【ERPの最新動向 Vol.1】ERPの最新動向、中小・中堅企業が求める要件とは?(前編)
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最近ではERP(Enterprise Resource Planning)を「統合基幹業務パッケージ」と称するようになっているが、ERPはもともと「企業資源計画」を意味し、企業経営の資源を統合的に管理する経営概念を指すものだった。1980年代ごろから汎用機上で構築されるようになり(まだ当時はERPという言葉はなかった)、1990年代にクライアント・サーバ方式のパッケージへと移行した。当初は製造業を中心に利用されていたが、いまでは様々な業種・業態に広がり、企業にとって「人」「モノ」「金」「情報」という経営資源の最適化に欠かせない強力な武器となっている。
かつてはERPというと中小・中堅企業には敷居が高いというイメージが強かったが、この10年間でかなり浸透してきた。国内ではERPパッケージが大きく伸びている。「ERPは企業情報を可視化し、経営に活かすための道具。これが一番大きな根幹となる部分です。そもそも企業資源計画という観点から考えれば、経営に役立つものでなければなりません。経営者・管理者が企業データをいち早く捉え、次の一手として使えることが基本です。そのためにデータの一元管理の仕組みも欠かせません」と語るのは、大塚商会 コンサルティングサービスセンター 部長 向川 博英氏だ。大塚商会では、30年以上前の初代オフコンの時代からERPソリューションを提供している。
同社では中小・中堅企業から大企業まで、幅広く対応できるパッケージを販売しているが、基本的な性能や機能の差は縮まってきたとみている。ERP導入のメリットは、経営側からみると財務体質の改善、スピード経営、内部統制の強化などが挙げられるが、実務者となる現場側でも得るところが大きい。業務プロセスの見直しによる効率化や、それに伴う迅速な顧客対応の向上、生産リードタイムの短縮など、メリットは多岐にわたる。たとえばERPパッケージには、多くの運用経験をベースにした業務上のノウハウやプロセス、フローがベストプラクティスとして中核に含まれていたり、これらがテンプレートやアドオンという形でサポートされている。このような機能を活用し、企業の業務プロセスを改善していけるわけだ。
向川氏は、「企業内には、慣例的に手間暇をかけていた業務がたくさんあります。ERPパッケージを使いながら、これらを改善していくことになります。とはいえ中小企業にとって業務改善を実現するのは、それほど簡単なことではありません。一般論として“業務改善をしよう!”といっても、皆さん反対するわけです。昔からこうしてきたのだから、いままで通りのやり方で構わない、という話になります。社内にリーダーシップを発揮できる人がいないと、なかなか業務改善も進まないのが実情です。大企業であれば旗振り役をする人が現れるのですが、中小企業では情報システム部門のようなITの専門部署もないため、なおさら難しいのです」という。
■SMB向けERPには、業務改善を支援するコンサルタントやSEが求められる
そのような中で、中小企業に最も求められるものは、業務改善を支援するコンサルタントやSEであるという。向川氏は「大塚商会のコンサルタントは“業務改善支援”というメニューを受注します。これは、いわゆるフィット&ギャップのように、お客様のご要望とパッケージの機能をすり合わせるための支援ではありません。まさしく業務自体を変えていくための支援なのです。こういったメンバーを有していることが、経営的側面での大塚商会の強みだと思います」と力説する。つまり中小・中堅企業にとっては、ERP本来の根幹機能を最大限に発揮させる強力な助っ人が必須条件になるというのだ。
またERP導入のメリットの1つに、前述のような内部統制の強化もある。大塚商会では、特に内部統制について重視しているという。内部統制は上場企業やその関連会社などに求められるものだが、今後上場を目指しているような中小・中堅企業でも必要になるからだ。「内部統制を実現していく上で重要な点は、アクセス権やログ管理の充実です。部署やプログラム単位などで個々にアクセス権をかけ、セキュリティを万全にすることが求められます。また、いつ誰がどこにアクセスしたのか、すべてのログを取っておくことも大切です。権限を持たない人が、勝手に権限のないデータにアクセスしないように事前に管理し、一方で何かあった場合に備えて事後の記録を見られるようにしておく。双方をしっかり設定でき、内部統制上の対応ができることも導入のポイントになるでしょう」
《井上猛雄》
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