【中小企業のIT活用術 Vol.1】iPadやスマートフォン、モバイルソリューション導入のポイントは? | RBB TODAY

【中小企業のIT活用術 Vol.1】iPadやスマートフォン、モバイルソリューション導入のポイントは?

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大塚商会 ICTソリューション推進部 モバイルソリューション課 課長 丸山義夫氏
大塚商会 ICTソリューション推進部 モバイルソリューション課 課長 丸山義夫氏 全 5 枚
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 一般的に、IT系のソリューションの多くは、ベンダーや専門家がユーザー側に提案するパターンが多い。しかし、スマートフォンやタブレットをビジネスに利用する動きは、ユーザーがごく自然にサービスを利用し始めたことで広がっているため、その逆であることが多いようだ。

■提案型より相談型が多いモバイルソリューション案件

 「弊社で提供しているさまざまなモバイルソリューションも、こちらからソリューションを提案するというより、お客様から、スマートフォンやタブレットを使いたいんだけど、あるいはもう使い始めているんだけど、いいアプリやソリューションはないか、といった相談から始まることがよくあります。」と語るのは、大塚商会 ICTソリューション推進部 モバイルソリューション課 課長 丸山義夫氏だ。

 大塚商会は、オフィスの消耗品からITソリューション、システム構築、コンサルティングまでカバーするITサービス業であり、ユーザー企業は中小企業から大手企業まで含まれ、流通、製造業、医療、学校など業態の幅も広い。丸山氏は、中小企業のモバイルデバイス活用の意識は非常に高く、特にこの1月から3月にかけて、前述のような法人向けモバイルソリューションの引き合い、および導入案件が急激に伸びていることを実感しているそうだ。なかでも、冒頭の発言にあるようにユーザーの相談から始まる案件が多い。

 その理由について丸山氏は、「背景には、現状のPCに不便さを感じていることがあると思っています。バッテリーの持ち、起動時間、プレゼンテーション機能や効果の限界、などいろいろ考えられますが、それがWebサービス(同社ではクラウドサービスのこともこう呼んでいる)やタブレットの進化によってPC、またはPC以上の効果が見込めることがわかってきたのだと思います。」と分析する。

 ある製造業では、ラインの組立マニュアルの閲覧端末としてタブレットを利用している。タブレットの内蔵カメラを利用し、閲覧者のIDカードを読み取り、その部署や習熟度によって表示するマニュアルを適切に切り替えるといった使い方をしているという。また流通業界では、カタログの変わりにタブレットを利用したり、オーダー端末など専用端末を、タブレット+アプリというソリューションに切り替える動きが進んでいるそうだ。学校などでも、教材としてのタブレット採用が着実に広がっているという記事などもよく目にする。

■端末の導入だけでは解決できない問題がある

 中小企業のモバイル活用において、まず社員がスマートフォンやタブレットを使い始めるが、実際に業務利用が進むと、セキュリティの問題や、個人端末と業務端末の区別など面倒な問題が発生する。全てを支給端末にするとしても、多い企業では数百台というオーダーとなるし、これだけの端末(機器)と必要なアプリケーションを管理するとなると、やはり専用ツールやソリューションに頼らざるを得ないからだ。企業によっては、使う端末やアプリまでは自分たちで決められても、IT機器の資産管理やセキュリティを含む運用管理の部分で、代理店、商社、ベンダーの助け(=ソリューション)が必要となる。

 どんな管理業務や運用管理が必要か。仕事にタブレットを利用する場合、業務に必要なプレゼン用のアプリやグループウェアをインストールすれば良いというわけではない。会社支給の端末にゲームや不要なアプリがインストールされないような管理も必要だし、正規アプリの場合でも、バージョン管理をすべての端末に対して行う必要がある。盗難と紛失のリスクはPCより高くなるので、リモートロックやリモートワイプも必須機能といっていいだろう。端末のセキュリティ関連設定も、Webフィルタリング、SDカード禁止制御、データの暗号化、VPNの設定、パスワードポリシーの設定、root化・Jailbreak検出など、挙げればきりがない。しかも、社員が持ち歩くものなので、端末の管理は点(オフィス)ではなく面(業務エリア)で考える必要があり、24時間365日体制が必要となる。

■ソリューション選択のポイント

 中小企業であれば、これらの機能は必然的に外注もしくはサービスやソリューションを活用することになるだろう。しかし、丸山氏は、ここで注意すべきポイントがあるという。モバイルデバイスの資産管理や運用管理を考えるとき、いわゆるMDM(マルチデバイスマネジメント)と呼ばれる個別の機能やセキュリティ設定機能だけに注目しないことだ。丸山氏は、タブレットやスマートフォンであっても、本来はPCやサーバーなどのIT機器としての資産管理や運用管理の延長線上にあるものと考え、マルチデバイスという考え方で統一的に監視すべきだと主張する。

 スマートフォンやタブレット特有のインターフェイス、機能もあるので、完全に一致させることは困難かもしれないが、モバイル端末のために別系統の管理システムやツール類を導入するのは、コスト的にも作業的にも効率的とは言い難い。場合によっては、ポリシーの整合性がとれない可能性もある。包括的なソリューションやコンサルティングに対応できるかどうかを重視してほしい。

 次にチェックすべきポイントはサポート体制だ。十分なシステム管理要員を配置できないような中小企業でも、モバイルデバイスを活用したビジネスを実現できるように、導入計画、教育支援、運用管理のためのサポートデスクの有無などは見落とさないようにしたい。また、モバイルデバイスは、いつ、どこで盗難や紛失に会うか制御できない。24時間体制の監視も、中小企業とはいえ必要になってくる。便利な反面、顧客情報や取引データなど機微なデータを保護することに企業の大小は関係ない。

 丸山氏は、ビジネス用途にiOS系のモバイルデバイスを利用すると、多くのユーザーがその「お作法」に戸惑うという。Windows OSやエンタープライズアプリに慣れたユーザーにとって、コンシューマ機器であるiOSやAndroidの設定方法、インターフェイスなどが異質であるし、特に重要なのは、端末メーカーのサポート体制などが業務利用に耐えるものとは言い難い点だ。法人向けのノウハウや体制を持っていないメーカーの製品を使う場合は、それをどこが補ってくれるかも考慮すべき問題となる。

■全営業マンにタブレットを持たせ、ソリューションにフィードバック

 丸山氏が、このようなアドバイスができるのは、同社自身が、すでに全ての営業スタッフにiPadを持たせ、実際の業務に活用しているからだ。1年ほど前から導入を始め、その台数は2800台以上になる。そこで得られた知見は、同社のモバイルソリューションの導入コンサルやMDMサービスなどにフィードバックされている。

 この試みは、同社の営業活動にもプラスの影響がある。能動的にモバイル活用を考える企業が増えたとはいえ、まだまだモバイル化の流れについていけない中小企業も多い。そういった企業相手でも、営業マンが現場でiPadを使いながら説明すると、顧客の納得度が違う。まったく別件の提案や営業の場で、普通にiPadを使いこなす営業マンを見た顧客から、「そのモバイルソリューションをうちにも適用できるか」といった問い合わせを受けたり、受注につながることもあるという。

 今後、モバイル活用は業務遂行においてますます不可欠になるとともに、大塚商会が実践しているように新たなビジネスチャンスにもつながることが予想される。中小企業の意識が高まってきているのは良い傾向だ。モバイル化を躊躇している企業も、自分たちのニーズに応じて多様な使い方ができることや、今回挙げたソリューション選びのポイントなどを踏まえ、是非前向きに取り組んでもらいたい。

《中尾真二》

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