NYやパリに見る「和食」の最前線……「無形文化遺産」登録を前に | RBB TODAY

NYやパリに見る「和食」の最前線……「無形文化遺産」登録を前に

エンタメ その他
伝統和食を洋風のセンスで盛りつけたスタイリッシュな<MEGU>の料理各品
伝統和食を洋風のセンスで盛りつけたスタイリッシュな<MEGU>の料理各品 全 5 枚
拡大写真
■無形文化遺産となる「和食」

 文化庁は10月22日、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコの「無形文化遺産」に登録される見通しになったことを発表した。12月初旬の政府間委員会で正式登録が決定する見込みだ。

 正式に決まれば、食をテーマとした無形文化遺産としては、「フランスの美食術」、スペインやギリシャなど4か国が提出した「地中海料理」「メキシコの伝統料理」、トルコの「ケシケキ(麦がゆ)の伝統」の4件に続く登録となる。

 これを受け宝酒造では、世界の食が集まる最先端の街「ニューヨーク」と、歴史的な美食の街「パリ」における「日本料理」「日本酒」の楽しまれ方を調査。その現状をまとめたレポートを発行した。

 それによると、日本酒の海外輸出量は伸びる一方で、2001年に7,052キロリットルだった清酒の年間輸出量が、2012年には14,131キロリットルに倍増しているという。最大の輸出先はアメリカで、全体の輸出量の28%がアメリカ市場向けとなっている。2012年には3,952キロリットルを輸入し、第2位の韓国の2,904キロリットル、第3位の台湾2,203キロリットルを大きく上回っている。ちなみに、宝酒造は1951年からアメリカ向けに「松竹梅」の輸出を開始している。

■ニューヨークとパリにおける「和食」人気

 その背景にあるのは「和食」の人気。レストランガイド「ザガット」の2014年ニューヨーク版(48,114人のニューヨーカーが投票)によると、ガイドに含まれる2084軒の店のなかで、和食の平均評価は23.87点。それに次ぐフランス料理は22.08点となっており、同ガイドが紹介する100の料理カテゴリのなかで最高点を得ている。また「ミシュランガイド・ニューヨーク・シティ2014年版」でも、和食店は3つ星7店中1店、2つ星5店中1店、1つ星55店中10店と、高い比率を占めている。

 また、日本酒が和食店以外のメニューに目立つようになっているという。たとえばニューヨークの現代アメリカ料理店<Public>では、にごり1種、純米大吟醸2種を用意。またミシュラン3つ星を持つ現代アメリカ料理店「イレブン・マディソン・パーク」も、吟醸と大吟醸各1種を提供するなど、日本酒の市民権はワインリストにも、少しずつ広がり始めている。

 トライベッカ地区にある<メグ・ニューヨーク>は、2003年の開店以来根強い人気を集める日本料理店だが、アルコール売上の25%が日本酒、50%がワイン、25%がビールやカクテルとなっている。ワイン通が多い客層の間で、日本酒の達成度は高い。日本酒の中では、洗練された大吟醸が売上のトップ。そしてにごり、スパークリング清酒が続く。同店の客の大半が日本人以外の美食家で、彼らの日本酒への関心は年々高まっている。

 また、全米トップを競うチーズソムリエとして知られるマックス・マッカルマン氏は「穏やかな風味のチーズでも、癖の強いチーズでも、日本酒はその味わいをきれいに引き立ててくれます。個人的には、山羊のチーズがもっとも日本酒との相性がいいですね」と話しており、こういったアメリカ独自の日本酒の楽しみ方も生まれている。また小売店での日本酒人気も高く、ワインショップでの日本酒の扱いが増えており、少なくとも数種の日本酒が置いてあることが普通だという。<Astor Wines & Spirits>では、日本酒114種を用意している。

 日本酒専門店<Sakaya>のスミス氏は「一般的には、ヨーグルトのような酸味のあるにごりと、シャンパン感覚のスパークリング清酒が親しみやすく、アメリカ人の日本酒初心者に人気といわれています。しかし弊店では、辛口の純米や純米吟醸もよく売れますし、どのタイプが人気とは言い難いですね」と売れ筋の日本酒について説明している。

 <メグ・ニューヨーク>ベバレッッジ・ディレクターのケスター・マシアス氏は、「アメリカ人の大半が甘い炭酸飲料を飲んで育っているため、スパークリング酒は日本酒への入り口として入りやすい。初めて日本酒を試すお客様にスパークリングをお勧めすると気に入られて、次には伝統的な大吟醸などに関心を持たれることも多いですね。」とコメントしている。

 一方、フランスのパリ18区に<GUILOGUILO PARIS>を2008年に開店した「枝魯枝魯」店主の枝國栄一氏は、「当時は、一部の富裕層を除いて、和食や和酒の経験や認知は正直低かった」と離す。これは純然たる日本料理を出せる店がまだまだ希少だったためだ。「GUILOGUILO PARIS」では、和食の軸から離れずに、しかし、パリの人々に分かりやすく楽しんでもらえるように献立を考えているという。胡麻豆腐の揚げ出しは、胡麻をトリュフに置き換えて、トリュフオイルで香り付けた「トリュフ豆腐」に仕立てるなど、日本の料理の基礎を分解して、現地の人々が食べやすいように再構築して展開するのが流儀とのこと。

 こうして少しずつ、パリの人々に和食という文化を理解してもらってきたが、フランスは税率が高いので、日本酒を出す場合、どうしても販売価格が上がってしまうのが難点だという悩みも。現在「GUILOGUILO PARIS」でも、日本酒を飲めるのは一部富裕層に限られている。さらに知識がないための誤解で「アルコール度数が強いんでしょう?」と質問されたりすることもあるとか。そんなときは「ワインと変わらないですよ、ぜひ試してみてください」と説明。同店では、2年前からスパークリング清酒「松竹梅白壁蔵『澪(MIO)』」を提案し、昨年1年間で「松竹梅白壁蔵『澪(MIO)』」については、110本以上は飲んでもらったという。

 宝酒造では、『澪』を2011年6月より、通販と全国の百貨店・料飲店限定で発売。さらに2013年9月からは、日本国内における販売ルートを拡大し、一般小売店でも販売している。世界の「WASHOKUとSAKE」に思いを馳せながら、日本で『澪』を楽しんでみるのも、また別種の趣がありそうだ。

《冨岡晶》

特集

【注目記事】
【注目の記事】[PR]

この記事の写真

/

関連ニュース