高校野球でのエースの連投は是か非か? 乙武さん、美談・称賛ばかりのマスコミに苦言 | RBB TODAY

高校野球でのエースの連投は是か非か? 乙武さん、美談・称賛ばかりのマスコミに苦言

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 第85回選抜高校野球大会は埼玉・浦和学院の初優勝で幕を閉じた。今大会では、惜しくも決勝で敗れた済美(愛媛)のエース・安楽智大投手の活躍に注目が集まったが、かつてスポーツライターとして活動した作家の乙武洋匡さんは、安楽投手をはじめ、一投手の連投を許す高校野球での投手起用や、そうした選手の活躍に対して称賛一辺倒の報道のあり方について苦言を呈している。

 今大会で済美の2年生エース・安楽投手は、連日の活躍で“鉄腕”と各メディアに称賛された。初戦の広陵(広島)戦では延長13回で232球を投げ抜き、中3日で済々黌(熊本)戦に登板。続く県岐阜商との準々決勝でも138球を投げ抜いての3試合連続完投勝利。高知との四国対決を制した準決勝を終えた時点で、球数は660球を超えていた。“完全燃焼”を良しとする高校野球において、安楽投手の活躍はやはり絶賛されたが、心身ともに披露がピークに達していたエースは、3日に行われた浦和学院との決勝戦で力尽きた。安楽投手の今大会での全球数は770球を超えていたと報じられている。

 済美と県岐阜商の準々決勝が行われた翌日の2日、乙武さんも自身のTwitterで、そんな安楽投手について「野球ファンをわくわくさせるような怪物」と称したが、同時に「僕は手放しによろこべずにいる」とつづっていた。理由は、安楽投手の酷使だ。

 メジャーリーグでは投手の1試合での投球は100球が目安とされ、次回登板までのインターバルは原則、中4日であることが良く知られている。さらに乙武さんによれば、アメリカの高校球児たちは1ヵ月間でも200球を超える球数は投げないのだという。比べて、安楽投手の投球数がいかに多いかは明らかだろう。また、安楽投手に限らず、高校野球の歴史上、同様のケースは決して珍しくない。そして、結果的に投手生命が絶たれた選手も少なからずいる。

 ではなぜ、そうした状況はいつまでも改善されずにいるのか? 乙武さんは、球数制限などの導入を検討しない高野連に苦言を呈するとともに、原因のひとつはマスコミにあると指摘。今回の安楽投手についても報道は「『エース力投』など美談、賞賛の一辺倒」だったとし、「それは高校野球を『教育の一環』ではなく、『ビジネスのコンテンツ』と見ているからだろう」「高校野球とは本来、部活動であり、教育活動の一環である。それが、あまりに『興業』としてのウマ味が大きいために、『球数制限』などあって然るべき対策がいつまでも講じられずにいるのだ」と推察する。そして、“完全燃焼”の美談ばかりで、将来のある高校球児たちがこれほどの球数を投げることの是非を論じないスポーツマスコミの姿勢について、「はたしてジャーナリズムとしての機能を果たしていると言えるのか」と疑問を呈した。

 高校球児たちの将来を案じ、球数制限などの対応を求める乙武さん。だが、フォロワーからは、球数制限を導入することによって私立の強豪校が有利になるなど、生じうる不均衡を指摘する声も寄せられる。乙武さんも「球数制限だけが唯一の解決策ではない」として、フォロワーたちと様々な意見を交換。フォロワーからは、試合日程の間隔をあけたり、公立校と私立校で大会を分けるなどの案が寄せられ、また、テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有投手からも、「出場選手登録を25人にして、学年別に球数制限がいいかと」と意見が寄せられるなど、熱い議論が繰り広げられた。

《花》

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