Windowsタブレット「Surface RT」を教育ICTの視点からレビュー | RBB TODAY

Windowsタブレット「Surface RT」を教育ICTの視点からレビュー

IT・デジタル マイクロソフト
Surface RT本体
Surface RT本体 全 12 枚
拡大写真
 日本マイクロソフトが7月10日から教育機関を対象に始めたWindowsタブレット「Surface RT」の期間限定導入検証プログラムの実施期間が延長された。定価の3万円引きでタブレットを提供する今回の企画には、200校以上からの申込みがあり、教育機関からの反応はよいようだ。

 現行の教育ICT導入の取組みとしては、文部科学省の「学びのイノベーション事業」と、総務省の「フューチャースクール推進事業」が大きな柱といえる。2つの事業からは、教育現場に積極的にICTを取り入れようとする国の姿勢と、日本の近い未来の教育においてICT機器が欠かせない存在になることを確信させる。また、NTTが実施する「“教育スクウェア×ICT”フィールドトライアル」など、民間企業においても独自のICT導入促進の取組みが広がっており、教育におけるICTの役割には大きな期待が向けられている。

 そんな中、教育現場で求められるタブレット端末とはどのようなものだろうか。教育現場で活用するうえでのSurface RTの特徴を、すでに導入実績のあるiPadと比較しながらデザイン、仕様、アクセサリー、コンテンツなど複数項目に分けてレビューした。

◆デザイン:画面の大きさと直感的な操作が特長

 タブレットの導入目的や利用する学年によって求められる内容は多少異なるが、持ちやすく安全なデザインは重要だ。Surface RTのデザインを見ると、本体は黒を基調にしたシンプルなデザインで、画面内では直感的なタッチ操作が可能。アルミニウムの約3分の1の重さという軽量マグネシウム合金でできており、約680グラムと軽い。約652グラムのiPad(Retinaディスプレイ、Wi-Fiモデル)と比較しても差はあまりなく、電子辞書2つ分ぐらいの重さにとどまる。画面サイズが10.6インチとiPadの9.7インチを上回ることを考慮すると、1インチ当たりの重さが軽いのはSurface RTだ。

 小学校低学年の児童が日々持ち歩くには少し重い印象を受けるが、持ち運び時に手がすべらないようなマットな触感は評価できる。その一方で、材質上指紋が目立ちやすく、学校内でタブレットを使い回すには気になるところでもある。

◆仕様:バッテリー駆動時間はiPadに劣るが、接続ポートの豊富さが使いやすさを演出

 充電コネクタは、Mac製品でも採用されているマグネット式のシンプルな形状。フル充電したときのバッテリー駆動時間は8時間とされており、授業で利用するには十分だろう。iPadではフル充電で約10時間とSurface RTより2時間長い駆動時間となっているが、1日中タブレットを活用する機会がない限り、この差が教育現場で問題になる可能性は低いのではないだろうか。

 タブレットと外部機器との接続環境の豊富さは、Surface RTの特長だ。USB2.0ポートに加え、マイクロSDカードのスロット、HDビデオ出力ポートなど、外部機器との物理的な接続方法は豊富だ。USBやメモリーカードなど、クラウド環境に依存しないところは、教員にも喜ばれる要素かもしれない。

◆アクセサリー:純正のキーボードがタブレットをPCに

 アクセサリーとして提供されているキーボードカバーは、「タッチカバー」と「タイプカバー」の2種類。付けることで少し重みは増すものの、保護カバーの機能もあるため重宝されるだろう。キーボード使用時に「キックスタンド」というタブレットの背面にあるスタンドを開いて固定することができ、ノートパソコンのような使い方ができる。

 感圧式の「タッチカバー」はキーストロークがないため、慣れるまでは入力しづらそうだが、「タイプカバー」は、キーを押した感じがしっかりあるため、ブラインドタッチの練習をする場合などに役立つだろう。iPad用のキーボードもアクセサリーとして販売されているが、純正のものではない。キーボードの利用を考慮した上でキックスタンドを用いたSurface RTは、ノートパソコン的な使い方を想定した上でデザインされた端末といえる。

◆コンテンツ:OfficeのプレインストールはSurface RTの強み

 OSは「Windows RT」を搭載しており、Windows 8と操作方法や機能などがほぼ同じもの。また「Office 2013 RT」をプレインストールしているため、Word、Excel、PowerPoint、OneNoteが標準装備されている。アップルもiPad利用者向けに「iWorks」を提供しているが、アプリを購入しなくてもOfficeの環境が整っているのはSurface RTの特長だ。特に教育業界では、Windowsでの操作に慣れている教員が多く、Surface RTは、すでに導入されている教員用端末との互換性も高いだろう。

 タブレットを導入するにあたり、タブレット本体と同様に大切なのが利用可能なコンテンツだ。Surface RTで利用できるのは「Windows ストアアプリ」で、「Windows ストア」を通じてダウンロード可能。また、Windows ストアは、アプリ掲載時にマイクロソフトの審査があるため、安全・安心な環境が整っているという。アプリ購入時の操作性も分かりやすく、「ストア」アイコンをタップすればアプリ購入画面に入ることができ、待ちの時間などもなくスムーズに使うことができる。 

 今回は、試しにストアから、「小学生の英語絵ずかん」(700円、東京書籍株式会社)というアプリをダウンロードした。このアプリは、小学校の低学年向き、中学年向き、高学年向きのレベル別に、35の異なる場面で英語を学習できるというもの。「学校へ行こう」「校外学習1 遠足」などの各場面で、イラストにタッチすると英語の音声が流れるため、絵本のような絵の多さで小学生でも飽きずに英語を吸収できそうだ。

 このほかにもストアの「教育」カテゴリには、英語習得用アプリが目立つ。さらには名画の作者を当てる「名画クイズ」(120円、Twocats.jp)やカタカナの書き順を習得できる「カタカナ書順習得」(200円、Yuya Yamaki)などがあった。また、別カテゴリでは「朝日新聞 しつもん!ドラえもん アプリ版」というアプリも提供されている。毎朝紙面に掲載されているドラえもんのクイズをまとめて楽しむことができるため、歴史などに興味を持つきっかけにもなりそうだ。

 ただ、アプリの数で考えると「Windows ストア」のコンテンツ充実度は低い。現在Windows ストアに登録されているアプリ数は約11万、アップルの「App Store」は約80万と差が大きいのが現状だ。アプリは副教材として利用できるだけでなく、タブレット自体の活用範囲を広げるため、提供されているアプリ数がタブレットの可能性といっても過言ではない。そういった意味では、これからWindows ストアアプリが増え続け、近い未来にiPad所有者が活用できるアプリ数と同様の数が提供されることに期待したい。

◆総評

 ここで改めて、Surface RTの長所を整理すると、画面サイズ、すべりにくいマットな触感のデザイン、携帯PC感覚で使える純正キーボードの存在と、USB・マイクロSD接続が可能であること。また、コンテンツ面では、Word、Excel、PowerPoint、OneNoteといった基本アプリのプレインストールは、教育機関への導入に当たり大きな特長だろう。

 一方で、改善を求める点としては、アプリコンテンツの充実だろう。タブレットを最大限にいかすためには、あらゆる場面で利用できる幅広いラインナップが必須だ。それには、副教材として利用できる教育関連のアプリだけでなく、デジタル黒板やプロジェクターといった機器や既存のクラウドサービスと連携するためのアプリなどに期待したい。

Windowsタブレット「Surface RT」の教育活用、Officeの標準搭載が特長

《寺島 知春》

特集

【注目記事】
【注目の記事】[PR]

この記事の写真

/

関連ニュース