イセタン羽田ストアの8ヵ月(前編) | RBB TODAY

イセタン羽田ストアの8ヵ月(前編)

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イセタン羽田ストア
イセタン羽田ストア 全 7 枚
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今年4月20日、羽田空港国内線第1旅客ターミナル北ウイングの2階にオープンした「イセタン羽田ストア」。三越伊勢丹グループが日本空港ビルディングとの共同事業としてスタートさせたこの店舗は、同グループが目指す“顧客接点の拡大と充実”の具体例として注目を集めた。

伊勢丹メンズ館のノウハウを投入し、紳士雑貨と飲食を編集して提案。約850平方メートルのフロアはビジネスとヴァカンスを主要コンセプトに、4つのテーマ(リラックス、ラウンジ、ジェットセット、スイートギフト)に区分されている。
扱われているのは、同グループのバイヤーが揃えた国内外約200ブランドの商品。また、コーヒーハンター川島良彰氏セレクトによるコーヒーが楽しめるカフェ、バカラプロデュースのB bar、靴のメンテナンスやカウンセリングにも対応するシューシャインバー、フィッティングルームが隣接したゲストルームなど、多忙なジェットセッターを想定した細やかなサービスも話題になった。
搭乗券がないと入れないという類例のない店舗だけに、客層、売上げ、販売構成比などの実績が気になるところ。開店から約8ヶ月を経た12月某日、店長の小島伸一氏に取材した。

「メンズ館との決定的な違いはリピーター率の高さですね。1日の来客数は1,000~1,200人程度。週に2往復するようなお客様に、月に3、4回はご利用頂いてます。買上率も約15%と極めて高く、顔の見えるお客様に支えられている形。利用カードの種類にもよりますが、6~7割のお客様は男性ですね。全体の約4割は医者、自営業者といった高額所得層。紳士雑貨の客単価は15,000円といったところでしょうか」

立地の関係から、ベースになるのは北海道・青森方面と大阪方面のJAL搭乗客。店舗前の通路を通る人数は、1日あたり約11,000人。約10%の入店率は悪くない数字だ。ただし、売上げと販売構成比は想定外の部分もあったという。
「予算対比の売上げは全体で95%。紳士雑貨は好調だったのですが、食品と飲食が思ったほど伸びませんでした。食品は、単品買いのお客様が多かったことが響きましたね」
当初はジェットセッターの買い足し需要を見込んでいたが、ここにも若干の誤算があったという。例えば、グローブ・トロッターのトラベルケースが毎月コンスタントに売れている現象がある。
「購入層は北海道在住のお客様。北海道にはグローブ・トロッターの販売拠点がありません。つまり旅行に際しての必要な買い物ではなく、多くのお客様はここに気になっていたモノ、欲しいモノがあったから買った、という購入スタイルだったのです」

コンビニエンスであることは同店の狙いどおりだったが、それは忘れ物がここで買えたという意味ではなく、以前から欲しかった物がここで買えたという意味において。グループの他店舗で買った商品を同店で受け取ることもできるという、利便性の高さも支持されている。 その成り立ちからメンズ館の顧客も多いような気がするが、実際はそうでもないらしい。
「メンズ館の方が品揃えは充実していますので、あちらのお客様は少ないですね。むしろメンズ館に行く時間がないとか、メンズ館を御存知なかったお客様が多い。ノウハウを取り入れてはいますが、メンズ館の経験則がそのまま通用するわけではありません。20名いるスタイリストのうち、メンズ館出身者はごく少数。メンズ館という軸を基本に、どのようなやり方で独自色を打ち出していくか。それが今後の課題だと思っています」

想定外の展開が多かった「イセタン羽田ストア」の8ヶ月。次回はブランドと売れ筋商品の視点から、この個性的な店舗の姿を見てみよう。

【連載】ジェットセッターは何を考えて空港で買い物をするのか?──「イセタン羽田ストア」の8ヶ月(前編)

《薄井テルオ》

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