【e絵本】感覚を再発見! 谷川俊太郎原作のアプリ
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内容は、書籍がそのままデジタル版になった「よむモード」と、好きな毬を選んで転がす「あそぶモード」の2本立て。前者は「ころころ」「ぽとーん」などオノマトペで構成されたお話だ。その世界を延長した後者では、動かすとオノマトペや音を発する色々な毬で遊ぶことができる。
さて、筆者が夢中なのは後者である。ゲームでもなく、画面上で毬を転がすだけの遊びに、なぜ没頭できるのか。それは第一に、このアプリにおけるバーチャルな感触が、実際の触り心地に限りなく近いからだ。ぷるんとした毬の「本物らしい」動きを目と指先で追い、記憶の中の感触を引っ張り出す楽しさ。
そこにオノマトペが合流すれば、楽しさはさらに増す。仮想触覚の確認に忙しい脳みそが、その感触を表す言葉とふいに出くわした時ったら! 両者をすり合わせるのに必要な一瞬のタイムラグが「この感触って、こんな表現だったっけ」と、既知のものを遠くから見る違和感を連れてくる。それは、言葉を道具として認識する瞬間であり、あるいは言語表現の面白さに気づく瞬間でもあるのではないか。
ありのままを受け入れる赤ちゃんには、触覚や言葉の学習ツール。言葉と触覚の体験を繰り返してきた人には、それらを再発見するツール。考え抜かれたシンプルさには、年齢の壁がない。
(c) TANIKAWA SHUNTARO,HIROSE GEN,HARADA IKUKO
《寺島 知春》
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