版の製品を世に送り出せるという点である。特に欧米では最大の商戦期となる年末のホリデーシーズンにはSandy BridgeベースのUltrabookを用意して旺盛な需要に応え、来年Ivy Bridgeがリリースされたならば即座により高性能なモデルを市場に投入できるというわけだ。台湾のODMベンダーであるCompal、Foxconn、Inventec、Pegatron、QuantaがIvy Bridge対応のUltrabookを開発中であることがアナウンスされ、会場でもいくつかの試作機が展示されていたが、システムのプロパティを見る限り現時点ではSandy Bridgeが動作しているようだった。
これら開発中のUltrabookのスタイルを見て、多くの人が思い浮かべる製品はAppleのMacBook Airだろう。IntelがUltrabookの普及に注力する背景としては、日本を含むPC先進市場で、MacBook Airが人気商品となっていることがあるのは想像に難くない。
ノートPCは、タブレットのような新しいモバイル機器と直接競合するとまでは断言できないものの、タブレットなどへの注目が急速に高まることで、外出中にインターネットや各種コンテンツを利用する道具としてのノートPCの地位が相対的に低下しつつあるのは間違いない。これから1台目のマシンを購入する消費者が多い新興市場ではPCの売り上げは大きく伸びているが、先進市場においてPCの普及は既に一巡も二巡もしており、この先PCが注目商品になることはないという見方も強い。特にネットブックのようなエントリーレベルの性能のマシンにとって、今の市場の動きは厳しいものがある。
しかし一方で、長文のテキストを入力したり、カメラで撮影した写真や動画に手を加えたり、オフィスソフトを利用して文書や資料を作成したり、オンラインゲームを楽しんだりといった用途に関しては、いくらタブレットが高性能・高機能化しつつあるとはいえ、まだまだノートPCを置き換えることはできない。そこへ、タブレットほど軽量ではないものの比較的手軽に持ち運ぶことができ、誰もが思わず目を引かれるスリムで美しいデザインを持ち、しかも1000ドルを切るリーズナブルな価格(11インチ版)を実現したMacBook Airは、近年では珍しく注目を集めるPCの新商品となった。タブレットのカテゴリーでは圧倒的な人気を誇るiPadと同じメーカーの商品という点は皮肉だが、先進市場では成熟した商品カテゴリと見なされていたPCも、やり方次第でまだまだヒットを生み出せるということが証明された。
もちろんIntelも、薄型ノートに需要があることには以前から気づいており、モバイルノート用の超低電圧版CPUに「CULV(Consumer Ultra Low Voltage)」というカテゴリー名を付けて、ODMベンダーの支援なども含め普及促進に取り組んできた。しかし、一定の支持は得られたものの、一般消費者の視点から見た場合、従来の据え置き型ノートPCと見比べてすぐわかるほどのスタイルの違いはなく、ネットブックより速いとはいえ決して高性能とも言えない、しかもネットブックほど安くもないという中途半端な位置にとどまり、市場に新たな潮流を生み出すほどの存在にはなっていない。
ODMベンダーによると、「Ultrabook」を名乗るにはボディの厚さなどにも定められた細かな規定をクリアする必要があるといい、一見してわかるような新しいモバイルPCのスタイルをUltrabookで提案したいという強い意向をIntelは持っているようだ。Intelでは個人向けノートPC市場のうち、2012年末時点までに4割、2013年末までに6割をUltrabookで占めるという強気の予想を立てており、大画面でゲームや映画を楽しむための大型ノートなどを除けば、個人が使うノートPCの主流はUltrabookになるとの考えだ。
逆に言えば、UltrabookによるノートPC市場の活性化を実現できなければ、先進市場におけるPCの地位低下が顕著なものになるとの危機感をIntelは抱いているのかもしれない。タブレットの人気はPCの売り上げに影響を与えているのか、これについてはまだしばらく議論が続くと考えられるが、「魅力ある商品としてのPC」の再提案が喫緊の課題であることは間違いない。
《日高彰》
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