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「NOLTY」に進化した「能率手帳」---製造工程を見る

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雲野正夫氏(向かって左)と二宮昌愛氏
雲野正夫氏(向かって左)と二宮昌愛氏 全 18 枚
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--- 他の手帳の製造過程と違う点は?

 「能率手帳はアドレスを分冊で付けています。今はアドレスを使う人が少なくなりましたが、能率手帳は古くからのユーザーさんが多いので、一部商品だけアドレスが付いています。通常、アドレスは本体より天地1mm左右3mm短く作るので本体よりも少し引っ込みますが、これはぴったり同じ大きさに作っています。なので、根元までセットしても、ぴったり合います。これは当社の『アドレス同時製本』というやり方で1冊にしています。また、手帳の側面に染料を塗って、瑪瑙(めのう)という硬い鉱石で磨いて艶を出しています。そして、背の部分には寒冷紗を使い、強度をアップさせています。寒冷紗は百科事典などでよく使われていますが、手帳に寒冷紗を使っているのは非常に珍しいケースだと思います」

--- あまり気付かれていないが、ユーザーの役に立っている工夫はありますか?

 「まず、手帳の側面に色を塗る工程ですが、これは手帳の汚れを目立たなくする効果があります。また、手帳の角が引っ掛かってページが折れてしまわないように、ページの角を丸く加工する「角丸」という工程を行っています。しおりの長さも、対角線上にした時に、ちょうどつまめるぐらいの長さにしています。しおりの色も、月間予定表・今月・週間…と、色を分けておけば、この色は週間だなというように、すぐに開くことができるようになっています。そして、アドレス付きの手帳は『ポケットバンド』でアドレスを動かないように固定しています。表紙と本体を貼り付けるタイプの製品は、表紙と見返しの間に、『捨て芯』という紙を1枚入れています。表紙を折り曲げた時に強度としなやかさが出るからです。この捨て芯も手帳との相性があり、相性が悪いと皺が寄ったりするので、何十種類ある紙の中から選びました」

●ハードに使うゆえのシビアな生産管理

 また、今回は特別に、実際にNOLTYを作っている製造現場も見せてもらえた。

 「製本についても本とは違っており、一日に何回も開くので、丈夫さが必要になります。手帳は紙面が非常に小さいので、開いた時にページの表と裏の線が合うように作っています。ここが1ミリずれると人間の目でわかってしまうので、誤差は最小限にしています。断裁の時点で狂ったら修正できないので、印刷の時点でぴったり合わせないといけません。紙は印刷すると水を通すので伸びてしまいます。それを想定して、裏と表をぴったりと合わせなくてはいけないのです」

 また、断裁(大断ち)では、紙を切る前に、機械を使って紙を細かい振動で揃え、そこからさらに空気を押し出すという工程が行われていた。断裁の精度が、以降の製本工程の基になるだけあって、丁寧さや正確さが鍵となる、重要な工程のひとつだ。

 折りの工程では、16ページの巻き折りで、こちらも精度が求められる工程である。丁合いでページ順に組み立て、背固め、見返し貼り、そして寒冷紗を貼る背巻きの順に工程が進み、1年間の開閉に耐える強度の手帳が作られていく。こうして出来上がってきた手帳は、仕上げ断ち・角丸の工程で、天地・小口の三方を同時に切って、仕上がり寸法に仕上げる。最後の断裁が終わった手帳は、刷毛で側面に塗料が塗られ、瑪瑙で磨かれる。その後は手帳の種類で、しおり付けや表紙くるみなどの工程を経て、完成となる。

 完成した手帳は厳しい検品作業の末、出荷される。見学時は、あまりにも流れが早くて、写真を撮ったりメモを取ったりするのも必死だったが、そのような中で寸分たがわずビタッとした、ズレのない手帳が出来上がったのを間近で見て、感激せずにはいられなかった。ああ、なんて美しいのだろう。

 能率手帳改めNOLTYが末永く愛されている理由は、開発者たちの細やかな“心遣い”“想い”“こだわり”と、一切の妥協を許さないシビアな製造現場にあるのだろう。
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《浦和武蔵》

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