【テクニカルレポート】大規模災害における移動通信サービスの輻輳解決に向けた取り組み……NEC技報 2ページ目 | RBB TODAY

【テクニカルレポート】大規模災害における移動通信サービスの輻輳解決に向けた取り組み……NEC技報

ブロードバンド テクノロジー
図1:拠点内の通信サービス構成変更技術の全体イメージ
図1:拠点内の通信サービス構成変更技術の全体イメージ 全 4 枚
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2. 通信サービスの仮想化による処理能力増強技術

 LTEネットワークにおける音声通話サービスVoLTE(Voice over LTE)は、パケットサービスネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)と音声通話サービスを提供するIMS(IP Multi-media Subsystem)という2種類のシステムの連携により実現されます。EPCやIMSは、音声通話などの品質を確保するために、ある一定の想定範囲での性能を満たすことが求められます。

 このような特性を持つ通信サービスは、従来、個々の通信サービスシステムが専用のハードウェアで実現されており、他のサービス用のハードウェアを融通することが困難でした。また、あらかじめ十分に検証された固定的な構成で動作させる必要があり、構成の動的な変更が困難であるという問題がありました。

 そこで、我々は、上記の通信サービスの動的な構成変更に対する課題に対して、サーバ仮想化技術を用いることで解決を図りました。すなわち、EPCとIMSを仮想化し、輻輳時の柔軟な処理能力の変更を可能としました。

 まず、拠点内での通信サービスの柔軟な構成変更を実現し、次に、拠点間の通信サービスの連携による柔軟な構成変更を実現する技術を確立することを目指しています。

2.1 拠点内の通信サービスの構成変更技術

 拠点内の通信サービスの構成を柔軟に変更するために、通信サービスを仮想化するとともに、拠点内の余剰リソースや重要性の低い他のサービスのリソースを使って、重要な通信サービスの処理能力を優先的に増強するために、仮想化された通信サービスの構成変更を適切に制御する技術の研究開発を行っています(図1)。具体的には次の技術から構成されます。

・通信サービス配置技術
 通信サービスのリアルタイム性などの特性を考慮しつつ、拠点内に設置した複数のサーバ上に、複数の通信サービスを仮想マシン単位で配置可能であることを判定する

・通信サービス実行制御技術
 通信サービスを構成する要素間の依存関係、ネットワーク構成の制約などに基づいて、起動・停止や仮想ネットワークの設定など通信サービスの実行制御を行う

・通信サービス状態監視技術
 通信サービスが出力するログなどの状態を取得し、通信サービスの輻輳状態や障害を判定する

 これらの技術のうち、通信サービス配置技術では、通信混雑時における通信サービスの性能確保のため、通信サービスの特性を考慮した動作モデルをベースとするシステム構成評価アルゴリズムを応用した性能換算手法によって、通信サービスの処理性能を見積もります。

2.2 拠点間の通信サービスの連携制御技術

 前項で実現する拠点内の通信サービスの構成変更では対応しきれないほどの通信混雑が発生した場合、各地域拠点に分散して設置されている通信設備の中で、通信混雑が発生して処理能力の増強を必要としている地域拠点の通信処理資源と、処理能力に余力がある他の地域拠点の通信処理資源とをネットワークを通じて有機的に連携させ、相互融通することにより通信サービスの拠点間連携を可能とする技術を実現します(図2)。この通信サービスの拠点間連携を実現するために、下記の技術に取り組んでいます。

・通信サービスのための仮想リソース拠点間連携制御方式
 従来の通信サービスを変更させることなく拠点間で動作させるために、拠点間で通信処理サービスを、あたかも同一拠点内で動作しているように仮想リソースを連携制御する

・通信サービスの拠点間配置決定方式
 1つの拠点内の通信処理資源では十分な処理性能が確保できない通信混雑状況に対処するため、複数の拠点に存在する利用可能な通信処理資源を使って、要求された処理性能を満たす通信サービスの配置を決定する

 仮想リソース拠点間連携制御方式の1つとして、従来の通信サービスを変更させることなく拠点間で動作させるために、複数拠点でも同一拠点と同じようにネットワークを使えるように仮想ネットワークを連携制御させる技術に取り組んでいます。この仮想ネットワークを連携制御させる方式では、輻輳回避のためのサービス拡張に合わせて、拠点内の通信ネットワークを外部の拠点に拡張するために、拠点間の物理ネットワーク上にトンネル技術を用いて、仮想ネットワークを動的に配備します。

 また、通信サービスの拠点間配置決定方式では、通信サービスごとの遅延、帯域といった通信性能に対する制約と、限られた通信処理資源の分配という2つの要件を満たしつつ、複数の通信サービスの要求性能を確保するように通信サービスの配置先を決定します。

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