【木暮祐一のモバイルウォッチ】第7回 「通話」しないスマホから見えてくる、MVNOの可能性 | RBB TODAY

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第7回 「通話」しないスマホから見えてくる、MVNOの可能性

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 前回の連載ではNECビッグローブのMVNOサービス「BIGLOBE 3G」とデータ通信専用端末「MEDIAS NEC-102」を組み合わせたサービス「MEDIAS for BIGLOBE」について紹介した。その後もしばらく端末を持ち歩いて使っていたところ、このサービスについてもっと詳しく知りたいと思うようになった。さらには独自の端末まで展開してきたMVNOとして、NECビッグローブの今後の展望についても興味をもった。

 そこで、今回はNECビッグローブ ネットサービス事業部の池上未希氏と対談の機会を得ることができたので、その模様をお伝えすることにする。

■通話に特化したシンプルな携帯電話とスマホの組み合わせがベスト

池上氏:執筆されていた記事の中で「ほぼスマホ」とユニークなPHSの組み合わせについて書かれていましたが、とても面白いと思いました。特に震災以降、緊急時に電話が通じないことを気にする方が多くなりましたから、PHSとの組み合わせは最適かもしれませんね。

木暮:前回の記事では、世界一小さいケータイ(PHS)とされている「ストラップホン」を紹介したんです。そもそもPHSは、セルが細かくて複数の基地局に負荷を分散できるので、混雑しにくい。災害時や高速データ通信に向いている良い技術だと思っています。通話音質も優れていますし。

池上氏:他にもオススメの端末ってありますか? 私は2台持ちの通話専用端末としては、とにかくシンプルなものの方がニーズが高いような気がしているのですが。

木暮:うちに来てもらえばいくつもありますよ(笑)。ただ、仰るように、携帯はもっとシンプルな方が使いやすいと考えています。スマホは、電話機能自体にあまり工夫がないので電話機としては使いにくいんですよ。従来の携帯電話では通話しやすいような操作性や音質、ノイズキャンセリングなどにもっとこだわっていました。それだけに、通話に特化したフィーチャーフォンとスマホの組み合わせはベストだと常々思っていました。

池上氏:確かに、スマホはパソコンに近く多彩な機能を備えていますが、フィーチャーフォンのユーザーから見ると、「興味はあるけど使いこなせるか不安」とか、「料金が高いのではないか」という声もあります。そこで弊社では、フィーチャーフォンとこの「ほぼスマホ」との2台持ちを提案しています。スマホの利用者を見ても8割ぐらいがデータ通信中心の利用で、あまり音声通話をしていません。また、スマホユーザーの約3割が端末を2台持ちしているというデータもあり、そうしたニーズをより安価に満たせると考えました。

木暮:なるほど。「ほぼスマホ」は、MVNOという形で用意したSIMカードに、独自に用意した端末を組み合わせて提供しているわけですが、国内では珍しいサービスですよね。夜間に使えないかわりに、月額料金が安くなるというプランも面白い。

池上氏:早朝2時から20時までに利用時間を限定したデイタイムプランですね。他社にはないプランを提供できたと考えています。20時以降は自宅の固定回線で「ほぼスマホ」をWi-Fi接続して使っていただくのがベストだと思います。木暮さんからみて、こんなプランが欲しいというのはありますか?

木暮:そうですね、真逆というか、夜だけのプランはあってもいいと思います。以前「ドニーチョ」というドコモのプランを契約していましたが、平日の夜と土曜日曜だけ使えて、昼間に使えない代わりに基本料金が半額というもので、重宝していました。さすがに「mova」の終了で強制解約になってしまいましたが(笑)。

池上氏:やはり、普段は昼間だけの利用で問題がなくても、1日だけ夜も使いたいなど様々なケースが出てくると思います。今そういったシーンに合わせたプランについても検討中です。

■実はコストも使い勝手も「2台持ち」にメリットが

池上氏:コストメリットを考えた場合には、「ほぼスマホ」との2台持ちをぜひ検討していただきたいと思っています。音声のみのフィーチャーフォンと「ほぼスマホ」のデイタイムプランとの組み合わせであれば、2台持ちでも月額料金は約4,500円ぐらいで済みます。スマートフォン単体を持つと通常の月額料金は約6,000円ぐらいかかるので、実は「ほぼスマホ」とフィーチャーフォンの2台持ちの方が安くなるんです。

木暮:なるほど、絶妙な価格設定ですね。私が教えている学生に聞いた話では、スマートフォンで一番困るのは、電池切れで連絡が取れなくなることのようです。午前中にはフェイスブックなどもガンガン使っているんですが、午後になると利用頻度が少なくなる。夕方ぐらいにはバッテリマークが減ってきますから、使っていないアプリを停止させたり、省電力モードにしたりしてしのいでいるようです。その点でも、2台持ちであればデータ通信用端末のバッテリが切れても通話用の端末は無事ですから、安心できると思います。

■法人向けソリューションの可能性も

池上氏:「ほぼスマホ」は現状、個人向けのサービスですが、法人向けに最適なプランとともに提供できないかというのも検討しています。今回、テザリングを無料で使えるのは大きなポイントですね。他社だと追加料金が必要なところもありますし。独自のアプリも入れているのでカンタンな操作でテザリング機能のON・OFFを切り替えできます。また、プリインストールアプリの中では、オフィスファイルを閲覧・編集可能な「Quickoffice」がビジネスマンの方に人気ですね。

木暮:法人向けにストレージサービスなどをアプリとセットで提供するなども面白いかもしれませんね。最近では社員にオンラインストレージを利用することをセキュリティなどの理由から禁止している会社もありますから。日本企業であるNECビッグローブが法人向けに提供ということであれば企業からも採用されやすいでしょう。また、NECビッグローブは「ほぼスマホ」などのNTTドコモのMVNOのほか、イー・モバイルやUQ WiMAXのMVNOも展開しているので、法人としても全包囲でモバイルサービスを選択できる上で請求をまとめられるのでありがたいですね。しかも料金が定額なので法人にとっても予算化しやすいと思います。

■今後の「ほぼスマホ」を含めたMVMOの展望とは?

木暮:ちなみに、「ほぼスマホ」は6月1日からのスタートということですが、売れ行きなどはいかがでしょうか?

池上氏:開始から約2ヵ月になりますが、30~50代のビジネスマンの方を中心に大変好評をいただいております。弊社としても注力しているサービスなので、今後もいろいろな展開を考えていければと考えています。実は、当初の想定ターゲットとして学生さんなども考えていました。木暮さんは、大学で教えてらっしゃいますが、最近では板書をスマホで撮影する学生さんも増えていると聞きます。学生さんにとって、どのようなサービスに惹きがあるのでしょうか。

木暮:学生がノートを取らなくなってきてますね。エバーノートが便利だと授業で紹介したら、板書の撮影に便利だということになってしまって。そんな使い方を教えたつもりはないぞと(笑)。ただ、コスト面やバッテリの件を考えると、「ほぼスマホ」は学生にとっても魅力的なサービスだと思うので、個人でも乗り換えを検討するユーザーは出てきそうですね。

池上氏:ユーザー層については想定よりも年齢層が高い傾向にありまして、40代の方が中心になっています。学生についてはサービスインが6月だったため、すでに新生活がはじまる4月には端末を持っている方が多かったのかもしれません。

木暮:20代や30代は節約意識の高いユーザーが増えていますから「ほぼスマホ」は響くと思うのですが、逆に端末は1台で十分と思っている人も多いかもしれません。ただ、若い世代にも通話をほとんどしないユーザーが増えていますし、コンセプトは間違っていないと思います。最近は男の子に元気がないので、女の子を長電話して口説くということもなくなりましたから(笑)。

池上氏:SNSやTwitterなど、コミュニケーションの手段が多様化してきていますからね。音声通話はLINEやSkypeなどで済ましてしまうユーザーも増えているようです。

木暮:そういう最新のコミュニケーションを追いかけられるのが、スマホの特長ですね。最近ではiPhoneのSiriなどの音声認識システムも注目されていますが、あれもコミュニケーションになるのかな?(笑)。「5時に起こして」と毎日話しかけていると、どんどんエンジンが賢くなって、こちらの言ってくれることを理解してくれるようになりますし。

池上氏:NECでも音声認識の技術開発が進んでいます。そういう技術と端末を組み合わせれば、また面白いサービスになるかもしれませんね。今日もいろいろとご意見を頂けたので、社内でも検討していきたいと思います。

木暮:MVMO事業はまだまだ色々な展開が期待できると思いますので、これからもぜひ頑張っていただきたいですね。新しい端末やサービスを楽しみにさせていただきます。

《木暮祐一》

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